理学療法学Supplement
Vol.37 Suppl. No.2 (第45回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O1-195
会議情報

一般演題(口述)
万歩計を用いた通所リハ利用者の活動量測定
装着部位と誤差量の検討
森田 悠介矢嶋 昌英澤向 祐貴浅川 康吉
著者情報
キーワード: 万歩計, 通所リハ, 歩数
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【目的】
高齢者の日常生活動作能力のなかで、比較的早期から低下するのは歩行や起居などの移動動作にかかわる能力である。そのため、高齢者が積極的に活動をすることは、日常生活動作障害に対する初期予防として有効であり、また活動性を向上するための生活指導も必要である。身体活動量を推定するために歩数量を測定することはよく知られているが、その際、用いられる機器として万歩計は広く普及している。しかし、通所リハを利用している高齢者の歩行方法は様々であり、実歩数と測定された歩数との誤差が大きい可能性がある。本研究の目的として、通所リハ利用者において、最も誤差の少ない装着部位を検討し、さらに活動量(歩数量)を測定する際に生じる万歩計の誤差量を明らかにすることである。

【方法】
対象は、通所リハ利用者14名(男性4名、女性10名;平均75.5±10.2歳)とした。歩行方法は歩行器使用者4名、杖使用者5名、独歩者5名であった。課題動作として「立つ」→「歩く(5m;快適速度)」→「ターン」→「戻って座る」一連動作をそれぞれ2回ずつ実施することとした。
歩数は目測による実歩数の計測と生活習慣記録機(Lifecorder EX;スズケン;60g、最大計測歩数10万歩)による計測(カウント数)を行い、前者に対する後者の差を誤差量とみなした。生活習慣記録機の装着部位は腰と足部とした。実歩数とカウント数の関係についてはPeasonの相関係数により分析した。歩行方法による誤差の比較にはKrusukal-Wallis検定にて比較した。また、課題動作時の立ち座り動作にてカウント数が数歩分加算されてしまうという現象が見られた。そのため、上記14名のうちランダムに選択した対象者(女性3名;平均70.0±12.7歳)へ、腰、足部それぞれに装着して連続10回の立ち座り動作を行い、その際に生じるカウント数も計測した。

【説明と同意】
全対象者へ研究内容の説明を口頭/書面で行い、同意を得られた者には書面にてサインをいただいた。なお、本研究は当施設の倫理委員会で承認を受けた「障害高齢者の運動指導におけるトランスセオレティカルアプローチの有用性について」の研究の一部として実施した。

【結果】
実歩数とカウント数の誤差として、実歩数27~60歩に対し、カウント数は足部では27~59歩、腰部では0~37歩に分布した。実歩数と両者の間には足部では有意な相関(r=0.99)を認めたが、腰部では有意な相関を認めなかった。足部装着時の誤差量は、‐3~+2歩(平均0.6±1.4歩)であった。なお、この誤差量に関して、歩行方法との関係はなかった。誤差量を実歩数に対する割合としてみた場合、‐6.9~+6.8%(平均0.4±3.7%)であった。なお、足部装着時の連続10回の立ち座り動作により生じるカウント数は、0~2歩であった。

【考察】
通所リハ利用者では種々の歩行補助具を使用している。本研究の結果は、通所リハ利用者の歩数を万歩計により測定する際、最も誤差が少ない部位は健側足部であることを示唆している。
足部装着時における、連続10回の立ち座り動作により生じるカウント数は、最大で2カウントと極めて少なかった。腰部に装着した場合は、重心の動揺、着座時の衝撃などがカウントされ、誤差量が大きくなると考えられる。足部への装着であれば、およそ±7%の誤差で歩数の測定が可能なのではないかと推察する。

【理学療法学研究としての意義】
万歩計を用いた活動量の計測は簡便であるが、様々な歩行補助具を使用している通所リハ利用者では適切な装着部位の選択および実歩数とカウント数との誤差の問題があり、活用が困難であった。本研究で得られた知見は、この困難を解決する一助として意義があると考える。
著者関連情報
© 2010 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top