理学療法学Supplement
検索
OR
閲覧
検索
Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会 抄録集)
選択された号の論文の1514件中1~30を表示しています
基礎理学療法
口述発表(一般)
  • 藤田 直人, 近藤 浩代, 永友 文子, 村上 慎一郎, 藤野 英己, 石原 昭彦
    専門分野: 基礎理学療法1
    OI1-001
    公開日: 2011/05/26
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】糖代謝は主に骨格筋や肝臓において行われている.2型糖尿病の場合,耐糖能の低下とインスリン抵抗性の上昇により骨格筋における糖の取り込みが減少する.インスリン刺激による糖取り込みの75%以上は骨格筋によるものであり,骨格筋でのインスリン感受性の低下は,個体の糖処理に影響する.一方,糖尿病の骨格筋では線維タイプの移行が報告されており,耐糖能の低下やインスリン抵抗性の上昇に大きく関与している.一方,高気圧・高濃度酸素環境へ長期間暴露した足底筋では,酸化系酵素活性が高い遅筋線維の割合が増加すると報告されている.遅筋線維は速筋線維に比べてインスリン感受性が高く,グルコース取り込みが多いことが知られている.長期間の高気圧・高濃度酸素環境への暴露により遅筋線維の割合が増加することは,2型糖尿病患者における糖代謝改善につながると考えられる.本研究では,長期間の高気圧・高濃度酸素環境への暴露による骨格筋の組織化学的変化を糖尿病モデルラットの速筋を用いて検証した.また,酸化的リン酸化反応に関与するコハク酸脱水素酵素(SDH)活性やグルコースの取り込みに関与するとされる骨格筋内毛細血管密度の変化も併せて検証した.

    【方法】インスリン抵抗性の高い2型糖尿病モデル動物として生後5週齢のOLETF雄ラットを用い,そのコントロールには同一週齢のLETO雄ラットを用いた.全てのOLETFラットおよびLETOラットは,通常飼育群と高気圧・高濃度酸素環境へ暴露する群に分けた.高気圧・高濃度酸素環境へ暴露するラットは1.25気圧で酸素濃度を36%に維持した酸素カプセル(動物実験用 Medical O2)に毎日3時間暴露した.22週間の暴露期間終了後に長指伸筋を摘出し,未固定の凍結横断切片を作製し,ATPase染色(pH 4.25)とSDH染色を行い,筋線維タイプ別のSDH酵素活性を測定した.また,アルカリフォスファターゼ染色を行い,筋線維あたりの毛細血管数を算出した.統計処理は一元配置分散分析とTukey-Kramerの多重比較検定を行い,有意水準は5%未満とした.

    【説明と同意】全ての実験は所属施設における動物実験に関する指針に従い,動物実験委員会の許可を得た上で実施した.

    【結果】全ての筋線維タイプにおいて,OLETFラットのSDH酵素活性はLETOラットよりも低値を示した.また,高気圧・高濃度酸素環境に暴露したOLETFラットとLETOラットのSDH酵素活性は,全ての筋線維タイプにおいて,通常飼育群よりも高値を示した.OLETFラットにおける筋線維あたりの毛細血管数は,LETOラットよりも高値を示した.また,OLETFラット,LETOラットともに,高気圧・高濃度酸素環境暴露による筋線維あたりの毛細血管数の変化は認めなかった.

    【考察】2型糖尿病モデル動物であるOLETFラット長指伸筋の全筋線維タイプにおいてSDH酵素活性が低下したが,高気圧・高濃度酸素環境への暴露によって抑制された.先行研究では,高気圧・高濃度酸素環境への暴露は,2型糖尿病モデル動物の成長に伴う血糖値上昇と高インスリン血症を予防したと報告されており,本研究で確認された長指伸筋における遅筋線維割合の増加や酸化系酵素活性値の上昇は糖代謝機能改善に関与した可能性があり,2型糖尿病に対する高気圧・高濃度酸素処方の有効性が示唆された.また,骨格筋内毛細血管密度の変化に関して,OLETFラットはLETOラットに比べて筋線維あたりの毛細血管数の増加を認めた.先行研究において,2型糖尿病の初期過程では狭小毛細血管数が増加するとされており,今回のOLETFラットにおける毛細血管数の増加はこれに相当するものと思われる.本研究では,長指伸筋内の毛細血管に対する高気圧・高濃度酸素による顕著な変化は認められなかったが,アルカリフォスファターゼ染色では毛細血管の狭小化の様な微細な構造変化を検出し難いため,高気圧・高濃度酸素が2型糖尿病の骨格筋内毛細血管に及ぼす効果を検証するには,新たな測定方法の必要性が示唆された.本研究で用いた高気圧・高濃度酸素処方による長指伸筋における酸化系酵素活性値の上昇は,遅筋線維割合の増加によるインスリン受容体とGLUT4の発現量を変化させている可能性があり,更なる検証が必要である.

    【理学療法学研究としての意義】高気圧・高濃度酸素処方は,運動耐容能が低下した虚弱高齢者等においても安全かつ効果的に実施可能であり,2型糖尿病患者に対する理学療法の治療手段を増やすことは意義があると考える.
    抄録全体を表示
  • 荒巻 英文, 奥田 裕, 伊藤 俊一, 高柳 清美
    専門分野: 基礎理学療法1
    OI1-002
    公開日: 2011/05/26
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
    近年、骨格筋の伸張刺激による筋肥大効果が報告されており、高齢者の長期臥床による筋萎縮ならびにdeconditioning防止に有用である可能性が示されている。一般に、筋肥大を起こすには1時間以上の伸張刺激が必要と報告されているが、臨床現場では実施することは不可能である。一方、短時間では反復伸張の方が効果的であるとの報告も散見されるが、どれも小動物における検討であり、ヒトにおける報告は見られない。本研究の目的は、骨格筋の反復伸張における筋肥大および筋力増強効果を、ヒトを対象として検証し、運動制御や転倒予防に対して、より効率の良い理学療法実施に関して検討することである。
    【方法】
    対象は下肢に整形外科的疾患、血管病変等の既往がなく、日常的に運動習慣のない健常成人男性20名(平均年齢26.0±6.2歳、身長171.7±6.2cm、体重72.7±18.2kg)とした。対象を無作為に介入群10名、対照群10名に群分けし、研究期間中、運動習慣を変えないよう指示した。介入群は他動的足関節背屈運動を行うために、等速性筋力測定装置(Biodex system 3,Biodex Medical Systems社製:以下Biodex)のダイナモメータに足関節を取り付け、股関節70°、膝関節0°にて足底がフットプレートから離れないよう強固に固定した。足関節角度は、腓骨と第5中足骨のなす角度90°を底背屈0°の中間位と定めた。反復伸張の対象筋は下腿三頭筋とし、対象各々の足関節背屈可動域(自動運動)をBiodexにより2回ずつ測定した。先行研究に準じ、10°/秒で足関節0°から最大背屈可動域まで、他動的反復背屈運動を1分間約15回、1日10分の介入を週3回の頻度で4週間の計12回実施した。反復伸張時には、リラックスして底屈方向への随意収縮を行わないように指導し、Biodexの足関節底屈トルク値を測定し、随意収縮を行っていないことを確認した。介入前後の計2回の下腿三頭筋の最大筋力、足関節背屈可動域(自動運動)、筋形状指標(筋厚、羽状角)を計測した。対照群では伸張を加えず、介入群と同様の計測を行った。測定は全員右側で行った。筋力測定にはBiodexを使用し、足関節筋力測定時の姿勢に準じ、股関節90°、膝関節20°、足関節0°にて等尺性足関節底屈筋力を3回ずつ測定した。筋形状は超音波診断装置(Vivid i CE0344,GE Healthcare社製)Bモード法を使用し、腹臥位で膝関節0°、足関節0°の位置にて各2回測定した。測定部位は先行研究に基づき、下腿長の近位から15%とし、腓腹筋内側頭とした。この部位の短軸の位置は筋の内外側中間位として皮膚上から決定した。筋厚および羽状角は、超音波画像から画像解析ソフト上にある分析ツールを用いて計測した。筋厚は画像中央の表層腱膜と深層腱膜間距離とし、羽状角は表層腱膜と筋束のなす角の平均値とした。筋束長は先行研究に基づき、筋厚と羽状角から次の式、筋束長=筋厚/sinθ(θは羽状角)を用いて算出した。各測定項目の値は全て平均±標準偏差で示した。各筋形状指標間の比較および各最大筋力間の比較には、Wilcoxon t検定を行った。有意水準は5%未満とした。また、各筋形状指標測定の検者内信頼性を級内相関係数ICC(1,1)で算出した。
    【説明と同意】
    埼玉県立大学倫理委員会の承認のもと、対象者には研究内容についての説明を行い、文書での同意を得た。
    【結果】
    筋形状指標測定の級内相関係数は腓腹筋筋厚0.90であり、羽状角0.70であった。介入群の腓腹筋筋厚は平均2.9±2.0mmと有意に増加(p<0.01)し、羽状角は平均3.4±3.0°と有意に増加(p<0.01)したが、対照群では有意な差は認められなかった。筋束長、筋力は両群ともに有意な差は認められなかった。
    【考察】
    今回の測定は、高い信頼性が示された。ヒト下腿三頭筋に対して、反復伸張を1分間約15回(角速度10°/秒)、1日10分間、週3回の頻度にて4週間の計12回実施することにより、筋厚を増加させることが可能と考えられた。しかし、有意な筋力の増加は認められなかったことから、今回得られた筋厚増加は一般的に認められた筋肥大とは異なり、さらに詳細な検証が必要と考えられた。今後、伸張の負荷量、頻度、持続時間、期間をはじめ、筋構成タンパクの増加をRNAの抽出による筋特異的転写因子や筋成長因子の検証など、さらに詳細な検討も必要であると考える。
    【理学療法学研究としての意義】
    ヒト下腿三頭筋の4週間の反復伸張により、筋力増強は伴わないものの筋肥大を生じさせることが可能である可能性が示唆された。
    抄録全体を表示
  • 木村 繁文, 山崎 俊明, 稲岡 プレイアデス 千春, 栗山 敬弘
    専門分野: 基礎理学療法1
    OI1-003
    公開日: 2011/05/26
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】実験動物を用いて廃用性筋萎縮を惹起させた際に,筋の毛細血管数の減少が生じることが報告されており,それに伴う筋血流量の低下,筋代謝の低下が生じることが予測される.それに対して伸張刺激は筋の血流量を増大させることが報告されており,筋代謝の改善が期待できる.これまでの研究において,廃用性筋萎縮とその治療的介入による血流量の変化を,毛細血管数をもとに予測したものは散見されるが,血流量を評価したものは少ない.そこで本研究では近年,骨格筋血流量の評価に有用とされている塩化タリウム‐201トレーサー(201TlCl)を用い,廃用性萎縮筋に対する伸張運動の血流量の影響を筋の部位別に検討すること目的とした.

    【方法】対象は8週齢のWistar系雄ラット(n=39)の右側ヒラメ筋で,これらを対照群(C群:n=10),後肢懸垂により廃用性筋萎縮を惹起する群(HSA群:n=7),後肢懸垂期間中に伸張刺激を加える群(STA群:n=7),後肢懸垂期間終了後,筋摘出直前に伸張刺激を加える群(HSB群:n=7),後肢懸垂,及び伸張刺激期間終了後,筋摘出直前に伸張刺激を加える群(STB群:n=8)の5群に振り分けた.伸張運動はラットの股関節,膝関節を90°に固定し,足関節のみを背屈する装置を作成し実施した.運動は間歇的伸張運動(10秒間足関節背屈位保持後,10秒間底屈位保持)とし,負荷量はラットの体重の50%とした.麻酔下にて1日1回20分間,計10日間実施した.実験期間終了後,体重を測定し麻酔下で201Tlを腹腔内投与し,HSB,STB群は20分間の伸張運動を行った.投与から30分後にラットを安楽死させ,右側ヒラメ筋を摘出し,筋湿重量を測定後,各試料の201Tlの取り込み率を測定した.また筋の近位部(筋長の約25%),筋腹部(筋長の約50%),遠位部(筋長の約75%)の取り込み分布を測定し,筋全体に対する比率を算出した.各群の取り込み率の比較は一元配置分散分析を行い,有意差を認めた場合にはTukeyの方法による検定を行った.部位別の群間の取り込み分布比,各群の部位間の取り込み分布比の比較は,群間と部位間で二元配置分散分析および,Tukeyの方法による検定を行った.

