理学療法学Supplement
Vol.37 Suppl. No.2 (第45回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P1-213
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一般演題(ポスター)
在宅高齢障害者の日中の身体活動量と運動機能に関する調査
越智 久雄井上 和紀永田 武豊白井 孝明樋口 由美林 義孝
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抄録
【目的】
在宅高齢障害者の一日の身体活動量を把握することは、運動機能の低下や廃用性症候群を予防するという観点から重要である。
在宅高齢障害者の運動機能の低下の原因は、身体活動量の減少が問題であり、その解決方法としては、臥位などの不活動の時間を減らし、座位や立位・歩行時間を延長することで身体活動量を上げることが必要であると考えている。こうした生活機能向上のためには、在宅で活動を実施する指導が必要であり、そのためにまず、座位で過ごす時間が何時間か、歩行などの活動時間が何分間かなどの生活時間の把握が重要となってくる。
本研究では、在宅高齢障害者の日中の身体活動量を調査し、運動機能障害との関連について検討することを目的とした。

【方法】
対象は、通所デイサービス、通所リハビリテーション利用者で重度認知症が認められず、調査に協力可能な大阪府内在住の118名を調査対象者とした。対象者の内訳は、平均年齢77.0±8.3歳(52~97歳)、男性49名、女性69名であった。介護レベルは、要支援1が15名、要支援2が21名、要介護1が37名、要介護2が26名、要介護3が19名であった。
調査測定方法は、質問紙を用いたアンケート調査と、通所デイケア、デイサービスに関わっている理学療法士の協力による運動機能面の検査を実施した。
アンケート調査項目は、年齢、性別、介護認定レベル、日中の臥床時間と座位保持時間を平日と休日について聞き取りにて調査した。得られた日中の臥床時間と座位保持時間をもとに、Sallisらが開発した身体活動量評価指標を用いて、身体活動量を算出した。
また、運動機能面の検査として、1.等尺性筋力測定装置(ハンドヘルドダイナモメーター)を用いての股屈曲・膝伸展・足背屈筋力測定、2.握力、3.Functional Reach test(以下FRT)を実施した。
分析方法は、身体活動量の結果をもとに、30kcal/kg/day未満群(以下低活動群)、30kcal/kg/day以上35kcal/kg/day未満群(以下中活動群)、35kcal/kg/day以上(以下高活動群)の3群に分類し、運動機能面の検査結果を分散分析により比較検討した。

【説明と同意】
研究計画に対して、大阪府立大学研究倫理委員会に承認を受けた後、対象者に、研究の趣旨・目的・測定方法、研究に参加することによって一切の不利益が生じないことを説明した。また、同意した後であっても、いつでも同意を撤回出来る事を理解していただいた上で同意書に署名をいただいた。

【結果】
身体活動量は、低活動群27名、中活動群54名、高活動群35名であった。運動機能面の3群間の比較では、股屈曲・膝伸展・足背屈筋力測定値について、身体活動量が低下すると筋力も低下する傾向にあり、低活動群と高活動群の間には有意差が認められた。握力とFRTに関しては、3群間に有意差を認めなかった。握力は低活動群20.2kg、中活動群19.9kgでほぼ差はないが、高活動群は21.2kgで高値であった。FRTは、低活動群19.2cm、中活動群18.1cmで、高活動群は21.5cmで高値であった。年齢に関して、3群間に有意差を認めなかった。また、男女比に関しては、大きな差は認められなかった。

【考察】
在宅高齢障害者を対象に、身体活動量と運動機能低下の関連を明確にするため調査を実施した。今回の結果では、身体活動量が低下すると、下肢筋力が有意に低下する傾向が認められた。これは、身体活動量が低下することは、抗重力活動が減少し、下肢筋に対して日常生活の上で、負荷が与えられない影響の為と考えられる。身体活動量が、30kcal/kg/day未満になると、日中平均の臥床時間が2.8時間、座位保持時間が9.6時間と不活動の時間が多くなる傾向が認められ、下肢筋に悪影響を及ぼすことが考えられる。FRTに関して有意差を認めなかったのは、FRTは、下肢筋力のみの影響を受けるだけではなく、バランス能力や体幹筋力などの影響による要因もあると考えられる。

【理学療法学研究としての意義】
今回の研究により、在宅高齢障害者の身体活動量が明確になり、その減少が下肢筋力に与える影響が明らかになった。身体活動量が低下することは、不活動から起こる廃用症候群の増悪の可能性が示された。
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© 2010 日本理学療法士協会
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