理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P1-527
会議情報

内部障害系理学療法
緩和ケアチームの活動と理学療法の実施状況について
大段 裕樹泉 玲子安藤 恵美有本 卓郎大森 英哉菅原 修
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【はじめに】
世界保健機構(WHO)では緩和ケアを「治癒を目的とした治療に反応しにくくなった患者に対する積極的で全人間的なケアである.緩和ケアは治療の早い時期においても適応されるべきである.」と定義している.また、がん対策基本法においても「がん患者及び家族の苦痛の軽減ならびに療養生活の質の維持向上」が全体目標とされ、拠点病院を中心として、緩和ケアチームや緩和ケア病棟、在宅療養支援診療所等による連携を促進していくと明記されている.
当院ではコンサルテーション型の緩和ケアチーム(以下チーム)が、2007年4月より本格的な活動を開始した.今回、チームの活動について検討したので報告する.
【倫理規定】
本研究は個人が特定されないように配慮し、当院倫理委員会の承認を得て実施した.
【チームの構成】
チームには麻酔科医、放射線科医、看護師(がん専門看護師、緩和ケア認定看護師)を中心として薬剤師、臨床心理士、管理栄養士、ソーシャルワーカー、理学療法士などが参加している.
【活動の内容について】
チームへ依頼があった症例の評価後チームカンファレンスを実施し、身体的・精神的苦痛の緩和の支援や、方針決定の支援などを行っている.また、定期的に勉強会を開催している.
【方法】
活動開始から2008年9月までにチームに依頼された症例の、依頼科、目的、依頼時のADL、介入日数、転帰、理学療法(以下PT)の実施状況について調査した.
【結果】
チームへの依頼数は24件であった.依頼は9の診療科からあり、消化器科が6件、外科5件内科、泌尿器科が各3件と続いている.目的は疼痛コントロールが最も多く、呼吸困難の緩和、心理的支持、退院調整、治療方針の選択などがあった.依頼時のADLはPerformance statusで1が6件、2が4件、3が9件、4が5件であった.介入日数の平均は21日間で、死亡退院18件、自宅退院2件、転院1件、介入継続中3件であった.
PTは10件実施されていた.内9件はチーム介入前から実施されていた.チーム介入時のPTの指示の内訳は、移動手段の確保や家族への介助方法の指導というADLに関すること.また、呼吸リハビリや浮腫への対応など身体的な苦痛に関することであった.
【考察】
依頼の傾向としては各科の終末期の症例が多かった.これは院内でチームの活動はある程度認知されているが、緩和ケア=終末期の印象が強いためではないかと考えられる.今後、WHOも提唱している早期からの緩和ケアを実践できるよう啓蒙活動を行うことが必要だと考えられる.
また、チームからPTに求められることはADLや身体的な苦痛に関することが多くなっていた.これらに関わる理学療法士はチームの活動の一翼を担っていると考えられる.

著者関連情報
© 2009 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top