理学療法学Supplement
Vol.37 Suppl. No.2 (第45回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P2-082
会議情報

一般演題(ポスター)
思春期特発性側弯症に対する体幹筋トレーニングに関する検討(第2報)
フロントブリッジ・サイドブリッジにおける筋電図学的考察
山副 孝文浦川 宰小澤 亜紀子江島 通安門叶 由美日野 靖亮小峰 美仁白土 修間嶋 満
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抄録
【目的】
思春期特発性側弯症(Adolescent Idiopathic Scoliosis,以下:AIS)の運動療法に関する研究としては体幹筋筋力に関するものが多く、凹・凸側における筋力の不均衡やカーブの大きさと筋力の関係などが検討されてきた。演者らも、カーブの大・小と体幹屈曲筋力の関係を既に報告をしているが、過去の研究結果と同様に、AIS患者では体幹屈曲筋力や体幹屈曲筋持久力の低下がみられた。
また、AIS患者では、腰椎前弯増強や骨盤前傾の姿勢を呈していることが多く、これらを矯正した姿勢を保持するためにも腹筋群の強化を指導する必要性があると言われている。
そこで、本研究ではフロントブリッジとサイドブリッジが、体幹屈曲筋力・体幹屈曲筋持久力の強化に有効か否かを筋電図学的に検討した。
【方法】
対象者は健常成人女性8名と、健常成人男性4名の12名(平均年齢23.9±2.0歳、平均身長155.6±32.7cm、平均体重64.3±35.4kg)である。
運動課題は、両側前腕支持からのフロントブリッジ(以下:フロントブリッジ)、左前腕支持をした左側臥位からのサイドブリッジ(以下:サイドブリッジ)とし、それぞれの運動を5秒間×2回保持する運動を実施した。
被験筋は、左腹直筋・左外腹斜筋とし、各被験筋筋腹中央に筋線維走行に平行に表面電極を貼付した。電極間距離は2cmとし電極間抵抗が5kΩ以下となるように十分皮膚処理をした。
筋電計には、ME6000T8(MegaErectronics社製)を用い、上記運動課題施行時の各筋活動を記録した。記録した筋電図解析はMegawin ver.6(MegaErectronics社製)にて、記録した筋電図の生波形から積分値を読み取り、それぞれの体幹筋活動量を解析した。さらに、偏りをなくすため2施行分を平均した値を筋活動電位とし、各筋における徒手筋力テストでのNormalに相当する筋活動量を100%として正規化し%MVCを求め、フロントブリッジとサイドブリッジ施行時における各筋活動量をそれぞれ比較・検討した。
尚、統計学的手法として、対応のあるt検定を用い、有意水準5%未満を有意差ありと判定した。
【説明と同意】
本研究で用いた筋電図解析のデータは、当院リハビリテーション科の理学療法士・作業療法士のスタッフと臨床評価実習生であり、本研究の主旨と目的を説明した後に、AIS患者の運動療法のためだけでなく、研究活動にも利用することを説明し同意を得た。
【結果】
各筋における徒手筋力テストでのNormalに相当する筋活動量を100%として正規化し%MVCを求め、フロントブリッジとサイドブリッジ施行時の各筋活動量を比較・検討した結果、左腹直筋ではフロントブリッジで57.1±26.0%、サイドブリッジで48.3±28.5%であり、フロントブリッジで有意に高い値を示した(p=0.0230)。 一方、外腹斜筋ではフロントブリッジで107.3±60.4%、サイドブリッジで106.1±50.0%であり、両者の間には有意差は認めなかった。
【考察】
今回の研究結果から、AIS患者の体幹屈曲筋力・体幹屈曲筋持久力トレーニングとして、腹直筋ではフロントブリッジが有用であると示唆された。一方、外腹斜筋ではフロントブリッジ・サイドブリッジのいずれにおいても筋活動量が、体幹筋徒手筋力テストのNormalに相当する筋活動量以上であったことから、両者ともに外腹斜筋トレーニングの有効な運動方法であると考えられた。
【理学療法学研究としての意義】
AIS患者に対する運動療法としては、体幹関節可動域の維持・改善、体幹筋筋力の維持・強化、平衡機能の改善、脊柱矯正(サイドシフト法やペルビックヒッチ法など)の運動療法などが一般的である。
演者らもAIS患者を対象に運動療法を施行しているが、体幹屈曲筋力と体幹屈曲筋持久力の低下を認める症例が多く、背臥位からの体幹挙上動作での腹筋運動や、体幹挙上・回旋を伴った腹斜筋群の運動を実施し、自宅での自主トレーニング指導も行っている。しかし、これらの運動方法では、体幹挙上が困難な場合があること、また、腹斜筋群では体幹回旋を伴うため、脊柱の変形により関節可動域制限を呈している症例では更に運動困難であることから、自宅での自主トレーニングの継続が困難となる症例がみられ、より容易に実施可能な体幹屈曲筋群のトレーニング方法の開発が必要とされていた。今回報告したフロントブリッジやサイドブリッジ施行時の筋活動量に関する結果から、これらの方法は、AIS患者の体幹屈曲筋群に対する運動療法プログラムの一環として有用と思われた。しかし、フロントブリッジやサイドブリッジに関する報告は本邦では極めて少ないため、今後さらに症例数を増やし、その有用性を検討していきたい。





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© 2010 日本理学療法士協会
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