理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P1-242
会議情報

生活環境支援系理学療法
運動課題における予測値・実測値と自己効力感の関係
五十嵐 祐介田上 真琴中山 恭秀安保 雅博小林 一成
著者情報
キーワード: 予測, 実測, 自己効力感
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】自己効力感の測定はアンケート形式により多く行われている.しかし、主観的な身体機能と実際の身体機能の差を見るためにはアンケートのみでは十分ではないと考えた.そこで本研究では運動課題を予測した後、実際に課題を測定し、その値と自己効力感とを比較することで差を見ることができるのか検討することを目的とする.
【方法】対象は当院リハビリテーション科に依頼のあった患者で、屋内歩行近位監視から自立レベルの者を対象とし、意識障害のある患者・高次脳機能障害等による回答困難な患者・整形外科疾患等における荷重免荷時期の患者は除外した.内訳は男性14名、女性22名の計36名とし、平均年齢は70.75±51.75歳であった.今回は運動課題として片脚立位及びリーチ動作を使用し、その予測値・実測値と自己効力感との比較を行うこととした.片脚立位における予測値の測定では、予測のしやすさを考慮し、バランス機能評価法であるBerg Balance Scaleの評価尺度をアンケート形式に改変し、『10秒以上できると思う』『5秒以上できると思う』『3秒以上できると思う』『3秒以下であればできると思う』『全くできない』の5項目より選択することとした.実測時における片脚立位保持の支持脚は、被検者が得意と思う方で測定した.リーチ動作では、立位にて両肩関節屈曲90°の姿勢で手のひらを合わせ、中指の先端に点滴棒を接触させる.この姿勢より足部を動かさずに、点滴棒を出来るだけ遠くに押し、点滴棒が動いた距離を計測した.予測は、実測時の立ち位置に被検者を立たせ、検者が点滴棒をゆっくりと前方へ動かし、被験者が自分で押せると思うところで声をかけるという方法で計測を行った.また、自己効力感の測定は稲葉らが開発した虚弱高齢者の身体活動自己効力尺度を使用し、この得点と各運動課題の予測値・実測値との相関をそれぞれSpearmanの順位相関係数にて検討した.なお、この研究における一連の測定は、当大学倫理審査委員会の承諾を得て、対象患者に研究の目的を十分に説明し同意を得て施行した.
【結果】片脚立位及びリーチ動作における予測値・実測値と自己効力感との間にそれぞれ全て有意な相関がみられた(p<0.01).
【考察】これより、片脚立位及びリーチ動作における運動課題の予測値は自己効力感を反映しやすいということが示唆された.また実測値において、自己効力感が低い被検者は実際の運動課題における測定値も低くなり、自己効力感が高い被検者は運動課題における測定値も高くなりやすい傾向にあると言える.このため片脚立位及びリーチ動作において、その予測と実測の値の差が小さい者は、自己の身体機能を適度に把握できている可能性が考えられる.一方、予測と実測の値の差が大きい者は自己の身体機能を過大に評価している、もしくは身体機能を過少評価している可能性があるということが考えられる.

著者関連情報
© 2009 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top