理学療法学Supplement
Vol.37 Suppl. No.2 (第45回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O1-117
会議情報

一般演題(口述)
オスグッド・シュラッター病発症からの期間と大腿四頭筋の柔軟性についての一考察
福原 隆志坂本 雅昭中澤 理恵川越 誠加藤 和夫
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】オスグッド・シュラッター病(以下、OS病)は成長期に多くみられるスポーツ障害の一つであり、その発症・悪化要因のひとつとして大腿四頭筋の柔軟性低下があげられる。しかしながら臨床場面やスポーツ現場において、OS病の診断を受けたものでも大腿四頭筋の柔軟性低下を呈さない症例も多くみられる。筋柔軟性の低下はOS病発症による疼痛が引き起こす結果であるとも考えられるが、発症からの期間と筋柔軟性の関係について検討した報告は少ない。本研究の目的は、過去5年間に当院にてOS病と診断を受けた患者の診療記録より、OS病の発症からの期間と大腿四頭筋の柔軟性について検討するものである。
【方法】対象は過去5年間(2004年~2008年)に当院を受診し、OS病の診断を受けた男性患者のうち、疼痛発生から受診までの日数および初診時の大腿四頭筋の柔軟性について、診療記録から確認可能なものとした。大腿四頭筋の柔軟性の指標としては殿部踵距離(cm)を用い、疼痛を有する側の下肢について確認した。対象を、症状が初発かつ疼痛出現から1か月以内に受診したもの(以下、急性期群)、疼痛出現から1か月以上経過し受診したもの(以下、慢性期群)の2群に分類した。大腿四頭筋の柔軟性について、2群の差を検討した。統計にはマン・ホイットニーのU検定を用い、有意水準は5%とした。
【説明と同意】当院における倫理規程に基づき、個人情報の保護について十分な配慮を行った。
【結果】条件を満たした対象者は45名であり、急性期群23名(平均年齢11.9±1.2歳)、慢性期群22名(平均年齢13.5±1.6歳)に分類できた。殿部踵距離の平均値は、急性期群23名32下肢で4.6±5.9cm、慢性期群22名34下肢で10.2±6.5cmであり、慢性期群における大腿四頭筋の柔軟性は、急性期群と比較し有意に低下していた。
【考察】今回の調査にて大腿四頭筋の柔軟性は発症初期よりも慢性期にて低下がみられたことから、対象者ではOS病の発症による疼痛発生により大腿四頭筋の筋緊張が高まり、柔軟性低下が引き起こされたものと考えられた。そのため理学療法介入を行う際、急性期での来院で大腿四頭筋の柔軟性低下がみられない場合においても、時間の経過とともに柔軟性が低下する可能性があり、予防的にストレッチングを指導するなどの治療方針も検討すべきであると考えられる。OS病の発症・悪化には大腿四頭筋の筋柔軟性の他に多くの発症要因が考えられ、今後アライメントや筋力といった種々の要因について横断調査を行うとともに、発症前後の身体状況について縦断的研究を行い、発症要因を明らかにすることでOS病の早期治療、発症予防への理学療法介入の指針が得られると考えられる。
【理学療法学研究としての意義】本研究は成長期のスポーツ障害において多くみられるOS病について、早期治療・発症予防への理学療法介入の検討につながるものである。

著者関連情報
© 2010 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top