理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P3-173
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生活環境支援系理学療法
在宅脳卒中者における床から立ち上がり動作獲得が歩行能力に及ぼす影響
―訪問リハビリテーションの効果―
荒尾 雅文石濱 裕規
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抄録
【目的】我々は、脳卒中者への訪問リハビリの効果検証を進めているが、その中で特に効果が得られる項目の一つとして床からの立ち上がりがある.また床からの立ち上がり能力向上により、バランス、筋力、歩行能力の改善といった二次的な効果が得られる場合もある.本研究では訪問リハビリが床からの立ち上がりへ及ぼす効果、また床からの立ち上がりの獲得が歩行能力にどう影響しているかを検討する.
【方法】対象は当法人訪問看護ステーションに新規依頼のあった脳血管障害者56名(出血24名,梗塞32名)である.対象者は男性33名、女性23名、平均年齢は69.1±11.9歳であり、発症からの期間は978.3±1301.1日であった.方法はリハビリ担当者がリハビリ開始時、開始後6か月時の2回、床からの立ち上がり、歩行能力等を評価することで行った.評価法は、床からの立ち上がりは、不能・台を使い可能・台無しで可能の3段階(3点満点)で得点化し、歩行能力はFIMを使用した.
【結果】訪問リハビリ開始時と6ヵ月後の床からの立ち上がりを比較すると、改善した者は56名中25名(44.6%)であった.またリハビリ開始時の床からの立ち上がりの平均得点は1.1±0.3点、開始後6ヵ月では1.7±0.8点と2群間で統計的有意差がみられ(p>0.01)床からの立ち上がり能力の得点は改善していた.次に歩行能力は床からの立ち上がり改善群(以下改善群)は4.4±1.6点から5.6±0.8点、改善無群は3.1±1.9点から3.8±2.0点と両群で改善が見られた(p>0.01)が、歩行利得は改善群1.2±1.1点、改善無群0.7±1.0点と改善群の方が大きかった(p>0.05).
【考察】在宅では床からの立ち上がりが必要となるケースが多い.この原因は大きく3つある.まず一つ目は病院との生活環境の相違によるもの.2つ目は転倒後立ち上がれないため、3つ目は炬燵などを使い床に座って過ごしたいためである.しかし床からの立ち上がりの練習は不十分な場合が多く、発症からの期間が長くても練習するのは初めてという利用者もいる.今回の結果では訪問リハビリのアプローチにより、利用者の44.6%で床からの立ち上がりが改善していた.この成果は利用者のADL、QOLの向上につながり、また転倒後の介助を容易にするため、介助者の介護負担も軽減できると思われる.また床からの立ち上がりの能力が上がることにより歩行能力がより向上していることが示された.床からの立ち上がり動作は、筋力やバランス能力を向上させ歩行能力にも影響を与えた可能性がある.この研究から訪問リハビリで床からの立ち上がりにアプローチすること重要であることが確認できた.
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© 2009 日本理学療法士協会
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