理学療法学Supplement
Vol.37 Suppl. No.2 (第45回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P2-045
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一般演題(ポスター)
足部アライメントが内側方ステップ動作に及ぼす影響
足圧中心からみたステップ脚運動特性
内田 全城堀本 ゆかり
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抄録

【目的】姿勢制御における踏み出し戦略は、外乱に対する姿勢制御反応として果たす役割が大きく、転倒との関連性が高いとされ、前後および外側方へのステップ動作に着目した研究が多く報告されている。しかし日常生活においては、狭い空間を通り抜ける際やベッドサイドおよびトイレでの移動手段には、開脚立位から閉脚立位へ移行する内側方ステップ動作の円滑な遂行も必要となる。本研究の目的は、開脚立位から閉脚立位へ向けた一側下肢内側方ステップ動作時の姿勢制御特性について、足圧中心(以下、COP)から明らかにし、さらに立脚後足部肢位がCOP動揺に及ぼす影響について検討することである。

【方法】重心動揺計上にて開脚立位(足部内側縁間距離20cm、両上肢を腰のうしろでくんだ状態)から閉脚立位(足部内側縁間距離0cm)への右下肢内側方ステップ動作を課題動作とした。またこの時、股関節および体幹の側屈を出来る限り抑制するように行った。動作開始は検者の合図とし、被験者は出来る限り早く動作を行うよう指示した。測定にあたり、課題動作中のステップ(以下、PS)期、片脚支持(以下、SS)期、片脚制御(以下、SC)期の3区分を測定項目とし、各区分から得られる値において、左右成分(X方向)は足部内側縁からの距離で、前後成分(Y方向)は後足部からの距離で百分率にて算出した。立脚後足部肢位の計測は、踵骨の近位2/3の内側縁と外縁からなる踵骨二等分線と床面との角度とし、後足部内反位と後足部外反位に分類した。各区分の関係にはspearmanの相関係数を用い、立脚後足部肢位に伴う各区分のCOPの差異を二元配置分散分析にて検討した。有意水準は危険率5%未満とした。

【説明と同意】下肢に整形外科疾患の既往のない健常成人13名(男性:8名、女性:5名、年齢:21.6±2.5歳、身長:156.9±8.8cm、体重:58.2±7.8Kg)を対象とした。また全ての被験者に対し実験の主旨を文書および口頭にて説明をし、同意を得た後に実験を行った。

【結果】各区分におけるCOPは、PS-XとSS-X(r=0.82、p<0.05)およびPS-XとSS-Y(r=0.87、p<0.05)に相関を認めた。また各区分におけるCOPは後足部肢位によって有意差が認められ、後足部内反位では後足部外反位に比べ、PS-Xにおいて有意に高値を示した。

【考察】PS-XとSS-XおよびPS-XとSS-Yに相関が認められ、PS期COPが内側に位置するほどSS期COPは後方かつ内側に偏位することが明らかになった。また、PS-XのCOP制御は、後足部肢位の影響を強く受けることが示唆された。
内側方ステップ動作におけるPS期にはSS期へのCOP移行を目的としたモーメントが求められる。前足部の回内外作用については、横足根関節(以下、MT関節)の運動軸は縦軸と斜軸からなり、縦軸で回外と回内を行い、斜軸で底屈と内転(回外要素)と、背屈と外転(回内要素)が同時に起こるとされている。この運動は距骨下関節(以下、ST関節)に依存し、ST関節回外位では縦軸で前足部回内、斜軸で底屈と内転が起こり、ST関節回内位では前足部回外、斜軸で背屈と外転が起こる。静止立位下によるMT関節は通常縦軸優位となり、ST関節回外位で前足部が回内して母趾側へ荷重がかかり、ST関節回内位ではこの逆になるとされる。本研究から得られた結果から、後足部内反群は小趾側へ、後足部外反群では母趾側へ有意な荷重偏位が認められたことから、内側方ステップ動作におけるPS期COP制御について、MT関節の運動は斜軸優位となり、後足部内反位では底屈と内転による回外モーメントを発生させ、反対に後足部外反位ではMT関節背屈と外転による回内モーメントを発生させていることが示唆された。

【理学療法学研究としての意義】方向転換や移乗動作の円滑な遂行には内側方ステップ動作が重要となる。この動作能力の低下としては、支持脚への重心移動が過剰または不十分なことが考えられる。立脚後足部肢位は内側方ステップ動作時の姿勢制御特性に影響を及ぼすことから、簡易的な評価指標ならびに理学療法介入につながるものと考える。

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© 2010 日本理学療法士協会
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