理学療法学Supplement
Vol.37 Suppl. No.2 (第45回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P3-183
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一般演題(ポスター)
寒冷積雪地に住む在宅高齢障害者における夏季と冬季の意欲、活動性、およびQOLの関係について
デイケア利用者における検討
橋本 淳一川口 徹中川 孝子
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キーワード: 在宅支援, 冬季, QOL
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抄録
【目的】寒冷積雪により在宅高齢障害者は、活動が制約される事により閉じこもりがちとなり、家で過ごす時間が多くなると、意欲についても低下することが予測された。本研究では、在宅高齢障害者の活動、意欲、および健康関連QOLの、冬季と夏季での違いと3つの関連性を明らかにし、寒冷積雪地に暮らす在宅高齢障害者が地域で生き生きとした質の高い生活を送ってもらうための基礎資料とすることを目的とした。

【方法】対象者は、デイケアを利用する介護認定を受けた高齢障害者36名で、疾患、性別などの基本情報、SF-36(MOS Short-Form 36-Item Health -Survey:以下SF-36)、老研式活動能力指標、外出頻度、やる気スコア、機能的自立度評価表(Functional -Independence Measure:以下FIM)についてデータ収集した。これらのデータを全対象者、および対象者を年齢、世帯、移動能力、介護区分、外出頻度で群分けし夏季と冬季で比較した。

【説明と同意】対象者の条件に適合するデイケア利用者に、本研究の目的、内容、人権擁護、個人情報の保護、プライバシーに関する説明を行い、同意と協力が得られた者を対象者とした。なお、本研究は青森県立保健大学研究倫理委員会の承認を得て行われた。

【結果】1)外出頻度は、全対象者での1週間あたりの回数は、夏季の外出が平均回数が1.7回、冬季が0.6回となっており、夏季に比べ、冬季で外出頻度が有意に少なかった。2)老研式活動能力指標の得点は、夏季では、5.7±3.7点、冬季では、5.7±3.8点であり、夏季と冬季で有意な差はみられなかった。3)FIMの得点は、夏季では24.2±7.4点、冬季では、24.5±7.3点であり、夏季と冬季で有意な差はみられなかった。4)意欲については、やる気スコアの得点に有意な差はみられなかった。5)健康関連QOLについては、SF-36の尺度の「体の痛み」が夏季に比べ、冬季で有意に得点が低かった。

【考察】意欲、活動能力、移乗や移動の運動能力についても夏季と同じように冬季であっても維持されていた。外出頻度の調査では、1週間あたりの外出回数は、夏季で1.7回、冬季で0.6回と冬季で有意に少なかったが、デイケア利用による外出を除いたものであった。デイケア利用回数を加えて考えると、週に1~3回デイケアに通っているため、実際には、調査した外出頻度以上に、冬季においても外出の機会は保たれていたことになる。このことが、活動能力、運動項目、意欲を維持させる要因となっており、デイケアという通所による在宅サービスが、一定の成果をあげている可能性が考えられた。

【理学療法学研究としての意義】冬季の積雪寒冷により受けている在宅高齢障害者の身体、精神的な影響と現状について把握することにより、QOLの向上につながるアプローチを探る一つの報告ができると考える。
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© 2010 日本理学療法士協会
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