理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P1-217
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生活環境支援系理学療法
訪問リハビリテーション利用者の満足感に影響を及ぼす要因の検討
長山 七七代佐藤 裕子松田 智行川間 健之介
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抄録

【目的】訪問リハビリテーション(以下、訪問リハ)利用者の満足感の要因を探索し、抽出された要因を、回答者(本人又は家族)や訪問リハ提供機関などにより比較する.
【方法】対象は、訪問リハサービス利用者(本人又は家族)211名とし、郵送による無記名、自記式質問紙調査により返送のあった54名(回収率25.1%)とした.質問紙には、研究概要の説明と個人情報保護について記し、質問紙の返送をもってこの調査への同意とする旨を記述した.なお、この研究は筑波大学人間総合科学研究科研究倫理委員会の承認を得て行なった.質問紙の構成は、基本属性の他、『訪問リハ利用者の満足感』として5段階尺度、20項目の質問項目とした.『訪問リハ利用者の満足感』20項目に対し主因子法、Varimax回転による因子分析を行ない、得点化した『訪問リハ利用者の満足感』因子を、回答者や提供機関等を変数として比較した.
【結果】回答者は本人26名(平均年齢71.12±10.95歳)、家族27名(平均年齢75±9.79歳)で、提供機関は訪問看護ステーション(以下、訪看)17名、病院23名、介護老人保健施設9名、診療所2名であった.『訪問リハ利用者の満足感』20項目について因子分析を行なったところ3因子が抽出され、累積寄与率は56.96%であった.3因子はそれぞれ『サービスとしての満足感』『変化に対する満足感』『対応に関する満足感』と命名した.さらに回答者、提供機関等による差を検討するため、3因子の因子得点についてt検定及び分散分析を行なった結果、『変化に対する満足感』得点は、回答者が本人の方が家族よりも有意に高かった(t(45)=2.31,p<.05).また、『対応に関する満足感』得点は、訪問リハ提供機関において訪看の方が病院等の他機関よりも有意に高かった(t(42)=2.00,p<.05).
【考察】本研究により『訪問リハ利用者の満足感』の3因子が抽出されたことで、具体的な訪問リハ利用者の満足感を規定する要因の一端が明らかとなった.また3因子得点の比較において、回答者(本人または家族)による有意な差が見られた『変化に対する満足感』の下位項目は、趣味の広がりや外出機会の増加、訪問リハが楽しみや息抜きであるといった内容であり、本人と家族では満足感を感じる変化の内容に違いがあることが示唆された.提供機関(訪看または病院等他機関)による有意な差がみられた『対応に関する満足感』の下位項目は、十分な説明や訪問リハ時間の長さ等の内容であった.筆者が行なった訪問リハに携わる療法士の質問紙調査に自由記述を設定したところ、病院等の療法士からは「他業務との兼務による訪問時間の短さ」に関する記述が問題意識として多く挙っていたことから、訪問リハに費やせる時間や利用者と落ち着いて話せる時間が確保されにくい現状があることが考えられた.

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© 2009 日本理学療法士協会
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