理学療法学Supplement
Vol.37 Suppl. No.2 (第45回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P1-237
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一般演題(ポスター)
体幹の易回旋性と腰痛の関連について
和田 満成番條 友輔赤松 加奈子堀田 和孝前田 愛小西 拓郎浅田 啓嗣
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抄録
【目的】
腰椎は回旋運動が制限される構造となっており,椎間関節や椎間円板は回旋ストレスにより損傷しやすい組織である。腰椎の柔軟性が高まった場合,立位での姿勢異常や代償運動により,他の関節でまず起こるべき運動が腰椎で先に起きてしまい,回旋により腰椎にメカニカルストレスがかかり腰痛が起こると考えられる。そこで本研究では,体幹の易回旋性と腰痛との関係を明らかにすることを目的に行った。
【方法】
対象は大学生50名 (男性31名,女性19名,平均年齢21.2±2.4歳)である。対象の腰痛の有無を調べ腰痛群と健常群に分類した。立位の体幹易回旋性として立位時の胸郭に対する骨盤回旋角度を測定した。測定は壁に向かい立位をとり,肩の高さに肘伸展位で正面の壁に手をつかせた肢位で行った。正面の壁に平行な線と両PSISを結んだ線とがなす角度を骨盤回旋角度とし,立位回旋群(回旋角度2度以上),立位非回旋群(1度以下)に分類した。水平面上で右のPSISが左のPSISより後方に位置している場合を骨盤右回旋(腰椎は左回旋),その逆を左回旋とした。
臥位の体幹易回旋性は股関節と骨盤の相対的な柔軟性の左右差を基に判定した。臥位で両股関節45度,膝関節90度屈曲位から,一方の股関節を外転・外旋させるよう指示し,対側骨盤が浮き上がる大きさの左右差を確認した。相対的柔軟性による代償で回旋により骨盤の浮き上がりが大きい側を優位側とした。骨盤が右回旋しやすい者を右優位(腰椎は左回旋),その逆を左優位と定義した。立位右回旋群で臥位回旋右優位の者と立位左回旋群で臥位回旋左優位の者を易回旋性同側タイプ,右回旋群で左優位の者と左回旋群で右優位の者を易回旋性対側タイプと定義した。
腰痛有無と立位骨盤回旋の有無・臥位回旋優位性の関係はχ2乗検定を用い確認した。有意水準は5%未満とした。
【説明と同意】
対象者全員に対して予め研究の趣旨を説明し,書面による同意を得た。
【結果】
内訳は腰痛群19名で,回旋群11名(58%;右回旋群5名,左回旋群6名),非回旋群8名(42%),健常群は31名で,回旋群21名(68%;右回旋群12名,左回旋群9名),非回旋群10名(32%)であり,腰痛と回旋有無には有意な関係は認められなかった(P=0.29)。
腰痛有無と臥位の体幹易回旋性の関係は,腰痛群では右優位4名(21%),左優位8名(42%),左右対称7名(37%),健常群では右優位5名(16%),左優位19名(61%),左右対称7名(23%)となり,各群とも左優位の者が多く見られ有意な関係はみられなかった(P=0.16)。
立位右回旋群の腰痛群では臥位回旋右優位の割合が多く,健常群では臥位回旋左優位の割合が多かった。立位左回旋群の腰痛群では臥位回旋左優位の割合が多く,健常群でも同様に左優位のものが大半を占めていた(P=0.24)。そこでタイプ別体幹易回旋性と腰痛有無の関係をみると,腰痛群は易回旋性同側タイプ5名(83%),対側タイプ1名(17%)であった。健常群は易回旋性同側タイプ7名(47%),対側タイプ8名(53%)であり,腰痛群では同側タイプの割合が多い傾向がみられた。しかし,健常群では同側タイプと対側タイプの割合は同程度であった(P=0.29)。
【考察】
腰痛の有無と立位回旋の有無に明確な関係はなく,腰痛の有無と臥位の体幹易回旋性の有無にも明確な関係は見られなかった。
しかし,腰痛群の体幹易回旋性同側タイプは対側タイプと比べ,人数が多いという傾向が見られた。一方,健常群の比較では人数の差は見られなかった。この理由として,立位時の骨盤回旋方向と同側股関節の柔軟性低下があり,股関節を外転・外旋したときに動きを代償するため,腰椎の柔軟性が高くなり骨盤回旋が生じやすくなっていると考えられる。体幹易回旋性の左右差という要素が見られるというだけでは腰痛の原因となっていると言えないが,明確な有意差はみられないものの股関節の柔軟性の低下が生じている側への骨盤の回旋が習慣化することで腰痛を引き起こす可能性が考えられる。
本研究の結果,有意な関係は見出すことはできなかったが,いくつかの要因が重なることで腰痛を起こす可能性が高まると考えられた。しかし健常群でも体幹易回旋性同側タイプが半数見られ,同側タイプが必ず腰痛を起こすとは言えないが,この回旋の起こりやすさが習慣化し腰椎周囲組織の疼痛に結び付くのは一定程度以上の期間が必要だと考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
本研究は横断研究であるため時間的な前後関係については不明瞭であるが,立位時の骨盤回旋が生じている健常群に今後腰痛が発生する可能性があると推察される。今後はコホート研究へと発展させ,健常群の経時的変化を追っていくことで腰痛リスクを明らかにできれば腰痛予防の一助となると考えている。
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© 2010 日本理学療法士協会
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