理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P1-225
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生活環境支援系理学療法
脳血管障害のある人に対する理学療法目標に関する調査
―急性期、回復期、維持期における横断研究―
松田 智行長山 七七代佐藤 裕子川間 健之介
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抄録

【目的】わが国の脳血管障害のある人(以下、脳血管障害者)に対する急性期、回復期、施設における維持期、在宅における維持期(以下、訪問リハ)のリハビリテーション期別(以下、リハ期別)に応じた理学療法を検討するため、リハ期別における理学療法目標についての質問紙調査を行った.
【方法】本調査は、理学療法士が、脳血管障害者に対して設定する理学療法目標を把握するため、国際生活機能分類(ICF: International Classification of Functioning, Disability and Health)の「活動と参加」のうち85項目を採用した.回答は、質問項目が、脳血管障害者に対する理学療法目標にどの程度該当するのかを尋ねるため、「よく当てはまる」から「全くあてはまらない」の5件法とし、理学療法目標に適合する程度が高いほど、高い得点とした.
対象は、医療施設、介護老人保健施設、訪問看護ステーション等に従事する理学療法士1389名(530施設)とした.自記式質問用紙を郵送し、説明と同意を得た上で調査を行なった.主な調査項目は、臨床経験年数、現在の提供リハビリテーションサービス(以下、リハサービス)、理学療法目標に関する質問である.なお、本調査は、筑波大学大学院人間総合科学研究科研究倫理委員会の承認を得て、2008年9月から11月まで行った.
因子分析は、統計ソフトSPSS for Win ver16.0 を使用し、主因子法、バリマックス回転を行った.
【結果】433名(31.2%)から回答があり、うち402名(29%)が有効回答数であった.リハサービスは、急性期103名、回復期75名、施設における維持期70名、訪問リハ56名、その他98名であった.
脳血管障害者に対する理学療法目標の規定因子は、因子分析の結果、5因子抽出され、「対人関係およびコミュニケーション」、「社会生活」、「セルフケア」、「日常生活関連活動」、「基本的な姿勢の変換および歩行」と命名した.
リハ期別と理学療法目標との関係は、リハサービスから、急性期、回復期、施設における維持期、訪問リハの4サービスを抽出し、リハ期別による違いを分析した.分散分析の結果、「セルフケア」(F(3,260)=2.99,p<.05)、「日常生活関連活動」(F(3,260)=20.02,p<.05)について群の効果は有意であった.多重比較により、「セルフケア」は、訪問リハは急性期よりも高い得点であり、「日常生活関連活動」は、急性期と回復期は施設における維持期と訪問リハよりも高い得点であった.
【考察・まとめ】従来、脳血管障害者のリハビリテーションは、急性期から回復期および維持期に移行するに従い、対象者の社会生活や日常生活関連活動について視点が置かれるとされていた.しかし、本調査により、理学療法士は、対象者の疾病発症直後より、社会生活および日常生活関連活動について目標を設定し、対象者が在宅に移行するに従い、セルフケアに関する目標を設定していることが示唆された.

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© 2009 日本理学療法士協会
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