    【説明と同意】本研究は本学動物実験委員会の承認を得て行った(承認番号:AP‐091481).

    【結果】各群の取り込み率においてC群と比較し,HSA,STA,HSB,STB群は有意に低値を示した.群間と部位間の交互作用は認められなかった.取り込み分布比の部位別の群間での比較では,遠位部においてC群と比較しHSA群は有意に低値を示した.取り込み分布比の各群の部位間の比較においてHSA群,STA群,HSB群の遠位部とHSB群の筋腹部は,各群の近位部と比較し有意に低値を示した.C群,STB群では部位間に有意差は認められなかった.

    【考察】各群の取り込み率の結果において,廃用性萎縮筋に対する我々の伸張刺激方法による平常状態の血流増大効果は認められなかった.また,伸張刺激後に筋を採取した群においても同様に血流量の増大を認めなかった.これについては伸張刺激後の血流増大のピークが筋を採取する以前に生じ,筋採取時には平常状態へと戻っていったことが原因として考えられる.これらのことから,廃用性萎縮筋に対して伸張刺激のみでは平常状態での筋血流量の改善は困難であること,また,廃用性萎縮筋に対する伸張刺激の血流増大効果は長時間持続しないことが推察された.部位別の群間の取り込み分布における,遠位部のC群とHSA群,STA群との比較結果から,廃用性萎縮筋においては遠位部の血流量が相対的に低下し,日常的な伸張刺激により筋の遠位部の相対的な血流低下を完全ではないが抑制することが可能であったことを示している.さらにHSB群,STB群における部位間の比較結果は,日常的に伸張刺激を実施した群と,後肢懸垂のみを実施した群では,単回の伸張刺激後の血流分布が異なり,日常的な伸張刺激により,血流の分布に差がなくなることを示している.以上のことから廃用性萎縮筋への伸張刺激の効果は,筋血流量を増大させることよりも,筋の血流の分布を均一化することにあることが示唆された.

    【理学療法学研究としての意義】まず,従来,臨床における伸張刺激は,関節可動域や軟部組織の柔軟性の改善を目的に実施されることが多いが,本研究では伸張刺激の効果を廃用性筋萎縮の機能改善という視点から介入した点,次に筋萎縮抑制効果に血流量を指標とした点,さらに部位別に評価した点から,本研究結果は,今後の臨床応用の基礎データとして有用であると考える.
    抄録全体を表示
  • 伊藤 明良, 三浦 美樹子, 青山 朋樹, 土本 浩司, 橋本 幸次郎, 小倉 祥子, 三井 裕人, 石橋 誠, 黒木 裕士
    専門分野: 基礎理学療法1
    OI1-004
    公開日: 2011/05/26
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
    低出力超音波パルス療法(Low-intensity pulsed ultrasound:LIPUS)は骨形成促進効果を有することから難治性骨折治療にも既に用いられている。関節軟骨に対するLIPUS効果の報告も散見されるが、これらの多くは関節軟骨構成体であるコラーゲンやアグレカン合成等の同化作用に関するもので、関節軟骨破壊などの異化作用に着目した報告はない。本研究の目的は、LIPUSが即時的な関節軟骨破壊抑制(異化抑制)作用を有するかどうかを検証することである。また、理学療法応用への可能性について検討することである。
    【方法】
    食用に屠殺されたブタ(生後6カ月)大腿骨顆部から、6mm径の関節軟骨プラグを採取した。培養液の入ったディッシュ内で1日培養後、LIPUSを照射した。照射条件は、照射時間20分と60分、照射強度160mWと400mWとし、照射しないコントロール群を含めた5群(各群n=3)で検討を行った。照射後直ちに急速冷凍しmRNAの変性を防止した。5群の関節軟骨プラグからTotal RNAを抽出し、逆転写反応によりcDNAを生成した。このcDNAを鋳型とし、異化作用に関与するMMP13(matrix metalloproteinase-13)、MMP1(matrix metalloproteinase-1)、異化抑制作用に関与するTIMP1(tissue inhibitor of metalloproteinase-1)、TIMP2(tissue inhibitor of metalloproteinase-2)、関節軟骨基質であるCol2 (type 2 collagen)とACAN (aggrecan)のmRNAに対する特異的なプライマーをそれぞれ用いて発現量を測定した 。なお、各mRNA発現量はReal-time PCR法により検出し、beta-actin mRNA発現量を内部標準遺伝子として算出した。算出された値は、コントロール群を1とした場合の相対量として示した。
    【結果】
    MMP13、MMP1のmRNA発現量は、LIPUSを照射していないcontrol群に比べてLIPUS照射60分400mW群において抑制される傾向が認められた(MMP13: 0.27±0.14, MMP1: 0.38±0.07)。TIMP1、TIMP2、Col2、ACANのmRNA発現量は、control群と比べて有意な差は認められなかった。
    【考察】
    本研究の結果からLIPUS刺激はMMP13、MMP1などの異化作用促進因子を直接抑制することが示唆された。これはMMPsをタンパク結合で抑制するTIMPの発現を上昇させることや、関節軟骨基質合成を相対的に増加させることで生じるのではなく、LIPUS刺激の初期段階で異化作用抑制効果を有する可能性を示唆する結果である。
    近年の研究からは適切なメカニカルストレス(機械的刺激)は関節軟骨においてコラーゲンやアグレカンなどの基質タンパクの合成を促進するだけでなく、MMPsの発現を抑制することが報告されている。適切なメカニカルストレスによるMMPs発現の抑制メカニズムの1つとして、転写共役調節因子であるCITED2の発現量が増加し、MMPsの転写共役活性化因子であるEts-1と競合することでMMPsの発現が抑制されることが考えられている。LIPUSによる刺激も同様なメカニズムが関与している可能性があり、今後明らかにしていく必要がある。
    【理学療法学研究としての意義】
    個体発生、成長、形態維持にはメカニカルストレスが重要でありMechanobiologyという研究分野が存在する。理学療法学研究においてもMachanobiologyの要素はその治療の中に取り入れられている。例示すると変形性膝関節症治療における関節への力学的負荷コントロールやアライメント調整、筋力向上による安定性獲得などである。しかしながらこれらは関節軟骨に対する直接作用を目的としたものではなく、これまでにその有効性が組織、細胞、分子レベルで検討されることがなかった。本研究における結果はLIPUSが関節軟骨を標的とした物理療法として有効であることを示すだけでなく、理学療法学におけるMechanobiologyの新しい分野を開く上で重要であると考える。
    抄録全体を表示
  • 橋本 幸次郎, 三井 裕人, 青山 朋樹, 三浦 美樹子, 土本 浩司, 伊藤 明良, 小倉 祥子, 黒木 裕士
    専門分野: 基礎理学療法1
    OI1-005
    公開日: 2011/05/26
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】膝前十字靱帯損傷と変形性膝関節症(以下OA)発症との関連はこれまでにも報告されているが、前十字靱帯損傷受傷後にどのような機序を経てOAに到るかを解析したものはない。本研究の目的はラット膝前十字靱帯損傷モデルを作成後、トレッドミル走行により定量的な運動を負荷し、簡便な二次元動作解析法と関節可動域測定を用いて実験動物の関節負荷量を推定する方法を検討することで、OA発症機序のシミュレーションを行うことである。

    【方法】実験動物としてWister系雌8週齢ラットを用いた。膝OAモデル群(n=8)とcontrol群(n=3)を設けた。膝OAモデル群は麻酔下で右後肢に前十字靭帯切離手術(以下、ACLT)、左後肢にSham手術(擬似手術)を行った。両群とも麻酔下にてラット左右後肢に赤色油性顔料系インクで5カ所ランドマーク(寛骨結節、大転子、膝関節裂隙、腓骨外果、第五中足骨)を設定した。関節角度測定は、麻酔下にてhip、knee、ankleの各関節最大屈伸時を撮影しimage-J (NIH)のangle toolにて計測した。皮膚上に設けたランドマークの信頼性を検証するために同時に角度計による実測値を測定し比較した。術後3日目以降、両群をトレッドミルにて22~25m/min の中等度負荷速度で走行させ、その様子を左右方向から動画撮影した。動画解析はvirtual dubにて30/secのimage sequence に変換後、1個体当たり10歩行周期を抽出し、image-J のangle toolで経時関節角度変動を計測した。計測結果から角速度、角加速度を算出後、後肢の各セグメント質量と関節軸からセグメント重心までの距離を一定とみなし、両群間の回転トルクを比較した。

    【説明と同意】本研究は所属大学の動物実験委員会の承認を受けて行い、実験動物の飼育、実験は大学の動物実験指針に遵守して行った。

    【結果】ラットの関節可動域を実測値(角度計)と画像上(image-J)で比較した結果、両間に顕著な差はみられなかった。二次元動作解析において、総角度変動域を両群で比較すると、ACLT側 hip 22.2%減少、knee 14.1%増加 、ankle 27.3%増加、Sham側hip 20.2%減少 ankle 12.3%増加していたが(いずれも有意)、Sham側kneeで有意な増減は認められなかった。control群においては立脚期の膝関節屈曲方向の回転トルクに対する制動、いわゆる立脚期中に2度膝が屈伸するdouble knee actionによる制動が認められた。一方膝OA群ACLT側では、立脚期においてこの制動がみられず、足関節による代償運動が観察された。立脚期接地時の膝関節に生じる関節トルクを求めたところ、ACLT群はコントロール群に対して42.8%増加していた。また、1歩行周期に要する時間を比較すると膝OA群Sham側で立脚期(ACLT側遊脚期)が54.2%増加していた。

    【考察】これまで動物実験において疾患モデルの動作解析を行った研究は存在しない。動物実験において疾患モデルを構築することの意義は、運動負荷量を定量化できることや病態進行の変化を定量解析できる。今回の解析で得られたシミュレーションの結果、トルクはACLT群で42.8%増加し、膝関節への負荷量が増加していることは明らかである。また膝OA群の走行特徴は、Sham側の立脚期増加、およびACLT側の足関節総角度変動域の増加によって、ACLT側の膝関節運動を代償している。とくにACLT側で膝関節屈曲方向の回転トルクに対する制動がみられずにdouble knee actionが欠如する点を、足関節運動が27.3%に増加することで代償していることは今回の研究で得た新知見である。今後はラットのリンクモデルを構築し、関節トルクをさらに詳細に推定・定量するのに加え、更に組織学的検討を行うことでOAの発症機序を明らかにする予定である。

