理学療法学Supplement
Vol.37 Suppl. No.2 (第45回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O1-188
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一般演題(口述)
介助犬使用者のQOLに関する検討
石川 智昭神沢 信行高柳 友子三浦 靖史
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キーワード: 介助犬, QOL, 不安・抑うつ
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抄録

【目的】
介助犬などの身体障害者補助犬の育成や利用円滑化の促進を目的とした身体障害者補助犬法が2002年に施行され、2007年には相談窓口の設置と民間企業の受け入れが義務化された。法整備はなされたが、介助犬の適応となる障害と介助の内容が、身体障害者にもリハ専門職にも正しく理解されている状況とは言い難く、現時点での実働数は50頭に留まっている。
介助犬の普及を進めるためには、介助犬の有用性と適応についてリハ専門職の理解を深めることが重要である。そこで、今回、介助犬使用者のQOLと抑うつ・不安を評価・検討したので報告する。
【方法】
対象は、本研究に同意の得られた介助犬使用者(以下使用者)13名、性別は男性6名、女性7名、年齢は47.1±15.9歳、疾患は、頸髄損傷2名、胸髄損傷1名、腰髄損傷3名、関節リウマチ2名、多発性硬化症1名、自己免疫疾患1名、エーラスダンロス症候群1名、脳性麻痺1名、脳出血1名であった。障害は、麻痺性疾患に伴う四肢体幹機能障害が9名、関節疾患に伴う四肢機能障害が3名、不明が1名であった。調査は2009年1月、調査は郵送による自己記入式で、SF-36v2、Sickness Impact Profile(以下SIP)、State Trait Anxiety Index (以下STAI)、Self-rating Depression Scale(以下SDS)を実施した。
【説明と同意】
本研究は、ヘルシンキ宣言に則り、本研究に必要な倫理的配慮を十分に行い実施した。
【結果】
SF-36(国民標準値:50点)では、身体機能は4.37±15.92点、日常役割機能は38.05±14.12点、体の痛みは38.96±8.00点、全体的健康感は43.03±9.75点、活力は50.75±8.06点、社会生活機能は47.77±8.15点、日常役割機能(精神)は49.83±11.94点、心の健康は、53.76±7.08点であった。SIPでは、全体得点では19.38±7.66点で、SIP各項目では、身体領域(主にADLを示す)は27.99±13.67点、心理社会領域(主に社会との関わりを示す)は9.25±6.33点、独立領域(仕事・家事を示す)は21.65±10.44点であったが、仕事を有する使用者に限ると9.51±5.45点であった。STAI状態不安は38.41±8.49点、STAI特性不安は40.75±9.96点であった。SDSは38.75±7.54点であった。
【考察】
介助犬使用者の身体的QOLは低値を示した。また、SF-36での日常生活役割機能、体の痛み、全体的健康観も低値を示した。SIP独立領域は全体としては低値を示したが、仕事を有している使用者では良好であった。一方、SF-36の活力と心の健康は高値を示し、さらに、SIPの心理社会領域は良好であった。不安状態は特性不安・状態不安の双方で認めず、また、うつ傾向も認めなかった。
介助犬使用者では、身体障害を有することにより身体的QOLは低下しているが、心理的QOLは概して良好であることから、介助犬使用が、高い心理的QOLに関連している可能性がある。しかし、心理的QOLの高い障害者が介助犬の使用に積極的である可能性もあることから、高い心理的QOLが、介助犬使用による影響かどうかを検討するために、現在、介入研究を実施している。
【理学療法学研究としての意義】
介助犬の普及を進めるためには、理学療法士として、介助犬の有用性と適応についてリハ専門職への理解を深めることが重要な意義を占めると考えられる。

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© 2010 日本理学療法士協会
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