理学療法学Supplement
Vol.37 Suppl. No.2 (第45回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O2-118
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一般演題(口述)
大腿骨近位部骨折術後患者の患肢荷重率は退院時歩行能力の指標になる
岩﨑 真美上田 周平成瀬 早苗片上 智江林 琢磨桑原 道生長縄 幸平平林 孝啓藤原 光宏鈴木 重行
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抄録
【目的】大腿骨近位部骨折術後患者を対象として、患肢荷重率(以下,荷重率)と運動機能、歩行について検討した報告は散見されるが、経時的に追った報告は少ない。今回、上肢支持した状態での荷重率を術後から退院時まで経時的に測定し、運動機能との関連とともに荷重率が退院時歩行能力の予測の指標になりうるかについて検討した。

【方法】対象は2009年5月~9月に当院にて手術・リハビリを施行した大腿骨近位部骨折患者のうち、受傷前歩行能力が屋内歩行自立レベル以上で、指示理解可能な患者22例(男性3例,女性19例,平均年齢81±7歳)とした。術後3,5,7,10,14日目に荷重率と以下の運動機能を測定した。荷重率(%)はActive Balancer EAB-100(酒井医療)にて、両上肢で手すりを把持し、患肢に最大限荷重させ5秒間安定した荷重量を体重で除した値とした。運動機能は、1)疼痛:Visual Analogue Scale(以下,VAS)にて荷重率測定時の荷重時痛の値,2)下肢筋力:股外転筋力、膝伸展筋力をμ-Tas MT-1(アニマ社)にて測定し体重で除した値,3)静的バランス:Active Balancerにて30秒間の開眼静止立位による総軌跡長の値,4)動的バランス:Functional Reach Test(以下,FRT)にて得られた距離を身長で除した値,5)歩行能力:10mでの自由歩行速度の値をそれぞれ求めた。各日で荷重率と1)~5)の運動機能との関連性を検討し、また、各日で荷重率と退院時(術後平均14±4日目)10m歩行速度との関連性も検討した。統計処理にはPearsonの相関係数、Spearmanの順位相関係数を用い有意水準は5%以下とした。

【説明と同意】対象者には研究の主旨を十分に説明し、研究に参加する事の同意を得た。また本研究は当院の倫理委員会の承認を得て行った。

【結果】荷重率は術後3日目54.9±21.5%,5日目57.3±19.5%,7日目59.5±18.3%,10日目68.4±15.3%,14日目75.0±9.3%であった。運動機能では、股外転筋力,膝伸展筋力,FRTの値は術後7日目まで徐々に増加し、10,14日目は一定もしくは減少した。VAS,総軌跡長の値は術後10日目まで徐々に減少し、14日目は増加した。10m歩行速度は一定の傾向はなく変動していた。各日で荷重率と運動機能との相関とその推移は、1)VAS:術後3,5日目に相関があり、3日目の方が高かった。2)下肢筋力:股外転筋力は健肢・患肢とも術後10日目に相関があったが、健肢と患肢の間に差はなかった。また、健肢膝伸展筋力は相関がなく、患肢膝伸展筋力は術後3,5日目に相関があったが、3,5日目の間に差はなかった。3)総軌跡長:各日とも荷重率と相関はなかった。4)FRT:健肢側は術後5~10日目に、患肢側は術後3~10日目に相関があり、両者とも徐々に減少傾向で特に患肢側FRTの減少は強く見られた。5)10m歩行速度:術後5,7日目に相関があり、5日目の方が高かった。また、各日で荷重率と退院時10m歩行速度との相関は術後3,5,7日目にあり、最も相関が高かったのは術後5日目であった(r=-0.87)。

【考察】荷重率と各運動機能の項目との間で最も多く相関があったのは術後5日目であり、その相関係数はVAS(r=-0.52),患肢膝伸展筋力(r=0.69),健肢・患肢側FRT(r=0.74・0.68),10m歩行速度(ρ=-0.68)であった。また、術後5日目の荷重率は退院時10m歩行速度との相関も高かった。歩行速度での屋外歩行や日常生活動作の自立に関する報告では18~23秒/10mの速度が必要とされている。そこで術後5日目の荷重率と退院時歩行速度18秒/10mと23秒/10mの2つの基準値でそれぞれROC曲線を用い荷重率のカットオフ値を算出した。結果は18秒/10mでは荷重率71.6%を閾値とした場合、23秒/10mでは荷重率55.8%を閾値とした場合で感度100%、特異度100%であった。以上から、術後5日目の荷重率が歩行能力の予測に有用であることが示唆された。また、術後14日目の結果が他の日と異なる傾向を示したのは、経過良好な患者の退院により、全体数の減少が影響したと考えられる。今回は急性期退院時の歩行能力の予測を検討したが、今後、急性期の荷重率で回復期退院時の歩行能力の予測も検討していきたい。

【理学療法学研究としての意義】歩行能力の予測は簡便で的確に行う必要があり、リハビリを提供するにあたり重要である。荷重率は歩行能力を予測する評価として用いることができ、術後5日目の荷重率を測定することで術後早期に退院時歩行能力の予測が可能であることが示唆された。
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© 2010 日本理学療法士協会
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