    【理学療法学研究としての意義】これまでに前十字靱帯靱帯損傷時における運動負荷が膝OAに及ぼす影響について経時的に、定量評価する方法は存在しない。今回の動物疾患モデルを用いて運動負荷を定量化し、それに伴って変化するバイオメカニクス変化とOA発症機序や初期病態に与える影響を明らかにする事は基礎研究のみならず、臨床現場における運動負荷の方法や量の決定を行ううえでのシミュレーションをする際に重要な知見であると考える。
    抄録全体を表示
  • 坂本 梨花, 羽崎 完
    専門分野: 基礎理学療法1
    OI1-006
    公開日: 2011/05/26
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
    肋骨は呼吸に伴って運動し,吸気時では上方に,呼気時では下方に回転運動を行う。また,最大吸気時に,脊柱起立筋は脊柱を伸展させ,直接肋骨に作用しないが肋椎関節を介して肋間隙の拡大を起こすとされている。最大呼気時では,腹筋群が脊柱を屈曲させ肋間隙を狭小させる。これらのことから,脊柱の運動と呼吸運動とは関係があると考えられるが,両者の関係は明らかでない。一方,人は加齢に伴い様々な機能が低下するとされる。呼吸機能では,残気量の増加,肺活量の減少,一秒量・一秒率の低下などが見られる。したがって,高齢者の呼吸機能低下が脊柱カーブに何らかの影響を及ぼすことが予測される。しかし、高齢者の呼吸と脊柱カーブの関係も明らかでない。
    本研究の目的は最大呼気・最大吸気時の脊柱カーブの変位を若年者と高齢者で比較し呼吸運動と脊柱カーブの関係を明らかにすることである。
    【方法】
    地方都市在住の健康な高齢者67名(男性21名,女性46名),平均年齢72.6±4.8歳(男性72.1±4.5歳,女性72.8±4.9歳),健康な大学生38名(男性19名,女性19名),平均年齢 20.3±1.1歳(男性20.9±0.8歳,女性19.6±0.9歳)を対象とした。
    被験者は,薄着をさせ,背もたれのない高さ42cmの椅子に骨盤が座面に対し垂直になるように座らせた。そして,安静時・最大吸気時・最大呼気時の脊柱を体表面上より脊柱の各椎体間の角度を測定できるスパイナルマウス(インデックス社製)を用い測定を行った。最大吸気・最大呼気は口頭で指示を行い,最大に動いたところでしばらく息を止めさせ脊柱カーブを測定した。
    解析は,スパイナルマウスにより計測された脊柱カーブの数値のうち,胸椎後彎角(第1胸椎から第12胸椎までの各椎体間角度の総和角度)と腰椎前彎角(第12胸椎から第1仙椎までの各椎体間角度の総和角度)の2つの数値を用いて行った。そして,胸椎後彎角及び腰椎前彎角の最大吸気時から最大呼気時までの変位量,安静時から最大吸気時までの変位量,安静時から最大呼気時までの変位量をそれぞれ求め,Mann-Whitney U検定で高齢者と若年者を比較した。
    【説明と同意】
    各被験者には本実験を行う前に本研究の趣旨を文章ならび口頭で十分に説明した上で,研究参加の同意を得た。
    【結果】
    胸椎後彎角の最大吸気時から最大呼気時までの変位量の50パーセンタル値は,若年者7.0°,高齢者11.0°で高齢者が有意に大きかった(p<0.05)。安静時から最大吸気時までの変位量の50パーセンタイル値は,若年者-4.5°,高齢者-4.0°で有意差はなかった。安静時から最大呼気時までの変位量の50パーセンタイル値は,若年者3.0°,高齢者6.0°で高齢者が有意に大きかった(p<0.01)。
    腰椎前彎角の最大吸気時から最大呼気時までの変位量の50パーセンタイル値は若年者6.0°,高齢者8.0°。安静時から最大吸気時までの変位量の50パーセンタイル値は若年者-3.0°,高齢者-4.0°。安静時から最大呼気時までの変位量の50パーセンタイル値は若年者2.0°,高齢者4.0°で腰椎前彎角のすべての変位量に有意差はなかった。
    【考察】
    結果から高齢者では脊柱を過剰に動かし,若年者では脊柱をほとんど動かさなかった。これは,高齢者は呼吸筋力低下の代償として脊柱を過剰動かしていると考えられ,若年者では体幹筋が安定しているのでほとんど動かさない事がわかった。胸椎後彎角の安静時から最大吸気時までの変位量は,若年者と高齢者で有意差はなかった。一般的に,脊柱の伸展は胸郭を拡大させるとされている。しかし,高齢者は加齢変化により胸腰部の伸展可動域が減少するため,脊柱の伸展による代償が行えなかったと考えられる。安静時から最大呼気時までの変位量は,若年者より高齢者で有意に大きかった。これは一般的に,高齢者では最大吸気筋力及び最大呼気筋力の低下が見られるため,代償として脊柱を屈曲することで,内臓を横隔膜に押し上げ呼気を補強しているのではないかと考える。
    腰椎前彎角のすべての変位量に若年者と高齢者で有意差はなかった。これは,高齢者の多くは骨盤が後傾位にあることが多く,腰部で動こうとしても骨盤の動きが制限されているので有意差がなかったと考えられる。
    【理学療法学研究としての意義】
    今回,明らかになった健常高齢者の呼吸運動時の脊柱カーブの特徴は,高齢者の呼吸機能低下に対する治療プログラムを考慮する際の一旦となると考える。
    抄録全体を表示
  • 福士 宏紀, 高階 欣晴, 関 公輔
    専門分野: 基礎理学療法2
    OI1-007
    公開日: 2011/05/26
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】安静直立位から刺激に反応して素早くつま先立ちを行わせると、主動作筋である腓腹筋(以下GC)の放電開始に先行して、前脛骨筋(以下TA)の見こし放電が出現する。この見こし放電は先行随伴性姿勢調節(Anticipatory Postural Adjustments:以下APAs)と呼ばれている。
    つま先立ち動作におけるAPAsの先行研究では、動作開始時の重心の前方変位が、GCの放電前に認められるTAの見こし放電の時間を短縮させることが分かっている。このことは、重心の移動距離が短く、姿勢調整の必要量も直立位に比べて少ないため、見こし放電の時間が短縮したと考えられている。
    ところで、姿勢制御には身体重心の位置だけではなく、身体体節の相対的位置関係(以下身体アライメント)も大きく関与すると考えられ、APAsについても身体アライメントとの関連性が予測される。しかし身体アライメントを変化させた時に、APAsがどのように調整されるかについては明らかにされていない。
    本研究の目的は、開始姿勢の重心位置を変化させず、身体アライメントのみを変化させた安静立位からのつま先立ち課題におけるTAとGCの筋電図のから、APAsの特徴を明らかにすることである。
    【方法】健常男性10名(平均年齢26.6±3.7歳)を対象とした。計測課題は、音刺激に反応してできるだけ素早く行なうつま先立ちとした。計測する姿勢は、1)直立立位(以下US)、2)股関節を屈曲し骨盤を後方に引いた立位(以下HFS)の2姿勢とした。重心位置を制御するため、足底の圧中心位置をXSENSOR(XSENSOR社製)にてリアルタイムで表示、各姿勢間で圧中心位置が一定になるように調整させた。身体体節の位置は、右上前腸骨棘及び右足関節第5中足骨頭に反射マーカーを貼付し、三次元動作解析装置(VICON MOTION SYSTEMS社製VICON612)を用いて測定した。また床反力作用点(以下COP)の位置は床反力計(Bertec社製)を用いて計測した。筋電図の測定はmyosysytem1200(Noraxon社製)を用いた。電極貼付位置は下野の方法に従い、音刺激に素早く反応した時の右GC内側頭と右TAの筋電図を記録した。それぞれの筋の反応時間(以下RT)を計測し、TAの見越し放電時間は各々のRTの差から算出した。計測はそれぞれ5回ずつ施行し、5回の平均値を個人データとした。統計処理は対応のあるT検定を用い、有意水準は5%未満とした。
    【説明と同意】研究に先立ち、研究の目的や方法、研究への参加により生じる利益や不利益、研究成果などを学会などで公表することなどについて被検者に対し十分に説明し書面にて同意を得た。
    【結果】第5中足骨頭に対する上前腸骨棘のXおよびY座標位置はUSでそれぞれ-48.9±22.3mm、58.7±21.6mm、HFSでそれぞれ-50.9±27.5mm、10.2±37.7mmで、Y座標位置において差が有意であった。COPのXおよびY座標位置はCSでそれぞれ-184.4±15.3mm、41.5±18.1mm、HFSでそれぞれ-188.0±20.9mm、44.8±20.2mmで有意な差は認められなかった。GCのRTはUSで0.50±0.07sec、HFSは0.44±0.09sec で差が有意であった。TAのRTはUSで0.25±0.06sec、HFSは0.21±0.05secで有意な差は認められなかった。TAの見こし放電時間はUSで0.24±0.06sec、HFSは0.19±0.06secで差が有意であった。
    【考察】今回計測した筋電図は、反応刺激の呈示から主動筋の放電開始(GCのRT)までを細分して捉える事ができる。すなわち、反応刺激呈示からTAの見こし放電開始まで(見こし放電潜時)と、TAの見こし放電開始から主動作筋の放電開始(見こし放電時間)である。見こし放電潜時は、刺激を知覚して、適切な姿勢条件を選択、あるいは決断に要する時間(認知要素)と捉えることができ、見こし放電時間は、トリガーされた姿勢信号が発射されている時間(姿勢要素)と捉えることができる(山下,1992)。
    開始姿勢の違いによってGCのRTに差が認められるとすれば、見こし放電潜時(認知要素)と、TAの見こし放電時間(姿勢要素)のどちらか、あるいは、その両者によって差が生じたと解釈できる。今回の結果では、GCのRT に有意な差が認められたが、TAのRT、すなわち見こし放電潜時に有意な差は認められず、見こし放電時間には有意な差が認められた。このことから、開始姿勢の相違が、認知要素ではなく、姿勢要素に影響を与えたと推測でき、身体アライメントがAPAsの調整に影響を及ぼすことが示唆された。
    【理学療法研究としての意義】随意運動において、姿勢の制御が随伴しており、先行する姿勢制御がない限り運動は実行できない。したがって、運動を成立させるためには、姿勢調節との協調が非常に重要である。したがって、APAsの特徴を明らかにすることは、運動と姿勢の相互協調の再構築を図るための介入手法を検討する上で重要な過程と考える。
    抄録全体を表示
  • 水澤 一樹, 江原 義弘, 田中 悠也, 古川 勝弥
    専門分野: 基礎理学療法2
    OI1-008
    公開日: 2011/05/26
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】重心(COG)の真下に足圧中心(COP)が位置するとき立位姿勢は安定する.COGが移動した際には筋活動によってCOPをCOGの真下へ移動しようとする.これがバランス制御である.すなわちCOGに関係する何らかの情報が中枢神経系に入力され,それが処理されて筋活動が出力される.この筋活動がCOPの変化として反映されている.立位姿勢制御において,入力系と出力系の間には神経生理学的な時間差が存在するはずである.しかしこれまで神経生理学的に考えて妥当な時間差を考慮し,どのような入力系によって,どのような出力系が調節されることにより立位姿勢制御が行われているかは明らかにされていなかった.そこで本研究の目的は,神経生理学的に考えて妥当な時間差を考慮し,立位姿勢の制御において何をフィードバック(入力)して,何をコントロール(出力)しているかを明らかにすることである.

    【方法】対象はバランスや歩行に関する既往歴がない健常男性11名とした.赤外線カメラ9台を含む3次元動作解析装置(VICON MX,Oxford Metrics Ltd.)と床反力計(OR6-6-2000,Advanced Mechanical Technology Inc.)2台を使用し,サンプリング周波数100Hzにて立位姿勢保持中の運動学的および運動力学的データを抽出した.統計解析にはCOPとCOG・COG速度・COG加速度・頭部位置・頭部速度・頭部加速度の相互相関関数を求め,各変数がCOPにどの程度先行しているか,相関係数がピーク値を示したTime-Shiftを求めた.さらにCOPの単位時間当たりの増加分(COP速度)とCOG・COG速度・COG加速度・頭部位置・頭部速度・頭部加速度・COPの相互相関関数を求め,各変数がCOP速度にどの程度先行しているか,相関係数がピーク値を示したTime-Shiftを求めた.解析は開眼・閉眼ごとに行い,相互相関関数は対象者ごとに求めた.なお相互相関関数の計算には,Microsoft Office Excel 2007(Microsoft Corp.)による自作プログラムを使用した.

    【説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言に則り,新潟医療福祉大学倫理審査委員会の承認を得て実施された(承認番号:17042-081203).実験に先立ち,対象者には本研究について十分に説明を行い,書面にて同意を得た.

    【結果】上位中枢を介して運動を制御する場合,刺激(入力)に対して0.2~0.4sの応答(出力)の遅れがあるとされる(猪飼,1961;塚原,1972).COPと各変数間,そしてCOP速度と各変数間における相互相関関数の結果から,0.2~0.4s程度のTime-Shiftをもつ組み合わせを探索した結果,開眼・閉眼においてもCOP速度とCOG加速度(開眼0.33±0.05s;閉眼0.30±0.14s),COP速度と頭部加速度(開眼0.40±0.09s;閉眼0.33±0.08s)の組み合わせが該当した.

    【考察】本研究結果より,静的立位姿勢制御の出力系はこれまで考えられてきたCOPではなくCOP速度であった.つまりCOP位置ではなくCOP速度を調節することでヒトは静的立位姿勢を制御していることが明らかとなった.なお静的立位姿勢の制御における入力系としては,頭部加速度を知覚する前庭系の存在が考えられた.これまで外乱負荷応答において前庭系は,視覚系や体性感覚系などのフィードバック機構よりも影響力は小さいとされてきた.しかし神経生理学的に考えて妥当な時間差を考慮した本研究結果より,外乱の小さい静的立位姿勢においてCOG加速度や頭部加速度といった加速度情報がより有効に利用されていることが明らかとなった.ヒューマノイドロボットを用いた姿勢調節の研究(玄,2009)では,三半規管に相当するジャイロセンサーからのフィードバックを用いて立位姿勢が制御されることが示されており,加速度情報のフィードバック系として三半規管といった前庭系が重要である点は本研究結果からも裏付けられた.なお本研究では健常者を対象としたため,前庭系に異常を有する者を対象とし,本研究結果と比較検討することで,立位姿勢の制御方式をさらに明確にできる可能性がある.

