理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P1-544
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内部障害系理学療法
リンパ浮腫評価の再考
―体積近似値と実体積値との比較、体積測定容器の試作―
中山 紀子泉田 悠子山崎 美希野地 法子青山 誠小林 範子藤野 敬史
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抄録

【目的】リンパ浮腫の評価は四肢の周径計測が一般的であるが、局所的評価であり全体のvolume評価としては適さない.そこで、周径値から体積近似値を換算する方法が用いられているがその妥当性は明らかではない.今回は体積測定容器を試作し下肢体積を測定することが可能となったため、実体積値と体積近似値とを比較し検討する事を目的とする.
【対象と方法】被検者は健常者66名(男性30名;平均年齢27.47±5.12歳、BMI22.17±1.7kg/m2、女性36名;平均年齢28.25±6.54歳、BMI20.35±1.7kg/m2)、全例同一検者が測定し右下肢のみ測定した.体積測定容器は家庭用灯油ホームタンク(90L)を用いた.タンクの上側方に直径6cmの穴(穴の下縁;S点)を開け、そこに接合部を介してジャバラホースを取り付けた.下側方にも直径2cmの穴を開け、開閉可能なバルブを取り付け水の排出が出来るようにした.実体積値の計測方法は40°Cに設定した水をタンクのS点まで浸し、被検者の右下肢をタンクに入れる.上方の穴から排出される水を0.2kg区切りで計測可能な体重計にて重量を計測した(A).実体積値の計測法の妥当性を検討するため、9名の被検者を3回計測し再現性を検討した.また体積近似値は足部が除外されるため,足部体積を計測する容器にて足部を計測し(B)、(A)との差を実体積として算出した(C).体積近似値(V)の測定は当院で用いている6点の周径計測より算出し(C)と比較した.統計学的分析はWilcoxon t-testを用いた.
【結果】3回計測した実体積値はおのおので有意差はみられなかった.体積近似値は6364.06±93.8cm3(mean±SE)、実体積は5778.79±96.48cm3と体積近似値の方が過大な値になることが確認できた(p<0.001).体積近似値と実体積値との差を男女で比較すると男性651.12±72.51cm3、女性530.39±59.51cm3で男性の方が有意に大きな差が認められた(p<0.01).
【結論】今回の検討では、体積近似値の方が実体積値よりも110.13%の過大な値を示した.体積近似値と実体積値との差が男性の方が大きな値を示したのは、男性の筋腹は女性よりも大きいため、筋腱移行部との差が表れた結果と思われる.円すい台を仮定して計算する体積近似値は凹凸のある下肢を妥当に評価できないことが示された.今後は体積近似値が下肢リンパ浮腫患者においても同様に実体積値と有意差があるか否かを検討する必要がある.

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© 2009 日本理学療法士協会
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