理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: S2-034
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教育・管理系理学療法
OSCEによるリフレクションと学生の学び
―客観的臨床能力試験(Objective Structured Clinical Examination;OSCE)リフレクション法の提案―
平山 朋子西村 敦
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抄録

【目的】
医学・薬学教育などの分野では、近年、客観的臨床能力試験(Objective Structured Clinical Examination;OSCE)が実施されるようになった.OSCEとは1975年にR. M. Hardenにより、医学生の基本的臨床能力を客観的に評価するために開発された評価方法である.OSCEはパフォーマンス評価の1つと考えられ、現在、臨床実習前の総括的評価として用いられている.藍野大学では2006年から理学療法版OSCEを開発し、2007年より臨床実習開始前に実施した.本研究では1課題のOSCEを実施し、学生の様子をビデオ撮影した.そしてビデオ映像と評価結果を学生にフィードバックし、それをもとにリフレクションさせるという方法を試みた(「OSCEリフレクション法」と呼ぶ).その結果、単にOSCEの評価得点が上昇しただけでなく、学生の態度・行動や学習意欲に大きな変化がみられた.学生はOSCEのリフレクションを通じて何を学んだのか.その学びの過程とOSCEリフレクション法の有効性を明らかにした.
【方法】
対象は、大学4回生・5名、3回生・96名(2007年).調査にあたっては個人情報保護を遵守することを説明し同意書にサインをしたうえで実施した.臨床実習に参加する2週間前に実施した.OSCEリフレクション法は、1.OSCE実施(ビデオ撮影)、2.OSCE後に教員によるデモンストレーション、3.学生のビデオを上級生のビデオ・教員によるデモンストレーションと比較検討しながら(学生間のグループ討議、教員も介入)リフレクションシートの記入、という順序で行った.OSCE課題は整形外科疾患に対する関節可動域テストとした.そして約1週間後、再度1から3を実施した.分析データはOSCEの評価得点、ビデオデータ、リフレクションシート、OSCE後のインタビューデータ、感想文、臨床実習後のインタビューデータとした.
【結果と考察】
OSCEの評価得点(25点満点)は、平均で15.1点から19.6点へと変化し、検査技術の改善が見られた.しかし、それ以上に興味深いのは、OSCEで評価されるパフォーマンスの範囲をこえて、より深く広い学びが見られたことである.学生たちはインタビューで「映像を見て一方的に検査をしていたこと、患者さんのことを主体的に考える意識が非常に少ないことに気づいた」と語り、自ら役割演技法を取り入れるなどして、自己の問題点とその解決方法を具体的に考えることができるようになった.また「話し方など普段の生活から見直した」など学習場面は学校から離れた場にも拡大していた.学生は模擬患者と自分の関係性のあり方から、自分の学んでいることが「誰のためのものであるのか」「何のために学ぶのか」という学ぶことの意味や、社会的意味を理解しはじめたことがうかがえた.このように、OSCEリフレクション法は、パフォーマンス評価を通じて学びを促す有効な方法であることが示唆された.

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© 2009 日本理学療法士協会
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