    【理学療法学研究としての意義】理学療法ではバランスの客観的指標として,重心動揺計から得られるCOPを参考にすることが多い.しかし静的立位姿勢制御の出力系はCOP速度であったため,COPよりもCOP速度が静的立位姿勢の評価指標として有用である可能性が考えられる.また静的立位姿勢制御における入力系としては,前庭系がより有効に利用されていることが考えられた.そのため理学療法における治療選択という観点から,バランス障害を有する者に対しては前庭系に対するアプローチが重要であるかもしれない.
    抄録全体を表示
  • 平井 達也, 千鳥 司浩
    専門分野: 基礎理学療法2
    OI1-009
    公開日: 2011/05/26
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
    学習を効果的に進めるために,現在の自分の状態を自身でモニターする機能(セルフモニタリング)は必要不可欠なものである.臨床において,パフォーマンスが向上しない症例の中には,自己の学習状況を把握できていない(セルフモニタリングに問題がある)者が存在する. 本研究の目的は,運動学習におけるセルフモニタリングが加齢の影響により低下するかを明らかにすることである.
    【方法】
    対象は,視覚や上肢に問題のない健常若年成人14名(若年群:平均22.8±2.9歳),健常高齢者16名(高齢群:平均71.9±5.9歳)であった.高齢群のMini Mental State Examinationの得点は全て25点以上であった.運動学習課題は,座位にて20cm前方に設置したスタートボタンからその20cm前方に7個×7個で配列されたキーの中央にある標的キーを押すポインティング課題とした.標的キーを押すことができればヒット,標的キー以外のキーを押した場合はエラーとした.フィードバック板(FB板)を参加者の目の前に設置し,全てのキーを視覚確認できないようにした.FB板にはキーの位置に対応した位置にLED(ヒットは緑,エラーは黄と赤)を設置し,視覚的FBとして,キー押し1秒後,1秒間LEDを点灯させた.対象者には課題を通じてできるだけヒットを多くするよう求め,20試行を1ブロックとし,合計10ブロック(200試行)行なった.全試行および各ブロックのヒット率を算出した.セルフモニタリングの測定は,1)事前段階:学習課題の説明後,学習容易性判断(EOL)を「1:とても難しい~5:とても簡単」の5段階で答えるよう求め,2)遂行段階:各ブロックの前に次のブロック(20試行)のヒット率の予測(EOP)を0~100%の10%段階で答えるよう求め(計10回),さらに,3)事後段階:全試行終了後,「どのくらいヒットしたと思うか」という全試行のヒット率の判断(JAT)を%で答えるよう求めた.ヒット率の群間比較をt検定にて行い,EOLの群間比較をMann-Whitney U検定にて行なった.また,予測や判断の正確性を見るために,EOP誤差として各ブロックのEOPからヒット率を減じた値を算出し,年齢×ブロックの二元配置分散分析を行い,JAT誤差として全試行のヒット率を減じた値を算出し群間比較(t検定)を行なった.いずれも有意水準を5%未満とした.
    【説明と同意】
    本研究の主旨と倫理的配慮について説明し署名にて同意を得た.
    【結果】
    全試行における平均ヒット率は,若年群(平均53.4±10.8%)の方が高齢群(平均40.8±17.3%)より有意に高かった.EOLは両群ともに中央値2(やや難しい)であり有意差はなかった.EOP誤差の分散分析の結果,ブロック7(若年群:平均0.4±25.3%,高齢群:平均-21.6±25.7%),ブロック8(若年群:平均-4.6±21.2%,高齢群:平均-23.8±22.0%)では,高齢群の誤差が有意に大きかった. JAT誤差でも若年群(平均-0.5±12.1%)より高齢群(平均-12.3±17.3%)の誤差が有意に大きかった.
    【考察】
    本研究の結果,事前の学習容易性判断(EOL)では両群に違いがなかったにも関わらず,遂行中の予測(EOP),事後の判断(JAT)は両群間に差が見られた.高齢群のEOP,JATは,実際の成績と大きく乖離することが明らかとなり,運動学習におけるセルフモニタリング能力は加齢により低下することが示唆された.NelsonとNarens(1994)は学習活動のプロセスは事前段階→遂行段階→事後段階(→事前段階)と循環し各段階で自己によるモニタリングとコントロールの調整を受け,学習結果に影響を及ぼすとしている.本研究の結果は,高齢者の遂行段階や事後段階におけるモニタリングが適切に行われなかったか,予測が不適切であった結果を反映していると推察された.また,事後段階の判断の低下は,課題遂行中に与えられたFB結果を保持する機能(ワーキングメモリ)の問題であることも考えられた.運動学習中に行なわれるセルフモニタリングは,エラー感受性や身体への注意と関連し,学習の自己調整に影響すると考えられ,今後さらに詳細に検討する必要がある.
    【理学療法学研究としての意義】
    本研究の結果は,高齢者の学習能力の低下がセルフモニタリング能力と関連している可能性を明らかにし,臨床において高齢患者に適切な学習課題を提供するための一助となり得る.
    抄録全体を表示
  • 上原 信太郎, 内藤 栄一
    専門分野: 基礎理学療法2
    OI1-010
    公開日: 2011/05/26
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
    運動は繰り返し行うことで次第に安定化し、それ以降は顕著な向上が見られなくなる。これは運動機能再建を目指すリハビリテーション臨床場面でも多々目にする現象である。では、この段階から脱し、更なる向上を導くにはどのような手段が有効なのだろうか。近年、末梢神経に対する感覚刺激は大脳皮質運動領野の神経活動を修飾し、その結果、運動パフォーマンスを向上させる効果があることが示されている。ただし、通常その介入時間は数十分&#12316;数時間を要しており、臨床的観点からは必ずしも有意義な手段とは言い難い。一方で、筋を運動閾値下の強度で直接刺激した先行研究からは、1分程度の刺激でも十分に運動領野の神経活動を亢進できることが示されており、この直後に運動を行うことで、その運動への恩恵が期待できる。そこで本研究では、まず筋への短時間の感覚刺激が運動領野の神経活動を亢進するかを検証し、さらに刺激介入が安定化した運動に及ぼす効果について行動学的評価を行った。
    【方法】
    実験1:母指球筋に対する90秒の電気的感覚刺激(パルス幅: 250μs、周波数: 100Hz、強度: 運動閾値直下)が、皮質脊髄路興奮性に及ぼす影響を検証した。健常成人6名、計12手を対象とした。対側一次運動野に磁気刺激コイルを当て、単発刺激による運動誘発電位(MEP)を短母指外転筋(APB)から記録した。磁気刺激強度は安静時運動閾値の130%とした。筋刺激介入前の平均MEP振幅を基準として、刺激後の振幅変化率を求めた。対照条件は、10秒筋刺激、90秒の茎状突起部刺激、刺激なしの3条件とした。実験2:90秒の筋刺激直後に運動課題を行い、刺激介入が安定化した運動に及ぼす効果を検証した。十分な事前練習によって運動が安定した健常成人12名、計24手を対象とした。運動課題には2つの球を掌でできるだけ多く回す巧緻運動課題を用いた。1試行15秒間とし、120秒の試行間隔を取りながら計14試行繰り返し行った。前半の1‐7試行は特別な介入をせず、後半8‐14試行のみ直前に母指球筋に対する90秒間の感覚刺激を施した。母指に取り付けた加速度計のデータから運動周波数と運動変位量を算出し、行動学的変化を評価した。実験3:実験2より、筋刺激の繰り返し介入によるパフォーマンス向上の残存効果が認められたため、より長期的(2週間)介入による日々の学習促進効果を検証した。事前練習により運動が安定した健常成人13名、計26手を対象とした。実験2同様の課題を用い、120秒の試行間隔を取りながら1日に14試行繰り返し課題練習を行った。ただし、1‐5日目は全ての試行で特別な介入をせず、6‐10日目の6‐14試行のみで、直前に90秒母指球筋刺激を行った。
    【説明と同意】
    全ての参加者から実験参加の同意を得られており、独立行政法人情報通信研究機構の倫理委員会が本実験を承認した。実験はヘルシンキ宣言(1975)を遵守して行われた。
    【結果】
    実験1:90秒筋刺激条件のみで、直後のMEP振幅が有意に増加し(p<0.01)、他の条件と比較しても、有意な皮質脊髄路興奮性の増大が認められた(p<0.005)。実験2:入念な事前練習により運動周波数が安定化していた1‐7試行に対して、90秒筋刺激介入を行った8‐14試行では、有意に運動周波数が増加した(p<0.01)。また、この変化に関連して1周期あたりの指変位量が減少することがわかり(p<0.01)、介入後には効率的な運動制御が可能になることが明らかとなった。更にこの効率的制御様式は8‐14試行中維持され、その後介入を辞めても残存した。実験3:1‐5日目に刺激介入なしで練習を継続しても、パフォーマンスの向上(運動周波数の増加)は見られなかった。ところが、運動直前の筋刺激を組み合わせた課題練習を施した6‐10日目の6‐14試行では運動周波数の有意な増加が生じた(p<0.001)。さらに、その効果の一部は翌日まで残存し、刺激介入を行わない翌日の1‐5試行の運動が日々段階的に向上した(p<0.001)。
    【考察】
    末梢筋刺激は、数十秒程度でも、皮質脊髄路の興奮性を増加させうる。このような神経系での変化を運動直前に惹起することによって、その後の運動に恩恵をもたらせうることが示唆された。この効果は、事前練習によりある程度安定化している運動の効率化を促進でき、刺激と運動とを組み合わせて反復練習することで、向上したパフォーマンスを維持しながら、更なる運動学習を促進できる可能性が示唆された。
    【理学療法学研究としての意義】
    本研究結果は、安定化した運動を効果的に向上へと導くための介入手法を考える上で有意義な知見であると言える。
    抄録全体を表示
  • 河石 優, 安田 夏盛, 福本 貴彦, 森岡 周
    専門分野: 基礎理学療法2
    OI1-011
    公開日: 2011/05/26
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】ヒトの歩行は常に変化する環境下で行われており、中枢神経系は安定した歩行を維持できるようこれらの環境の変化に適応した運動を制御している。これまで、歩行中の環境の変化に対する運動制御に関する研究は、「床面が滑る」、「床面が沈む」、「押される」などといった環境下で数多く検討されてきた(Marleen H et al.2009; Tamika L et al.2006; Tang et al.1996)。これらの先行研究では、環境が変化した直後の姿勢制御反応を主な調査対象としている。しかし、環境の変化に対する歩行の適応過程を検討する為には、環境が変化する時点の前後での運動制御を、時系列に追って検討する必要がある。
    本研究では、床面の素材が途中で変化する特殊な歩行路上を歩行中の下肢の筋活動、関節運動を測定し、環境の変化に対する歩行の適応過程を検討した。

    【方法】対象は健常成人10名(平均年齢24.2±1.4)とした。歩行路は、床面の素材が途中で木製からスポンジ製に変化するものとし、全体に布を被せ、その変化が視覚的に確認できないようにした。測定は被験者が一定の歩幅で歩ける様に事前に練習した後行い、歩行路上を歩行中の左下肢の1~7歩行周期(cycle1~7)について行った。また、測定時、cycle1~3は木製、cycle4~7はスポンジ製の歩行路上を歩行する様、被験者ごとに素材が変化する位置を設定した。試行は連続して3回行った。筋活動を表面筋電計により記録し(EMG)、導出筋は左前脛骨筋(TA)、腓腹筋(GS)、大腿直筋(RF)、大腿二頭筋(BF)とした。また、左股、膝、足関節の関節運動を電器角度計により記録した。さらに、左踵部にコンタクトスイッチを貼り、その記録から踵接地の瞬間を同定し、踵接地時から次の踵接地までを1歩行周期とした。
    記録したEMGより各cycleごとに踵接地から200msまでの積分値(iEMG)を算出した。関節運動については、各関節間の協調パターンを検討する為に、xyグラフのx座標に一方の関節の値、y座標にもう一方の関節の値を入れ、各cycleごとにグラフ上に曲線として表現し、さらにその曲線によって描かれた図形の外周距離を算出した。
    統計処理はそれぞれ算出した値を1試行目と3試行目について、各cycleごとに対応のあるt検定を用いて比較した。また、それぞれの算出した値について、cycle4~7における変動係数を計算し、1試行目と3試行目で対応のあるt検定を用いて比較した。(p<0.05)

