抄録
【目的】当院は、理学療法士(以下;PT)主導型によるリハビリ(以下;リハ)プログラムを、術前からICUを経て、退院まで一貫して実施している.近年、冠動脈疾患や心臓弁膜症を併発した重症例が増加しており、リハプログラムから逸脱するケースが珍しくない.その為、2008年6月よりチームアプローチの一環として、各科が連携し早朝回診を実施している.そこで今回、難渋例のリハプログラムに対して早朝回診が与える影響について検討した.
【対象と方法】対象は、回診参加前の2008年1月から4月までの4ヶ月間に当院で複合術(2つ以上の心臓大血管を同時施術)を受けた57名のうち、術前からの歩行困難例、死亡退院を除く48名(男/女=25/23、平均年齢64.1±12.6歳)=(以下;A群)と回診参加後の2008年6月から9月までの同期間に複合術を受けた69名のうち、同条件を除外した61名(男/女=36/25、平均年齢67.8±7.8歳)=(以下;B群)とした.方法は、A・B群ともに患者・手術背景及びプログラム到達日数、術後退院日数をカルテより後方視的に調査した.統計学的処理は、対応のないt-検定を用い、有意水準は5%未満(p<0.05)とした.
【結果】A・B群ともに、術前の患者背景及び手術背景において有意差はなかった.リハプログラムにおいて、A・B群間でトイレ歩行(1.9±1.3vs1.8±1.2day.ns)、100m歩行(3.8±1.9vs3.3±1.5day.ns)、100m+階段(7.7±5.4vs6.7±3.3day.ns)、心リハ室での運動療法(9.8±5.3vs8.6±3.6day.ns)、術後退院日数(17.9±6.0vs17.3±6.2day.ns)に有意差はなかった.
【考察】結果は、両群において有意差を認めなかったが、リハプログラムに共通してB群の方が短縮傾向にあった.有意差を認めなかった理由として、まず当院の早期リハプログラム(Fast Track Recovery)が既に確立されている事、次にPT視点でのリスクヘッジが意見として反映された事が考えられる.早朝回診における最大の効果は、難渋例に対して各科がチームとして情報の共有化を図り、方向性の統一が出来た事と思われる.
【まとめ】PTが早朝回診に参加する事で、多角的視点での情報共有が可能となり、安全かつ効率的なリハプログラム実施が可能となった.