抄録
【目的】大東市では平成18年度より地域支援事業における介護予防事業として、特定高齢者および市で定めた基準で選定した一般高齢者の合同教室を実施してきた.しかし、拠点での専門職主体の教室(以下、拠点型)を終了したほとんどの高齢者は介護予防活動の継続ができなかったことを受け、平成20年度からは地域の住民主体の介護予防活動(以下、地域型)に専門職を派遣し、その活動の中に特定高齢者へのアプローチを含める介護予防事業に切り替えた.拠点型と地域型の比較により、効果的な事業への移行となっているかを検証する.
【方法】拠点型と地域型の介護予防事業のそれぞれの参加者の特定高齢者候補者参加率および運動機能評価5m最大歩行速度の評価結果、出席率を比較した.
【結果】地域型には特定高齢者候補者が31.7%存在し、拠点型の13.7%と比較すると2.3倍であった.5m最大歩行速度の改善率は地域型は68%であり、拠点型が70%と比較するとほぼ同率であった.出席率は地域型では73.7%であり、拠点型の57.8%と比較すると1.3倍であった.
【考察】地域型と拠点型の運動機能の改善率がほぼ同率であったことは、常に専門職の関わりがなくても、地域住民の自主的な介護予防活動でも十分に効果があると考えられる.出席率の比較で地域型が大きく上回っている要因は、拠点型は国が示した介護予防事業のマニュアルにそって選定され、地域包括支援センターの勧奨により参加された特定高齢者がほとんどである一方で、地域型に参加された高齢者はより主体的な動機で参加していることから、介護予防活動に対しての意欲の差が各評価結果の差に影響したものと考える.また、地域型ではより身近な施設での活動となるため、近所同士の仲間意識がより高まることから中断者や脱落者が少ないことが効果に影響したものと考えられる.地域型の特定高齢者候補者参加率の比較でも地域型の方が2倍以上も高かったのは、まだまだ認知度が低い地域包括支援センターからの勧奨よりも身近な存在である地域住民からの勧奨であったことが要因と考えられる.
【まとめ】大東市では地域支援事業における介護予防事業を拠点型から地域型に移行したが、今回の事業評価により地域型の方が介護予防効果が高いことがわかった.介護予防の効果は専門職が関わる教室の期間に運動機能などの向上が得られることは多くの自治体での事業結果からも報告されているが、専門職が関わらなくなった後にも、介護予防活動が継続されなければ効果は減少もしくは消滅してしまう.真の介護予防効果は生活の中で介護予防活動が継続できてこそ得られることから、高齢者の身近な場所で周辺住民との交流によって行われる地域型の介護予防事業こそが、真の介護予防効果を得る方法であると考える.