    【説明と同意】全ての被験者には、本研究の主旨を説明し研究の参加に対する同意を得た。

    【結果】iEMGについては、TA、RF、BFにおいてcycle4で3試行目が有意に小さかった。また、GSにおいてはcycle4、5で3試行目が有意に小さかった。関節間協調パターンを表す図形の外周距離については、足-膝関節、膝-股関節の協調パターンにおいてcycle3で3試行目が有意に大きく、cycle4で3試行目が有意に小さかった。変動係数については、iEMGではTA、図形の外周距離では膝-股関節、股-足関節の協調パターンにおいて、3試行目が有意に小さかった。

    【考察】1試行目と3試行目の違いは、素材の変化を過去に経験し、また予測できたか否かである。
    iEMGの結果について、1試行目では急な素材の変化に対し筋活動を上げることで歩行を維持したのに対し、3試行目では先の変化を予測することで変化後も最小限で最適な筋活動によって歩行を維持したことを表している。
    関節間協調パターンを表す図形について、1試行目ではcycle1~3に比べcycle4で急激に大きく拡大し、その後徐々に一定の大きさに収束していくのに対し、3試行目ではcycle3の時点ですでに図形の拡大が始まっており、cycle4以降一定の図形の大きさとなった。図形の外周距離の比較結果もこれを表すものとなった。
    算出したデータにおけるcycle4~7の変動係数は、素材の変化後、運動制御のパターンがどの程度乱れたかを表しており、3試行目で有意に小さかったことから、素材の変化後もより安定した歩行を維持していたと考えられる。
    以上のことから、ヒトの歩行が環境の変化に直面した時、過去の経験の記憶を利用し、環境の変化前から予測的に運動を制御することで、環境の変化後もより円滑にその環境に適した新たな運動パターンに移行し、安定した歩行を維持していることが示唆された。

    【理学療法学研究としての意義】本研究の結果から、歩行障害に対するリハビリテーションにおいて、変化する環境に適応できるより自由な歩行能力の回復には、記憶、予測などの高次機能を考慮する必要があると考えられる。
    抄録全体を表示
  • 冷水 誠, 貴島 みのり, 東野 早希子, 廣川 朋美, 前岡 浩, 松尾 篤, 森岡 周
    専門分野: 基礎理学療法2
    OI1-012
    公開日: 2011/05/26
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
    運動学習にはフィードバック情報が有用であり,特にバランス学習には視覚的フィードバックが効果的であると報告されている。臨床においても,鏡によるフィードバック付加訓練が実施されることは多い。しかしながら,鏡による視覚的フィードバックは同時フィードバックであり,与え方によっては依存を助長することが指摘されている。一方,スポーツ分野を中心に,ビデオ映像を用いた視覚的かつ最終フィードバックの付加による運動学習効果が多数報告されている。しかしながら,リハビリテーション分野において,ビデオ映像によるフィードバックがバランス学習に対して効果的であるかは不明である。そこで本研究の目的は,バランス学習課題において,健常成人を対象に鏡によるフィードバックとビデオ映像によるフィードバックの付加効果の違いを明らかにすることである。

    【方法】
    対象は健常大学生42名(男性21名,女性21名,平均年齢21.6±1.5歳)とし,14名ずつ無作為にコントロール群,鏡フィードバック群(鏡群),ビデオフィードバック群(ビデオ群)の3群に割り当てた。学習課題は左右方向のみに不安定とした不安定板(DIJOCボード 酒井医療)上での立位バランス保持とした。各群ともに試行肢位は両肩幅での開脚立位とし,できるだけボードの両端が床と接しないよう長く保持するよう求めた。練習手順はpre testを実施し,その後1分間の課題試行と休憩2分を1セットとし合計5セット試行した。その後,post testを実施し,さらに学習保持効果をみるために24時間後にretention testを実施した。コントロール群では,試行中および試行後のフィードバックがなく,課題試行と休憩を繰り返した。鏡群では,試行中自身のパフォーマンスを鏡によるフィードバックを与えた。ビデオ群では各試行中に自身のパフォーマンスをビデオ撮影し,休憩時に自身のビデオ映像によるフィードバックを与えた。なお,各群ともに試行中は足元を見ないよう指示した。
    評価項目は課題試行中の足圧中心総軌跡長と,DIJOCボード上にて連続で立位保持が可能であった最長保持時間とした。総軌跡長は圧力分布測定システム(ニッタ社製)により測定した。最長保持時間は,DIJOCボードの両端に圧センサー(NORAXON社)を設置し,床に接地することによる圧信号をPCに取り込みディジョックボードの両端が床と接していない時間を測定した。統計学的検定は総軌跡長および最長保持時間それぞれについて,pre testとpost testおよびretention testに対して,学習時期および群による効果を二元配置分散分析にて比較した。多重比較検定にはBonferroni法を用いた。

    【説明と同意】
    実験参加に際し,対象者には文章および口頭にて十分な説明を実施し同意を得たものを対象とした。

    【結果】
    総軌跡長および最長保持時間ともに学習時期による主効果(p<0.01,p<0.01)が認められたものの,群による主効果(p=0.41,p=0.23)および交互作用(p=0.81,p=0.15)は認められなかった。多重比較の結果,総軌跡長では3群ともにpre testと比較してpost testにて有意な短縮が認められ(p<0.01),post testと比較してretention testにて有意な増大が認められた(p<0.01)。最長保持時間ではコントロール群およびビデオ群においてpre testと比較してpost testにて有意な増大が認められ(p<0.01,p<0.05),さらにビデオ群のみpre testと比較してretention testにおいても有意な増大が認められた(p<0.01)。鏡群に関しては有意差が認められなかった。

    【考察】
    本研究の結果から,3群ともに総軌跡長が有意に短縮したことからバランス課題における学習効果が得られたと考えられる。しかしながら,最長保持時間においては,コントロール群にて学習効果が認められ,さらにビデオ群においては学習効果だけでなく学習保持効果が認められた。ビデオ群では試行中に体性感覚情報,試行後にビデオフィードバックによる視覚情報の入力から,体性感覚および視覚情報との比較照合による誤差学習を促進させたことが考えられる。さらに,休憩中にビデオ映像を観察したことによって,次試行への運動イメージが形成されたとも考えられる。これに対し,鏡群では試行中の視覚情報に依存したことによって有効な学習に繋がらなかったと考えられる。

