理学療法学Supplement
Vol.37 Suppl. No.2 (第45回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P3-131
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一般演題(ポスター)
高校野球選手の守備位置が障害に及ぼす影響
シーズンオフ時と夏の予選大会時における検討から
山岸 茂則宮本 大介青木 啓成児玉 雄二長崎 寿夫小池 聴
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抄録

【目的】
長野県理学療法士会スポーツサポート部では、高校野球選手のシーズンオフである秋冬にかけてメディカルチェック(以下、MC)を行っている。今回MCに参加した選手をアンケート調査し、夏の甲子園予選大会における守備位置およびこのコンバートや兼務と障害との関わりを検討した。

【方法】
平成20年度高校野球MCに参加した133名に対して、守備位置および守備の兼務状況・障害状況を聞き取りにて調査した。またMCに参加した選手に対して、夏の甲子園予選大会後にアンケートを郵送し、大会期間中の守備位置および守備の兼務状況・障害状況の回答を求めた。守備位置は投手・捕手・内野・外野に4つに分類し、障害部位も肩肘・腰・下肢・その他・なし の5つに分類した。その上で、1.MC時および予選大会時の守備位置と障害の関係 2.同じく守備位置の兼務と障害の関係 3.MC時からの守備位置コンバートと障害の関係、4.守備位置別の障害罹患率の変化を、それぞれカイ2乗検定を用いて検討した。

【説明と同意】
MC時およびアンケート郵送時ともに長野県高校野球連盟および選手指導者と選手自身に対して、調査データを研究に利用することを説明し同意を得た。

【結果】
アンケート回収が出来たのは102名(回収率76.7%)であった。このうちの有効回答者97名を分析の対象とした。1.MC時、予選大会時ともに投手・内野・外野において肩・肘障害が多かった(p<0.01)が捕手は障害部位に有意差がみられなかった。また守備位置間で障害部位に有意差はなかった。2.守備位置の兼務状況と障害部位の間に有意差はなかった。3.守備位置コンバートと障害部位の間に有意差はなかった。4.捕手と外野手では、予選大会時の障害罹患率が有意に減少した(p<0.05)が、投手と内野手は有意差を認めなかった。

【考察】
捕手は動作方略が他の守備位置と大きく異なり障害部位も大きく偏ることなく様々であるため、MCではより個別的な対応が求められると思われた。守備位置の兼務やコンバートはあまり考慮する必要はないようである。捕手・外野手の障害罹患率はMC後減少できたが、投手・内野手では減少できなかった。これは身体機能の他、投手や内野手特有の試合期にむけた練習内容や量の影響も考えられた。

【理学療法学研究としての意義】
選手の守備位置・兼務・コンバート自体は障害種別に影響を与えないことが確認された。捕手・外野手の障害罹患率は減少させることができ、MCの有用性が確認された。投手や内野手特有の練習内容や量の把握をする必要があると考えられた。

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© 2010 日本理学療法士協会
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