理学療法学Supplement
Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: PI2-046
会議情報

ポスター発表(一般)
Reebook TAIKAN着用による姿勢変化
頭頚部角度に着目して
多米 一矢小関 博久柿崎 藤泰財前 知典川﨑 智子関口 剛平山 哲郎熱海 優季
著者情報
キーワード: 姿勢, 頭位, 足圧中心
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【目的】 姿勢は理学療法を展開するうえで重要な評価項目の一つである。運動器疾患において患部に対する理学療法のみでは改善が図られないこともあり、姿勢という観点から患部を捉えて理学療法を施行することで臨床的効果が得られることを多く経験する。特に頚椎疾患は、土台となる下肢や体幹の影響を多分に受けることが予測され、患部に対する理学療法のみでは改善の難しい部位の一つである。そこで本研究では、姿勢と頭頚部の位置変化の関係について、装着することにより体幹に意識が集中しよりよい姿勢に近づくといわれているPosture Stability Systemベルト(以下PSSベルト)を内蔵したReebok TAIKAN(リーボック社製)を用い、PSSベルト内蔵型と非内蔵型ウェア着用における姿勢変化と頭頚部の位置変化及び足圧中心(以下COP)変化について比較検討した。

【方法】対象は健常成人男性10名(平均年齢27.7±4.6歳、平均身長175.4±7.0cm)とした。姿勢の解析についてはPosture analyser PA200P(インターリハ社製)を用いて測定し、COPの計測には足圧分布測定装置(Medicapteurs社製Win-pod)を使用した。測定肢位は立位とし、PSSベルト非内蔵型ウェアとPSSベルト内蔵型ウェアを装着し、各1回4方向を足圧分布測定装置上にて撮影した。姿勢の計測位置は矢状面上で大転子・腓骨頭・剣状突起・上前腸骨棘(以下ASIS)・上後腸骨棘(以下PSIS)・肩峰・第7頚椎(以下C7)・側頭突起を指標とし、前額面上では剣状突起・ASIS・PSIS・膝蓋骨中央を指標とした。なお、矢状面における頭頚部の角度は側頭突起-C7ライン対して肩峰-C7ラインの成す角度を求めた。前額面上での各体節の偏位は正中線を基準として、剣状突起・ASIS・PSIS・膝蓋骨中央の偏位距離を測定した。また、各COPの計測については足部中心位置からCOPの前方移動距離を計測し、PSSベルト非内蔵型ウェア着用時とPSSベルト内蔵型ウェア着用時にて比較検討した。統計処理には対応のあるt検定を用い有意確率は5%未満とした。

【説明と同意】被検者にはヘルシンキ宣言に沿った同意説明文書を用いて本研究の趣旨を十分に説明し、同意を得たうえで実施した。

【結果】矢状面における頭頚部の角度は、PSSベルト非内蔵型では、51.3±14.0°PSSベルト内蔵型では、平均55.2±14.0°となり、PSSベルト内蔵型ウェア着用時では頭位が後方位動し、正中線に近づく現象がみられた(p<0.05)。また、腓骨頭位置は、PSSベルト非内蔵型で、59.0±51.3°PSSベルト内蔵型では、50.9±54.2°と下腿が後傾し、より正中線に近づいた(p<0.05)。
COPは、PSSベルト非内蔵型で-1.6±3.4mm、PSSベルト内蔵型では0.63±3.7mmと変化し、PSSベルト内蔵型ウェア着用時にて有意なCOPの前方移動が見られた(p<0.05)。
剣状突起・ASIS・PSISの矢状面位置変化については有意差が見られなかったものの、剣状突起位置に関してはPSSベルト非内蔵型で107.1±60.6mm、PSSベルト内蔵型で115.5±37.3mmとなり、PSSベルト内蔵型ウェア着用時において剣状突起が前方移動する傾向がみられた。
また、前額面上では、肋骨下縁の高低差が右下がりに位置する傾向にあったが、PSSベルト内蔵型ウェアの着用によって右肋骨低位-7.4±12.5mmから-3.6±7.8mmに変化し、より水平ラインへ近づく現象がみられた。

【考察】本研究の結果により、PSSベルト内蔵型ウェアを着用することで、姿勢変化・COPの変化が見られた。PSSベルト非内蔵型ウェア着用時では、いわゆるスウェイバック姿勢となり、COPは後方に位置していることが多い。PSSベルトは、その効果として上半身部分と下半身部分のベルトが身体重心点に適度な長軸方向への圧縮を加え骨盤の前傾を誘導し、体幹は前上方に伸展するという特性があり、PSS内蔵型ウェア着用時では頭頚部角度の増加・剣状突起の前方化・COP前方化・下腿後方化が生じ、頭位後方移動が行われ正中線に近づく現象が生じたものと推察される。また、PSSベルト内蔵型ウェアは矢状面の変化だけでなく、前額面にも変化を及ぼすことが考えられ、その結果、左右の肋骨下縁の高低差が補正され、より水平ラインに近づいたものと考えられる。

【理学療法学研究としての意義】本研究の結果より、頭頚部の角度は頚部だけの問題ではなく下肢・体幹と密接な関係があるものと推察される。このことは頚椎疾患に対する理学療法を展開する上で姿勢を評価することの必要性を示唆しているものと考えられる。
著者関連情報
© 2011 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top