    【理学療法学研究としての意義】
    バランス学習においてビデオ映像によるフィードバック付加が効果的であることが示唆された。ビデオ映像を用いた方法では特別な機器を必要とせず,様々な臨床場面にて利用可能であり,今後臨床研究による効果を検証することで,バランス障害を有する患者に対して有効な治療手段となる可能性が考えられる。
    抄録全体を表示
  • 畠 昌史, 竹井 仁, 妹尾 淳史, 宇佐 英幸, 小川 大輔, 松村 将司, 市川 和奈, 見供 翔, 渡邉 修
    専門分野: 基礎理学療法3
    OI2-001
    公開日: 2011/05/26
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
    健常女性を対象に、MRI (Magnetic Resonance Imaging)を用いて、腹臥位からの体幹伸展位における下部胸椎・腰椎椎間関節、腰仙関節、仙腸関節の可動域を明らかにすることを目的とした。
    【方法】
    対象は健常女性20名(平均年齢20.6歳)で、身長と体重の平均値(標準偏差)は157.3(4.2)cm、50.1(4.5)kgだった。測定条件は、1)腹臥位・2)腹臥位からの軽度体幹伸展位(握りこぶしを重ねてその上にあごを乗せた肢位:以下、軽度伸展位)・3)伸展腹臥位(puppy position:以下、PP)の3肢位とした。MRI装置(PHILIPS社製Achieva 3.0T)を用い各肢位のT2強調矢状断像を撮像した。得られた画像から次の項目について、画像解析ソフトImage J 1.42を用いて計測した。1)各椎間角度:第11胸椎~第1仙椎の各上位椎骨に対する相対的傾斜角(以下、Th10/Th11~L5/S1)、2)腰仙角:第1仙椎上面と水平面とのなす角(以下、L角)、3)左右骨盤傾斜角:後上腸骨棘と恥骨結合を結んだ線と水平面とのなす角(以下、左右PI角)。さらに軽度伸展位・PP条件の各項目について、伸展方向を正とした腹臥位からの角度変化量を算出した。椎間角度変化量について、分節と肢位を2要因とした二元配置分散分析を実施した後、分節間の差を比較するため各肢位内で多重比較法(Tukey HSD)を実施した。また骨盤・仙腸関節の動きについて、L角と左右PI角の角度変化量の差をみるため、部位と肢位を2要因とした二元配置分散分析を実施した。全ての検定で有意水準は5%とした。統計ソフトにはPASW statistics18を使用した。
    【説明と同意】
    各対象者に研究内容について十分説明を行い、書面にて研究参加の同意を得た。なお本研究は、首都大学東京荒川キャンパス研究安全倫理審査委員会の承認(承認番号09049)を受けて実施した。
    【結果】
    軽度伸展位における各角度変化量[°]の平均値±標準偏差は、L5/S1:-0.1±2.9、L4/5:-0.9±2.2、L3/4:1.9±2.5、L2/3:1.7±2.3、L1/2:1.6±2.0、Th12/L1:1.3±1.5、Th11/12:2.2±1.5、Th10/11:0.8±2.4、左PI角:-0.05±2.2、右PI角:-0.07±2.1、L角:0.4±3.6だった。PPではL5/S1:0.5±4.4、L4/5:2.4±3.7、L3/4:3.0±3.5、L2/3:3.5±2.6、L1/2:4.5±2.2、Th12/L1:2.6±2.4、Th11/12:2.7±2.0、Th10/11:1.0±2.9、左PI角:-0.1±2.3、右PI角:-0.1±2.9、L角:-0.4±4.1だった。分節間の比較では、軽度伸展位においてL3/4・L2/3・L1/2・Th12/L1・Th11/12がL4/5に比べて有意に伸展した。PPではL1/2がL5/S1・Th10/11よりも有意に伸展した。また軽度伸展位・PPともにL角と左右PI角の間に有意差はなく、仙腸関節の動きは認めなかった。
    【考察】
    軽度伸展位ではL4/5が体幹伸展運動に寄与する割合は小さいが、PPではL4/5は上位分節と同様に,伸展したととらえることができる。またどちらの条件も、腰仙関節の角度変化量は非常に小さい傾向にあり、仙腸関節に関しては動きが認められなかったことから、腰仙関節・仙腸関節に対する力学的ストレスは僅かであることが示唆された。従って、腹臥位からの体幹伸展において、軽度伸展位では主にTh11/12からL3/4までが先行して伸展し、PPまで体幹伸展程度が増加するとL4/5にも伸展方向の動きが伝播してくるという運動学的特性が確認できた。立位からの体幹伸展運動を分析している先行研究では、腰椎伸展に加えて腰仙関節・仙腸関節を含めた骨盤帯、ならびに股関節が関与することが報告されている。しかし今回は腹臥位からの体幹伸展位の解析であり、骨盤帯の腹側への空間的位置変化が制限されたため、骨盤帯自体の変化ならびに下部腰椎への影響は小さく、主に頭側から尾側に向かって伸展運動が波及したと推測される。臨床においては、仙腸関節・腰仙関節の動きを抑制し、上位腰椎椎間関節の動きを選択的に獲得させるための方法として応用できる可能性がある。
    【理学療法学研究としての意義】
    腹臥位からの体幹伸展位について、椎間関節の可動域や仙腸関節の可動性に関する報告は少ない。本研究は、目的とする脊椎分節を考慮して運動療法や治療肢位を選択したり、ADL指導をしたりするための基礎的資料になるという意義があると考える。
    抄録全体を表示
  • 布施 陽子, 福井 勉, 矢崎 高明
    専門分野: 基礎理学療法3
    OI2-002
    公開日: 2011/05/26
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】我々は従来の研究を参考に、第43回日本理学療法学術大会にて、超音波診断装置による腹横筋厚の測定方法を検討し、十分な信頼性を得た。また第44,45回日本理学療法学術大会において、ストレッチポール使用による腹横筋エクササイズが有効であることを示した。しかし、ストレッチポールを使用したエクササイズは、ある程度のバランス機能を必要とし、自主的にトレーニングとして行うまでに時間を要する事が多い。そこで今回、特別な道具を用いない日常的に行っている声を出す、という観点から発声が腹横筋エクササイズとして有効か否かを調べた。今回、発声と腹横筋はどのような関連を持つか、またどのような発声がより腹横筋機能に作用するのか検討したので報告する。
    【方法】対象は健常成人男性11名、女性5名の計16名(32.0±9.96歳)、計測機器は超音波診断装置(日立メディコEUB-8500)、デジタル騒音計(日本スリービー・サイエンティフィック株式会社U11801)を用い、操作に慣れた1名を検者とした。計測肢位は、立位(両上肢はそれぞれ反対側の肩に手をのせ、両股関節が内外転0度となる状態)とし、被験者の口元からデジタル騒音計が30cm (音声言語における病理学的評価で用いられている距離) 離れた場所に位置するよう設定した。被験者には、a,i,u,e,oの5つの母音をそれぞれの口の形状を強調しつつ、5秒間発声するよう指示した。また発声の音量は、デジタル騒音計の数値が75~80dBとなるように十分な練習を行った上で計測した。安静呼気終末と各母音発声3秒後の6条件を腹部超音波画像にて記録した。計測部位は、上前腸骨棘と上後腸骨棘間の上前腸骨棘側1/3点を通る床と平行な直線上で、肋骨下縁と腸骨稜間の中点とした。第43回日本理学療法学術大会で報告した方法を採用し、独自に作製したプローブ固定器を使用して、毎回同じ位置で腹筋層筋膜が最も明瞭で平行線となるまでプローブを押しあてた際の画像を記録した。記録した超音波静止画像上の腹横筋厚は、筋膜の境界線を基準に0.1mm単位で左右それぞれについて計測した。統計処理はSPSS ver18を使用し、それぞれ安静呼気終末,a,i,u,e,o発声時による腹横筋厚の違いについて、一元配置分散分析および多重比較法(Bonferroniの方法)により有意水準1%で検討した。
    【説明と同意】本実験にあたり、東京北社会保険病院生命倫理委員会の承諾を得て行った。また、被験者には、腹横筋評価とエクササイズをより詳細に確立する事を目的とすること、実験方法については上記と同様の説明をし、同意書による承諾を得た上で行った。
    【結果】1. 安静呼気終末,a,i,u,e,o発声時による腹横筋厚に違いを認めた(p<0.01)。 2.u発声時の腹横筋厚は、安静呼気終末,a,i,e発声時の腹横筋厚より大きかった(p<0.01)。 3.o発声時の腹横筋厚は、安静呼気終末,a,i,e発声時の腹横筋厚より大きかった(p<0.01)。 4.u発声時の腹横筋厚と、o発声時の腹横筋厚の違いは、認められなかった(p>0.05)。
    【考察】母音(a,i,u,e,o)は、顎を適切な位置に挙上させ、舌のボリュームと位置の変化によって、口蓋と舌の間の共鳴腔の容積を変える事により作られた音色であり、唇の丸みの程度によって、円唇母音(u,o),非円唇母音(a,i,e)に分けられている。円唇母音(u,o)は、口輪筋の活動を認め、その唇の形状により非円唇母音よりも口腔内圧が高まると考えられる。また円唇母音(u,o)は舌の形を考慮した場合、さらに奥舌狭母音(u)と奥舌半広母音(o)に分けられる。結果2,3では、uとoを発声した際に、より腹横筋厚が大きくなることが示された。結果1,2,3により、発声は口腔内圧,腹腔内圧の調整が必要となることに加え、円唇母音であるu,oを選択的に発声することで、腹横筋エクササイズとしてより有効である可能性が示唆された。また結果4により舌の形状よりも唇の形状が、腹横筋機能により重要な要素であると考えられた。
    【理学療法学研究としての意義】本実験により、発声による腹腔内圧上昇が、腹横筋収縮を得られるという結果に加え、口輪筋を使用する円唇母音の使用が腹横筋を効率的にエクササイズできる可能性を示唆した。これは、ダイナミックな関節運動を伴わず行えるエクササイズとして、ベッドサイドでの理学療法の適応を広げたと考えられる。また、特別な道具を使用せず、自宅で手軽に行えるという観点からも自主トレーニングとして有効であると考えている。
    抄録全体を表示
  • 赤澤 直紀, 北裏 真己, 松井 有史, 大川 直美, 廣田 茂美
    専門分野: 基礎理学療法3
    OI2-003
    公開日: 2011/05/26
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
    臨床場面では,ハムストリングス短縮により膝関節伸展制限を有した症例に遭遇することを経験する.先行研究では,膝関節伸展制限の改善が生活機能向上に寄与することを報告(Steffen,1995)しているが,従来のストレッチングや関節可動域運動を中心としたアプローチでは痛みや防御的筋収縮を伴うことが多く,治療が難渋する場合も少なくない.そこで我々は,膝関節伸展制限を有する症例に対してストレッチングや関節可動域運動を行う前処置として,制限因子であるハムストリングスではなく拮抗筋である大腿四頭筋が位置する皮膚表面に対し軽擦刺激を与えている.軽擦刺激により,痛みや防御的筋収縮を誘発することなくハムストリングスの伸張性が改善することを経験している.しかし,大腿前面部への軽擦刺激がハムストリングス伸張性に与える影響について検討した研究は,我々が調査した範疇では見当たらない.本研究の目的は,健常者を対象とし, Finger Floor Distance(以下:FFD)を用い,大腿前面部への軽擦刺激がハムストリングス伸張性に与える影響について検討することである.
    【方法】
    健常者85名(男性56名,女性29名,年齢:31.4±12.2歳)を大腿前面部への軽擦群52名,対照群33名に群分けした.軽擦群に対しては被験者の両大腿部前面に軽擦刺激を40秒実施し,介入前後のFFDをそれぞれ1回測定した.対照群については,軽擦介入は行わず40秒間の安静臥床前後のFFDをそれぞれ1回測定した.軽擦群に対する介入肢位は,背臥位となった被験者に対して施行者は正座位となり,施行者の大腿上に股関節内外旋中間位とした被験者の一側下肢を位置させた.軽擦方法は大腿長に応じて膝蓋骨上縁から近位25cm~30cmの範囲とし,軽擦方向は膝蓋骨上縁から大転子(末梢から中枢)に向かう方向とした.軽擦スピードは,1秒間に2ストロークするスピードとし,軽擦圧は大腿上で抵抗なく軽擦手を滑らすことの出来る圧とした.また,軽擦には片手第1指~第5指の中手骨頭~指腹部を用い,他手で介入側下肢の脛骨近位部を固定した.軽擦時間は片側大腿部軽擦20秒とし,軽擦順序として右大腿部軽擦の後,時間を空けず左大腿部軽擦を行った.なお,軽擦介入は再現性を確保するため1名の男性理学療法士が実施した.FFD測定は0cmに達しない場合をマイナス(-)値とし,0.1cm単位で測定した.統計解析は両群のFFDについて介入前後,群別を要因とした2元配置分散分析を行った.なお,本研究における統計学的有意水準は5%未満とした.
    【説明と同意】
    参加者には本研究の目的,方法,リスクなどを口頭および文書で説明し,署名にて同意を得た.
    【結果】
    介入前後の主効果は有意であった(軽擦群介入前FFD:-4.1±10.2cm,介入後FFD:-0.2±10.0cm,対照群介入前FFD:0.2±9.8cm,介入後FFD:2.1±8.9cm,p<0.001).群別の主効果は有意ではなかった(p=0.13).また,FFD変化量は対照群(1.9±2.6cm)と比較して軽擦群(3.9±1.8cm)が高値を示した.
    【考察】
    両群ともに,FFDは介入後に有意な増加を認めた.対照群のFFDの増加は,反復測定の影響を受けたと考えられる.しかし,軽擦群FFD変化量が対照群より高値を示したことから,大腿前面部への軽擦刺激はハムストリングス伸張性改善に影響を与えた可能性が考えられる.大腿前面部への軽擦刺激がハムストリングス伸張性に影響を与えた機序について,大腿四頭筋の上面皮膚を,1秒間に2ストロークするといった比較的速い軽擦刺激が,皮膚受容器(速順応性受容器)を刺激し,同側性伸筋反射(伸筋である大腿四頭筋の興奮)が起こった結果,屈筋であるハムストリングスが抑制され伸張性の改善が得られたのではないかと推察する.
    【理学療法学研究としての意義】
    大腿前面部への軽擦刺激は,非常に簡便であり,理学療法士だけでなく他職種や家族も実践可能なため,臨床導入が容易である.また,軽擦刺激による効果は短時間で現れるため,ハムストリングスのみならず他筋に対しても臨床応用が期待できる.
    抄録全体を表示
  • 山下 智徳, 河村 顕治, 藤井 彰人, 川口 直樹, 山田 圭介, 松村 卓典, 北井 真太郎, 斎藤 賢治, 濱浪 一則, 角南 義文
    専門分野: 基礎理学療法3
    OI2-004
    公開日: 2011/05/26
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
    OKCとCKC出力時における大腿直筋の筋厚および筋硬度の変化を超音波診断装置と筋硬度計を使用して計測することにより筋電図では捉えられない大腿直筋の形態および緊張状態の変化を明らかにする.
    【方法】
    健常成人男性16名(年齢26.5±3.2歳,身長173.6±4.4cm,体重64.3±6.2kg).筋力測定器(オージー技研ISOFORCE GT-330)を使用し,測定肢位は先行研究より安定した足部出力が得られた肢位である体幹垂直位,股関節屈曲90°,内外転0°,内外旋0°膝関節屈曲60°,足関節背屈10°とした.被験者にモニターで直接足部出力を確認させながら最大足部出力(maximum pressing force;以下MPF)まで10%ずつ出力を高めるよう指示し,各出力時の筋厚と筋硬度を測定した.筋厚測定には超音波診断装置(MIZOUE PROJECT JAPAN DEBUGSCOPE4)を使用し,下前腸骨棘から膝蓋骨上縁への遠位1/3にて各足部出力において計測し,筋の走行に垂直に超音波プローブをあて,大腿骨が最もよく観察されるように超音波プローブの角度を微調整して計測した.その時の画像をパーソナルコンピューターに記録し,筋膜で覆われた大腿直筋の筋厚をフリーソフトImage Jを用いて計測した.筋硬度は,筋硬度計(HENLEY JAPAN CORPORATION Muscle Meter PEK-1)を用いて,各足部出力において3回計測し平均値を求めた.得られた足部出力はMPFで正規化を行い,筋厚,筋硬度ともに大腿直筋が最も活動するOKCでのMPF時の値にて正規化を行った.OKCとCKCでの筋厚と筋硬度を10%MPFからMPFまで10%ごとに一元配置分散分析を用いて比較した.いずれも危険率5%未満(P<0.05)を有意な差とした.
    【説明と同意】
    本研究は,吉備国際大学「人を対象とする研究」倫理規定,『ヘルシンキ宣言』あるいは『臨床研究に関する倫理指針』に従う.吉備国際大学倫理審査委員会に申請し,審査を経て承認を得た.(吉備国際大学倫理審査委員会 受理番号:09-9)対象者に対し,臨床研究説明書と同意書にて研究の意義,目的,不利益および危険性,口頭による同意の撤回が可能であるということなどについて,口頭および書類で十分に説明し,自由意志による参加の同意を,同意書に署名を得て実施した.
    【結果】
    筋厚はOKCでは約20%MPF,CKCでは約40%MPFにてプラトーに達した.全足部出力過程においてOKCとCKCの筋厚に有意な差を認め,筋厚はCKCにてOKCの約90%とOKCよりもCKCの方が薄いという結果を示した.筋硬度は全足部出力においてOKCとCKCの間に有意な差は認められず,OKC,CKCともに足部出力の増加に伴い同程度増加した.
    【考察】
    CKC運動を行った際、大腿直筋は筋電図では低値を示すことから股関節伸展筋群による股関節伸展モーメントと釣り合うように他動的に筋張力を発揮し,股関節屈曲モーメントを生じることで,球関節であり出力の土台ともなる股関節の安定化を図り,股関節周囲筋の筋力を二関節として膝伸展トルクに変換していると推察される.つまり,大腿直筋は腱様につっぱり,出力の方向や安定性を制御しつつパワートランスファーとして筋張力を発揮していると考えられる.さらに,二関節筋の筋収縮は拮抗筋の作用によって抑制されており,筋疲労を生じることなく出力方向を偏移させることなく股関節周囲の筋力を膝関節に伝えることができる仕組みになっていると考えられる.
    【理学療法学研究としての意義】
    CKC運動はスポーツ選手から虚弱高齢者まで幅広い領域において評価,治療として取り入れられている.下肢CKC運動における大腿直筋の機能的役割を明確にすることで,CKC運動における二関節筋の働きに対する考察を深める基盤となり,理学療法学研究としての意義は大きい.
    抄録全体を表示
  • 佐藤 啓壮, 黒木 薫, 五十嵐 守, 齋木 しゅう子
    専門分野: 基礎理学療法3
    OI2-005
    公開日: 2011/05/26
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
    平衡機能を評価する方法には、ファンクショナルリーチやBerg balance scaleなどの機能的検査法が用いられている。また、計測機器を使用した評価では、ロンベルグ肢位を用いた足圧中心(COP)での開眼位、閉眼位での評価が良く用いられており、基本肢位である静的な立位状態を、詳細に分析するスタシオロジーとして多くの先行研究が存在する。静的立位肢位から動的運動への変換の際に生じる様々な問題や傾向を推測する上で有効な手法として検討されている。これらの背景から、近年、COPに関して非線形解析も行われるようになり、従来の解析手法からさらに発展した見解が得られることが期待されている。今回、COP変位を減らすために行われる身体の立位平衡維持戦略の特徴について、時系列で周波数の変化を見ることが出来る連続ウェーブレット変換の手法を用い、若年者と日頃から運動習慣のある活動的な高齢者とで比較することにより、高齢者の平衡機能について検討し、連続ウェーブレット変換を用いた解析手法の可能性について報告する。
    【方法】
    普段定期的に運動を行っている健康な60歳以上の高齢者12名(男性6名、女性6名)、平均年齢67.5±4.8歳、平均身長161.8±6.7cm、平均体重59.1±7.6kg、及び、健康成人9名(男性6名、女性3名)平均年齢20.4±0.9歳、平均身長167.6±0.9cm、平均体重61.9±8.0kgを対象に計測を行った。
    計測方法は静かな室内環境下にて、3次元動作解析用の反射マーカーを貼付け、開眼立位、及び閉眼立位にて足圧計測器(FDM-S:Zebris社製)の上でなるべく動かないように指示し、COPの変位を30秒間計測した。その際、3次元動作解析装置(Cortex:Motion Analysis社製)で3次元マーカーデータをPC内に同期させて取り込んだ。得られたデータから、COP、及び剛体リンクモデルから計算して得られた仮想重心点(COG)、さらに頭頂部のマーカーの変位データを抽出して比較した。信号処理は3次元動作解析のマーカーデータにおいてはButterworthの6Hzにて平滑化を行った。また、足圧計測器の各データは信号処理ソフト(Igor Pro:Wave metrics社製)に取り込み、Morletをマザーウェーブレットとする連続ウェーブレット変換を行い、COG、頭頂部、及びCOPそれぞれのパワースペクトルを求めた。統計処理は対応のある分散分析を用い、TukeyのPost-hoc testを行った。有意水準は5%未満とした。
    【説明と同意】
    全ての対象者に、本研究の目的と内容を説明し書面で同意を得た。なお、本研究は東北福祉大学研究倫理委員会の承認を得て実施した。(承認番号:RS1002151)
    【結果】
    総軌跡長による比較では、COPでは全ての組み合わせで若年者の方が少ない結果となった。しかし、COGでの比較では開眼、閉眼とも全ての組み合わせで差が生じなかった。また、頭頂部の変位に関しては高齢者群で閉眼時が有意に大きくなった。また、連続ウェーブレット変換によるCOPの軌跡は、開眼時、閉眼時共に側方成分であるX軸において、若年者より代表周波数が高くなる傾向が見られた。また、COGにおいては、開眼時のX軸においてのみ高齢者の方が高かった。頭部においては周波数成分に差は見られなかった。
    【考察】
    静的な立位姿勢維持において、高齢者は若年者に比較してCOPの総軌跡長の延長が確認できたが、高齢者と若年者とのCOG変位量に差は見られなかった。また、周波数解析によっても、高齢者のCOP変位側方成分の代表周波数が高くなったことから、高齢者は若年者より微妙な動揺を繰り返し行って積極的にCOPを移動させ、COG変位量を制御していると推測された。さらに、頭部に対する変位も若年者と比較しても活動的な高齢者で差はなく、足部、股関節部を制御することにより、頭部の変位制御が優先的に行われている事が示唆され,静止立位制御の機構は活動的な高齢者では維持されている事が確認された。COPの総軌跡長の長さが必ずしも姿勢制御能力の低下につながるとは言えないという報告もある。本研究では活動的な高齢者と若年者との比較であったが、今後は活動量の低い高齢者との比較も視野に入れて検討を続けていく必要がある。
    【理学療法学研究としての意義】
    高齢者における静止立位姿勢維持機構を安全に解析し、動的な諸問題の予測のための基礎研究として本研究を行った。時間周波数解析の手法を用いれば、切り取った断面だけの解析だけではなく、時系列での変化を知ることが可能となり、臨床に即した解析が可能になる。
    抄録全体を表示
  • 福井 勉, 大竹 祐子
    専門分野: 基礎理学療法3
    OI2-006
    公開日: 2011/05/26
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
    身体重心を制御するため支持基底面内で足関節と股関節で協調した運動が行われていることはよく知られている。またどちらかの関節で運動制限を有しても他の関節で代償運動している症例を良くみかける。しかしながら、この両方の関節の動作時の関係性を明確に示したものはあまり見当たらない。そこで、我々は荷重位での骨盤前後運動の際の股関節と足関節の角度の相関分析を用いて検討したので報告する。
    【方法】
    対象は下肢などに運動制限を有しない男性健常人14名(年齢24.1±3.38歳、身長172.7±6.43cm、体重64.3±7.00cm)とした。被験者に対して立位足幅25cmの幅で、下肢を平行に立った立位から、骨盤を前方-後方および右方-左方に可及的に移動するよう指示した。それぞれの運動の時間は5秒で最大位置に達するように指示し、数回の練習を行った後に計測した。身体運動検出には、VICON-MX(カメラ8台,sampling rate 120Hz)にて計測した。モデルは、Plugin-gait下肢モデルを用い、足関節底背屈、回内外および股関節屈曲伸展、内外転角度を求めた。マーカー位置は左右(上前腸骨棘,大腿外側,膝外側,下腿外側、外果、踵、第2中足骨頭)計16個であった。足関節(距骨下)回内外角度と股関節内外転および足関節底背屈角度と股関節屈伸角度について時系列データの相関分析を行った。
    【説明と同意】
    本研究は文京学院大学倫理委員会承認を受けた。被験者に対して、本研究への参加は被験者の自由意志によるものであることを十分に説明し、研究に参加しないことによる不利益がないことを述べた。データは匿名化の処理を行い、個人情報を含むファイルは文京学院大学大学院スポーツマネジメント研究所内パソコンに保管した。研究成果の公表の場合は、個人が特定されないよう配慮を行った。被験者各人に書面と口頭で「対象とする個人の人権擁護、研究の目的、方法、参加することにより予想される利益と起こるかもしれない不利益について、個人情報の保護について、研究協力に同意をしなくても何ら不利益を受けないこと、研究協力に同意した後でも自由に取りやめることが可能であること、計測中生じうる危険」を説明し、作成した同意書にて本研究協力に関する同意を得た。
    【結果】
    足関節回内外角度と股関節内外転の相関係数はr=0.85~0.99(p<0.001;n>1000)であり、足関節回内時に股関節内転、足関節回外時に股関節外転が生じた。また足関節底背屈角度と股関節屈伸角度の相関係数はr=0.75~0.99(p<0.001;n>1000)であり、足関節背屈時に股関節伸展、足関節底屈時に股関節屈曲が生じた。それぞれの角度変化は一方が大きくなるほど他方も大きくなる関係であった。
    【考察】
    スクワット動作中の足および股関節の関係を検討した我々の先行研究では、足関節背屈角度制限を人為的に起こすと股関節屈曲角度を大きくして代償し、また逆に股関節屈曲角度を制限すると足関節背屈運動で代償した。すなわち相補的関係を示したわけであるが、これはどちらか一方の関節が可動域制限を有していても他方の関節が補うものであった。
    Trendelenburg徴候が慢性化すると、徐々に距骨下関節を回内位にして足部を床に接地するようになってくる症例を見かけることは多い。この徴候は股関節内転位であり骨盤外側移動も起こすため本実験結果と良く一致し、原因は股関節にあると考えられ距骨下関節の動きはその結果であると考えられる。一方、前距腓靭帯損傷後には距骨下回外位を避けるため、骨盤を外側へ移動させて代償する症例もしばしば観察できる。その際、当然であるが骨盤側方移動は代償運動であり、内反捻挫を原因とする結果的な代償である。原因は足関節であり、股関節はその結果である。そのため理学療法として骨盤側方移動に対してアプローチするのではなく、原因である足関節を対象とすることが正当であることも示唆していると考えられる。本研究での骨盤運動の指示は足関節、股関節どちらかを制御因子としたわけではないため両者の相関関係は明確にあると考えられる。これは支持基底面上に身体重心を位置させる作用を足、股関節の双方で相補的に有することを示していると考えられる。
    【理学療法学研究としての意義】
    荷重位における足関節と股関節の前額面、矢状面における相互関係が本研究で明確となったと考えられる。足関節、股関節どちらかの関節の機能に障害が生じた場合、もう一方の関節でどのように代償させたらよいか、あるいは治療アプローチの方法論に展開可能となる。また運動学的な関係性とともに、外乱時の身体応答の検討のみでなく日常の姿勢にもこのような現象は合致した。すなわち理学療法の治療介入の順序を規程することにつながると考えられる。
    抄録全体を表示
  • 久保 憂弥, 大谷 浩樹, 伊藤 直之, 堀 秀昭, 尾島 朋宏
    専門分野: 基礎理学療法4
    OI2-007
    公開日: 2011/05/26
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】経皮酸素分圧測定は,臨床上微小循環の病態把握に対する客観的評価として用いられている.Youngerらは膝前面の皮膚は下行膝動脈,外側上・下膝動脈,前脛骨動脈から穿通する微小動脈網より栄養されると報告しており,阿漕らはTKA術後に膝前面の経皮酸素分圧を測定し,創トラブル予防の指標に使用している.しかし,健常者における膝前面の皮膚血流に関する報告は,我々が渉猟する範囲では認められない.本研究はTKA術後超早期の理学療法を再考するための基礎研究であり,健常者における膝前面の経皮酸素分圧を測定し,膝関節屈曲に伴う変化を捉えることを目的とした.
    【方法】対象は,下肢に整形外科的疾患の無い健常者10名10膝(平均年齢24.2±3.9歳)とした.方法は,ラジオメーター社製経皮酸素分圧装置TCM400を使用し,膝関節伸展位及び膝関節30°,60°,90°,120°屈曲位にて経皮酸素分圧を測定した.TKAの皮切を考慮し,測定部位は膝蓋骨上下縁から上下1cm内外側4cmの部位で,近位外側・内側,遠位外側・内側の4ヶ所とした.比較検討項目は,膝関節屈曲に伴う変化と各測定部位間の差について二元配置分散分析及び多重比較検定(Tukey法)を用いた.危険率5%未満を統計学的有意とした.
    【説明と同意】対象者には本研究の趣旨と方法を十分に説明し同意を得た上で研究を開始した.
    【結果】測定肢位と測定部位に交互作用は認められず,測定肢位間(p<0.05)及び測定部位間に有意差(p<0.05)が認められた.各測定部位における経皮酸素分圧を,膝関節伸展位,30°,60°,90°,120°屈曲位の順に示す.近位外側は75.7→71.7→68.5→59.9→50.3mmHgであった.近位内側は68.2→65.2→60.0→47.0→34.5mmHgであった.遠位外側は60.6→57.7→53.4→45.5→33.0mmHgであった.遠位内側は74.5→74.9→74.7→68.7→51.1mmHgであった.膝関節屈曲に伴う変化として,近位内外側では伸展位と比較して,90°及び120°屈曲位で有意な低下が認められた(p<0.05).また,遠位内外側では伸展位と比較して,120°屈曲位で有意な低下が認められた(p<0.05).測定部位間において,伸展位では近位外側と,伸展位以外では近位外側及び遠位内側と遠位外側間に有意な違いが認められた(p<0.05).また60°以上の屈曲位では遠位内側と近位内側間に有意な違いが認められた(p<0.05).
    【考察】本研究の結果より,近位内外側は膝関節90°,遠位内外側は120°屈曲位で有意な低下が認められた.その理由として,膝関節90°以上の屈曲により内側広筋と外側広筋は長軸及び短軸方向に伸張され,筋内を走行している下行膝動脈及び外側上膝動脈が圧迫されたためと考える.近位内外側は,遠位内外側と比較して軟部組織の容量が大きいことから圧迫による影響を受けやすかったと考える.測定部位間では,伸展位では近位外側と,伸展位以外では近位外側及び遠位内側と遠位外側間に有意な違いが認められた.その理由として,遠位外側は外側下膝動脈から栄養されており,その穿通枝の数は近位外側及び遠位内側を支配している深部動脈の穿通枝と比較して非常に少ないため,遠位外側は有意に低下したと考える.また,膝関節60°以上の屈曲位では遠位内側と近位内側間に有意な違いが認められた.野崎は,近位内側は下行膝動脈関節枝から栄養されており,これは内側広筋に入った後,内側広筋斜走線維を突き抜けて走行すると報告している.つまり,近位内側の皮膚血流は膝関節屈曲に伴い,内側広筋は伸張し圧迫による影響を受けやすいことから,近位内側は有意に低下したと考える.
    【理学療法学研究としての意義】近年TKAの理学療法において,術後超早期に積極的なROM運動が施行され,屈曲可動域の獲得が求められている.本研究の結果より,健常者において膝関節屈曲に伴う経皮酸素分圧の低下が認められたことから,TKA術後超早期に膝関節90度以上屈曲することは,著明な経皮酸素分圧の低下を引き起こすと推察され,創傷治癒遅延の可能性が危惧される.TKA術後超早期は経皮酸素分圧にも留意した理学療法を展開する必要性があると考える.
    抄録全体を表示
  • 高木 綾一, 高崎 恭輔, 鈴木 俊明
    専門分野: 基礎理学療法4
    OI2-008
    公開日: 2011/05/26
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
    脳卒中片麻痺患者では上肢運動や上肢を空間に保持した時に、姿勢保持が困難となる症例を経験する。しかし、上肢挙上保持時における姿勢保持困難について重心動揺の観点より報告した研究はない。そこで今回、脳卒中患者の上肢挙上保持時に重心動揺計を計測し、姿勢制御に関して若干の知見を得たので報告する。
    【方法】
    対象は立位にて両側上肢120°までの上肢挙上保持が可能な当院入院及び通院している脳卒中患者12名(男性8名、女性4名・右片麻痺6例、左片麻痺患者6例・平均年齢66.8歳・発症からの平均日数159日・Brunnstrom stage 上肢・下肢ともにV1名、VI11名)とした。方法は、まず重心バランスシステムJK-310(ユニメック社製、以下、重心計)の上で立位姿勢を保持させ、続いて片側上肢を挙上位で保持させた。挙上保持角度は肩関節屈曲60°、90°、120°とし、30秒間2回の上肢挙上保持を両上肢ともに行った。各角度の上肢挙上保持中に重心計より重心動揺を記録した。また、重心動揺計記録時のサンプリング周波数は30Hzとした。次に得られた重心動揺より左右及び前後方向動揺平均中心変位(以下、COP平均変位)、総軌跡長、単位軌跡長、周波数帯域を算出した。周波数帯域はパワースペクトルを算出し、0.5以上の周波数帯域における全面積に対する百分率(%)をパワースペクトラム面積比として算出した。各角度での各パラメーターの比較には分散分析と多重比較を用いた。なお、有意水準は5%未満とした。
    【説明と同意】
    対象者には本研究の趣旨を説明し、同意を得た。
    【結果】
    各屈曲保持角度間のパワースペクトラム面積比、総軌跡長、単位軌跡長、左右方向COP平均変位には有意差はなかった。しかし、前後方向COP平均変位は麻痺側および非麻痺側上肢挙上において立位と比較して屈曲60°、90°、120°で有意に前方へ変位した(p<0.05)。
    【考察】
    本研究の結果、脳卒中患者の上肢挙上では重心動揺の大きさを示す総軌跡長や重心動揺の速さを示す単位軌跡長及び重心動揺の細かさを示すパワースペクトラム面積比は増大しなかった。しかし、麻痺側及び非麻痺側挙上において前後方向COP平均変位は上肢挙上保持にて前方に変位した。健常者における前後方向COP平均変位は立位と比較して屈曲60°までは後方へ、屈曲90°、120°では前方あるいは後方に変位する(2006 高木)。つまり、健常者では上肢挙上角度増加に伴う体節の前方移動に対応するために屈曲60°までは前後方向COP平均変位を後方へ変位させ重心の前方変位を保障していると考えられる。しかし、脳卒中患者では立位と比較して屈曲初期より重心が前方に変位し、挙上角度増加に伴い重心がさらに前方に変位する傾向が認められた。よって本研究結果より、脳卒中患者では上肢挙上保持時に身体重心を後方へ変位させることが困難であることが示唆された。重心を後方で保持するためには腹筋群や前脛骨筋などの身体全面に位置する筋の活動が必要である。しかし、脳卒中患者ではこれらの筋の活動が低下していることが多く認められる。そのため、本研究においても後方への重心移動が困難であったと推察された。
    非麻痺側挙上においても屈曲60°、90°、120°で立位と比較して前後方向COP中心変位が前方に移動した。脳卒中患者では非麻痺側の上肢挙上保持では麻痺側体幹筋の活動が不十分で姿勢保持が困難となる(2009 中村)。また、一側上肢挙上では挙上した上肢の重みを体側体幹筋の活動により制御する(2008 高木)。したがって、脳卒中患者では先述した身体前面に位置する筋の筋活動不全の要因に加えて、麻痺側体幹筋の作用による非麻痺側上肢の重みの制御が充分にできなかった結果、重心が前方に変位したと考えられた。
    また、上肢挙上角度増加に伴い立位と比較して0.5以上周波数帯域や単位軌跡長は変化しなかった。脳卒中患者では痙性の影響により身体の各関節での弾力的なたわみが減少し、剛体に近い状態で動揺することにより、重心動揺の速度が増加し、また、前後、左右方向への切り返しが多くなるといった周波数の増加が生じる(新井 1994)。しかし、本研究の対象者は機能的なレベルが高いことから筋緊張の異常が重心動揺に与える影響が少なかったため、周波数帯域や単位軌跡長が変化しなかったと考えられた。

