理学療法学Supplement
Vol.37 Suppl. No.2 (第45回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P3-232
会議情報

一般演題(ポスター)
障害者スポーツの普及に理学療法士養成学校が果たす役割
当校を卒業した理学療法士へのアンケート調査より
井上 由里里内 靖和沖田 任弘十田 朋也水谷 貴佐正木 光裕高見 栄喜廣岡 幸峰小枝 英輝成瀬 進上杉 雅之
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抄録

【目的】当校を卒業した理学療法士に対しての卒業時に取得した障害者スポーツ初級指導者の資格と障害者のスポーツに関する意識調査から、障害者のスポーツ普及における理学療法士養成学校の役割について検討した。
【方法】平成15~17年度の当校理学療法学科の卒業生で、勤務先が確認できた89名のうち、回答が得られた46名(回答率52%)、平均年齢26.9歳(23~38歳)、男性29名、女性17名、臨床経験平均4.1年を対象とした。
障害者スポーツ初級指導者の認定資格の意義と更新の有無、障害者のスポーツへの関わりの程度や養成学校に対する要望などについて、無記名にて平成20年度8~9月にアンケート調査を行った。
【説明と同意】アンケート用紙を送付する際に書面にて、本調査の目的を説明し結果を公表することを確認した。
【結果】卒業時に取得した「障害者スポーツ初級指導者認定の資格を登録更新をした」のは5名(11%)で、そのうち1名(2%)のみが障害者スポーツ中級指導者の資格を取得していた。「障害者スポーツ指導者の資格は役に立つ」は3名(7%)が、“非常”にもしくは“少し”思うと回答した。4名(9%)が、卒業後に障害者のスポーツに何らかの形で関わっていた。障害者スポーツに関わりが無かった42名(91%)は、その理由として「機会がない」は32名(69.5%)、「時間がない」は29名(63%)、「知識不足なので自信がない」は31名(67.4%)、「関心がない」は9名(19.5%)が、“非常”にもしくは“少し”思うと回答した。
「あなたの職場もしくは住んでいる地域で、障害者のスポーツは普及している」と“非常”にもしくは“少し”思うと2名(4.3%)が回答した。あなたの働くもしくは住んでいる地域で、今後障害者のスポーツが普及するために必要な条件として「実際に行う機会が提供されること」は39(84.8%)、「障害者のスポーツについての情報が一般的に提供されること」は40名(87%)、「指導者の育成」は、33名(71.8%)、「安心して障害者のスポーツを行う公的機関等によるサポート体制」は36名(84.8%)が、“非常”にもしくは“少し”思うと回答した。養成学校の役割について「在校中に障害者のスポーツについて、もっと知識を得たかった」は、28名(60.9%)、在校中に障害者のスポーツをもっと実際に経験したり、行う機会があればよかった」は36名(78.2%)が、“非常”にもしくは“少し”思うと回答した。「あなたの働くもしくは住んでいる地域で障害者のスポーツは普及するために理学療法士の役割は大きい」と30名(65.2%)が、“非常”にもしくは“少し”思うと考えていた。31名(67.4%)が、「機会があれば、障害者スポーツに関わっていきたい」と“非常”にもしくは“少し”思うと回答した。
【考察】障害者のスポーツに関心はあるものの、実際に関わっている理学療法士は非常に少なかった。その理由として、日常業務や、研修などで時間的な余裕がないだけでなく、機会が少ないことや知識と経験の不足も明らかになった。理学療法士養成校在学中に障害者のスポーツを実際に経験し、卒業後もその情報を提供していくことが、障害者のスポーツに関わる理学療法士を増やし、障害者のスポーツ普及に理学療法士が関わっていくことができる可能性が示唆された。
【理学療法学研究としての意義】障害者の社会参加、運動不足による生活習慣病の予防など障害者がスポーツに参加する目的は多様で、かつ意義深い。そして理学療法士が障害者の生活の質の向上にどのような役割を担えるのかを考えた際にも、スポーツはキーワードとなるであろう。理学療法士の障害や運動に関する専門的知識は、その普及に大きな役割を果たすことができる。よって、今回の報告は障害者のスポーツ普及に関わる理学療法士の育成に必要な情報を提供していることから、理学療法学研究としての意義は高いと考える。

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© 2010 日本理学療法士協会
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