理学療法学Supplement
Vol.37 Suppl. No.2 (第45回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O3-047
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一般演題(口述)
女性アスリートにおける前十字靭帯再建術後の競技復帰と筋力
自家移植腱の違いによる比較
青野 達原 順子鶴田 崇湯朝 友基張 敬範緑川 孝二江本 玄
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抄録
【目的】当院における前十字靭帯再建術(以下ACL再建術)は、膝蓋腱を用いるbone tendon bone法(以下BTB法)と多重折り膝屈筋腱を用いるsemitendinosus gracilis法(以下STG法)の2つの術式を選択し行っている。ACL再建術後の競技復帰の条件としてBTB法は術後4ヵ月、STG法は術後6ヵ月以上経過していること、および術側の筋力が健側の8割に回復することとしている。しかしBTB法では膝蓋腱採取による膝伸展筋力の回復不足により、術後4ヵ月での競技復帰が可能である女性アスリートは少ないように思われる。今回、ACL再建術後のBTB法・STG法それぞれの最短復帰時期と当院で設定している術後4ヵ月・6ヵ月の筋力を女性アスリートにおいて比較し、移植腱の違いによる筋力回復について検討を行った。

【方法】対象は2006~2009年に当院にてACL再建術を施行した315例中、早期競技復帰を目標とした女性39例で平均年齢は16.5歳(14~26歳)。BTB法(以下B群)27例、STG法(以下S群)12例で、競技の内分けはバスケットボール28例、バレーボール6例、ハンドボール2例、その他3例であった。方法はサイベックス(CSMI社製)を用いて60deg/secでのピークトルク値より算出された体重トルク比を測定し、それより求めた術前、術後4ヵ月、術後6ヵ月の健患比を対応のないt検定にて比較した。またそれぞれの時期の健患比における8割到達率を比較した。

【説明と同意】ヘルシンキ宣言に基づき、全ての症例に対し測定前に研究の主旨を説明し同意を得た。

【結果】術前の健患比は平均で伸展筋はB群69%、S群68%で屈筋群はB群79%、S群66%でそれぞれ有意差はなかった。術後4ヵ月の伸展筋でB群62%、S群84%でS群が有意に高値を示した(p<0.001)。屈筋群はB群92%、S群80%で有意差はなかった。術後6ヵ月の伸展筋はB群78%、S群85%で有意差はなかった。屈筋群はB群98%、S群84%でB群が有意に高値を示した(p<0.001)。健患比における患側の8割到達率は術後4ヵ月の伸展筋でB群3.7%、S群50.0%、屈筋群はB群40.7%、S群58.3%、術後6ヵ月の伸展筋でB群40.7%、S群58.3%、屈筋群でB群100%、S群58.3%であった。

【考察】過去のACL再建術後の筋力回復をBTB法とSTG法で比較した報告によると、術後早期ではBTB法で膝伸展筋力、STG法で膝屈曲筋力がそれぞれ低下するというものが多い。また競技復帰に関しては、グラフトの組織学的骨癒合の点よりBTB法で術後2ヶ月、STG法で術後3ヵ月以降に積極的なトレーニングが行えるとしているものが多く、BTB法でより早期の競技復帰が可能と考えられている。今回の研究では、術後4ヵ月においてそれぞれグラフト採取筋の筋力低下がみられるもののS群の膝伸筋の筋力回復が良好で、膝伸筋・屈筋群ともに約半数で健患比が8割へ到達していた。B群では膝伸筋の筋力低下が著明で、健患比が8割へ到達した症例はごくわずかであった。術後6ヵ月においてもB群は膝伸筋の筋力回復の遅延がみられ、S群は伸展筋・屈筋群がバランスよく回復していく傾向がみられた。健患比が8割へ到達する症例もS群で多い傾向にあった。これらの要因としてBTB法の膝蓋腱採取による膝伸展機構の破綻よりも、STG法の半腱様筋腱・薄筋腱採取による膝屈曲機構の破綻は、大腿二頭筋・半膜様筋が侵襲されないため機能破綻が少なく、BTB法において術後早期の筋力回復がSTG法と比較し遅延したのではないかと考えられる。今回の研究結果より、女性アスリートにおけるSTG法はBTB法と比較して術後早期に筋力が回復し、競技復帰が可能な筋力へ到達した症例は術後4・6ヵ月ともにSTG法で多い傾向にあった。よってSTG法は女性アスリートにおいて、他の要因を除外した筋力回復の観点より早期の競技復帰に有利である可能性が示唆される。

【理学療法学研究としての意義】女性アスリートにおけるACL再建術後の筋力は、BTB法と比較しSTG法で術後早期の回復が早い傾向にあった。ACL再建術後の筋力回復の特性を理解することは早期競技復帰を目的に理学療法を実施するうえで重要であり、今後も他の要因を含め検討が必要である。
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© 2010 日本理学療法士協会
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