    【理学療法学研究としての意義】
    脳卒中患者の上肢挙上では、姿勢制御の不全を認める症例を経験する。本研究は機能レベルが高い脳卒中患者を対象としたものであるが、脳卒中患者に対する上肢挙上保持時の姿勢制御に関しての評価や治療の一助となると考えられる。
    抄録全体を表示
  • 岩月 宏泰, 羽場 俊広, 工藤 真大, 成田 秀美
    専門分野: 基礎理学療法4
    OI2-009
    公開日: 2011/05/26
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】積雪寒冷地に住む高齢者でも、積雪期に手荷物を複数の袋に分けて前腕にぶら下げて持つことが多い。凍結路による足元の滑り易さに加え、荷物で両手の自由が制限されているため、転倒時には頭部外傷、上下肢の骨折などの傷害を負う可能性が高くなる。また、荷物運搬方法と酸素需要量との関係について検討した先行研究では、5分間の歩行時間でもリュックサックに比べ手提げ鞄で運搬した際に酸素需要量が有意に増加するとの報告がある。高齢者の多くは加齢に伴う体力、下肢筋力の低下なども生じることから、買物の際の安全な荷物の運搬による効率の良い歩行を指導することができれば、健康寿命を延伸させることが出来得る。そこで、本研究では健常青年を対象に荷物の重量を一定(体重の10%)として2種類の運搬条件で歩行させた際の呼吸循環応答の経時的変化から、歩行効率の良い荷物の運搬方法を明らかにすることを目的とした。

