理学療法学Supplement
Vol.37 Suppl. No.2 (第45回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P2-223
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一般演題(ポスター)
足関節捻挫に対する臨床的治療展開の検討
タオルギャザーの臨床的意義
城下 貴司
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抄録
【目的】
足関節は内反捻挫を呈することが多く、前距腓靱帯、踵腓靱帯を代表する底屈や回外誘導にて疼痛を訴える症例は頻繁に経験する。一方で遠位脛腓靱帯損傷に代表される背屈や回内誘導にて疼痛が誘発される症例も希であるが経験する。それらの足関節捻挫の症例を治療するに当たって本邦ではタオルギャザーは急性期の浮腫の改善のためとされているが、著者は急性期の疼痛改善に即時効果を認めた経験をしてきた。本研究では単に浮腫の改善でなく、本疾患に対して「タオルギャザーは機能的側面が存在しているのではないか」という仮説の元に、本疾患に対してタオルギャザーエクササイズと著者が考案した足趾パッドを併せて比較することで考察し臨床的な意義についても仮説立てたい。
【方法】
まずスクワットや歩行等で疼痛を評価し、タオルギャザーを約3分、次に「母趾」「2趾から5趾」「3趾から5趾」にそれぞれ2mmのパッドを貼付して、同様の疼痛誘発テストを各々施行し疼痛の変化を比較した。疼痛変化はVAS(100mm幅)を使用した。
【説明と同意】
対象は、足関節捻挫と診断された17名17足,年齢20.1±11.5歳とし、すべての被験者に対して研究の主旨と内容を説明し、その了承を頂いた。
【結果】
母趾パッドの改善群の被験者は15名,88%、変化なし群は1名、6%、悪化群は1名、6%であった。3趾から5趾パッドでは、改善群6名、35%、変化なし群7名41%、悪化群4名、4%であった。2趾から5趾パッドでは改善群5名、29%、変化なし群4名24%、悪化群8名47%であった。そしてタオルギャザー後の改善群の被験者は13名,76%、変化なし群は2名12%、悪化群は2名12%、であった。
母趾バットの平均改善度は17%、3から5趾バットの平均改善度は8.7%、2から5趾バットの平均改善度は、8.3%、タオルギャザーの平均改善度は、18.3%であった。
【考察】
タオルギャザーもしくは、母趾パッドで多くの被験者に改善を認め、2-5趾パッドおよび3-5趾パッドでは変化を示さないもしくは悪化する傾向を認め、その傾向は急性期の被験者ほど明らかであった。更に背屈位で痛みを訴える遠位脛腓靱帯損傷を疑う被験者が2名いたが、その2名はタオルギャザーや母趾パッドよりも2-3趾もしくは3-5趾バットで明らかな改善を認めた。
以上からタオルギャザーエクササイズは単に浮腫への治療だけでなく、最も一般的な底屈や回外誘導にて疼痛を訴える足関節捻挫に有効的治療方法であると共に、そのような症例は母趾の機能不全も併せて持っていることが示唆される。逆にタオルギャザーは母趾以外のエクササイズとしは作用せず、全ての症例に適応という訳ではないことも同時に示唆されたと考えている。

【理学療法学研究としての意義】
本研究から、著者が考案した足趾パットは症例の足趾機能評価として、タオルギャザーエクササイズは母趾の機能改善としての臨床的意義が示唆され、適切な理学療法評価のもとタオルギャザーエクササイズを処方する必要があると思われる。
今後は引き続き研究を継続し、被験者数を増やしデータの信頼性や妥当性を高めていきたい。


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© 2010 日本理学療法士協会
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