理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P3-570
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教育・管理系理学療法
PBLテュートリアルによる臨床推論達成度の検討
鈴木 学細木 一成福山 勝彦郭 丹橋谷 美智子安村 寿男木村 哲彦二瓶 隆一丸山 仁司
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抄録

【目的】PBLテュートリアルによる臨床推論能力の達成度とグループ間での達成度の差を検証することによりPBLテュートリアルによる臨床推論の可能性とテューターの介入方法の是非について検討する.
【対象】4年制養成校の平成20年度理学療法学科3年生、男性26名、女性10名の計36名、年齢23.6±6.2歳を対象とした.学生を1グループ7~8名にて5グループに編成し、各グループに教員を専属のテューターとして1名配置した.尚、被験者には研究に際してその目的の趣旨を説明し、文書による同意を得ている.
【方法】PBLテュートリアルは連続4日間施行した.模擬症例はCVA片麻痺に設定し、シナリオはPart1~3の3部構成で、シナリオPart1が医師からの処方箋情報、シナリオPart2が情報収集結果、シナリオPart3がPT評価結果、とした.各PartはStep1(ブレインストーミング)、Step2(自己学習、自己学習内容のグループ内発表、仮説の修正)という過程を踏み、最終的に総括としてグループごとに模擬症例の臨床推論をした.グループ討議ではテューターは必要最小限の介入にとどめるように努めた.その後、Step3として発表会を催し、各グループの臨床推論結果について、8名の教員による評価と学生による自己グループの評価を実施した.1:全体像、2:情報収集、3:評価項目、4:問題点抽出、5:ゴール設定、6:治療内容の6項目について達成度を4段階で評価し、それを4(優)~1(不可)と数値化して項目ごとに平均値を求め、各グループの達成度とした.教員評価ではKruskal-Walis検定にてグループ間の達成度の比較をした.有意水準は5%未満とした.
【結果】グループA~Eの各グループの臨床推論の総合評価が教員評価では3.06~3.42、学生による自己の所属するグループの自己評価は2.35~2.71の範囲に分布し、教員評価は比較的良く、学生の自己評価はやや低い傾向がみられた.教員評価と学生自己評価はともに全グループで項目4、5が他項目に比較してやや低い達成度であった.教員評価で治療内容の設定においてグループ間に有意差がみられたものの(p<0.05)、その他の項目および総合評価において有意差はみられなかった.
【考察】PBLテュートリアルによる臨床推論は教員評価からみると全体的に比較的達成度の高い学習ができていたものと思われる.比較的低い達成度となっている項目に関しては、一般的に臨床実習に臨んだ学生が実習指導者からよく指摘を受ける項目であり、この結果からも実習に向けて能力を高めていく必要性があるものと思われる.また、総合評価で臨床推論結果にグループ間に有意差がでていないことから現行のテューターの介入方法で学生に均等に学習効果をあげることができているものと思われる.

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© 2009 日本理学療法士協会
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