    【方法】対象は健常青年10名(男性7名、女性3名、平均年齢27.1±9.7歳、体重58.5±6.5kg)であった。方法は各被験者の体重の10%を重量負荷(10%BW)とし、運搬方法は1)リュックサック(容量15&#8467;、600g)内に10%BW入れる(運搬A)、2)1)で使用したリュックサックに5%BW及び手提げ袋に各々2.5%BWに分割(運搬B)した2種類を採用し、トレッドミル上で時速4kmの速度(勾配0°)で安静5分後に20分間の連続歩行をさせた。なお、歩行時には携帯型呼吸代謝測定装置(K4b2、COSMED社製)を装着させて、breath-by-breath法で心拍数、呼吸動態を連続記録し、終了後には主観的運動強度(ボルグスケール)と身体各部の疲労状況を調査した。統計学的検討は各運搬方法で記録された呼吸パラメータ及び心拍数について、二元配置分散分析(Tukey)を行い、交互作用及び主効果を認めた際に下位検定を行った。

    【説明と同意】対象者全員が本学研究倫理委員会の指針に従って筆者から説明を受け、実験の参加に同意した者であった。

    【結果と考察】運搬Aと運搬Bの歩行終了後の主観的運動強度(ボルグ得点)の平均値と標準偏差は、各々10.5±3.9点、11.6±4.3点であり、両運搬方法による差を認めなかった。また、歩行終了後の身体各部の愁訴では、運搬Aで肩・前胸部の疲労感を訴える者が4名(40.0%)いたが、腰背部、下腿に対する愁訴は少なかった。運搬Bでは愁訴が頭頸部、腰背部、下腿など全身に至っており、特に運搬Aではみられなかった上腕屈側部の愁訴が8名(80.0%)おり、運搬方法による有意な差を認めた(p<0.01)。運搬方法別の呼吸循環応答について、VO2/Kgでは運搬方法及び経過時間による主効果を認め、各々(F(1,126)=5.83, p<0.05)、(F(6,126)=6.84, p<0.05)であった。VEでは運搬方法及び経過時間による主効果を認め、各々(F(1,126)=7.29, p<0.05)、(F(6,126)=8.32, p<0.01)であった。なお、運搬BではVO2/Kg及びVEでは歩行開始15分、20分で運搬Aより有意な高値を示した。さらに、VCO2では経過時間による主効果(F(6,126)=6.08, p<0.01)を認めたが、HR、呼吸数、VTでは運搬方法及び経過時間による効果を認めなかった。リュックサックと手提げで10BWを運搬する運搬BではVO2/Kg、VE、VCO2などの呼吸のパラメータで高値を示し、この運搬方法によるトレッドミル歩行時にエネルギー消費が増大したことが認められた。しかし、運搬Aと運搬Bの歩行終了後の主観的運動強度では差を認めなかったことから、このことについては運搬方法の違いで生じた身体各部の愁訴と関係があるものと考えられる。

    【理学療法学研究としての意義】トレッドミル歩行中の呼吸のパラメータから、運搬Bが運搬Aより有意な高値を示したことから、脊柱変形や下肢筋力の低下を伴う高齢者にリュックサックのみを使用した運搬Aを疲労が少なく歩行効率の良い方法として指導するための基礎資料を得ることが出来た。
    抄録全体を表示
  • 渡邊 裕文, 大沼 俊博, 藤本 将志, 高崎 恭輔, 谷埜 予士次, 鈴木 俊明
    専門分野: 基礎理学療法4
    OI2-010
    公開日: 2011/05/26
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】我々は今までに座位での様々な方向への体重移動における体幹筋群の働きについて研究を進めてきた。そこでは外腹斜筋単独部位、内外腹斜筋重層部位、内腹斜筋単独部位に表面電極を貼付し検討してきたが、電極部位で働きの違いがあり、同じ腹斜筋として捉えることの難しさから、より詳細な腹斜筋の働きを明確にする必要性を感じた。昨年より、体幹前面部から側面部へ複数の電極を配置し、座位での体重移動における腹斜筋群の働きについて再考し始めた。今回、座位での後外側方への体重移動における腹斜筋群の筋電図積分値を、上記のように複数の電極を用いて再度検討したので報告する。

    【方法】対象は健常男性7名とした。被験者に足底を床に接地した座位で両肩関節外転90度位を保持させ、テレメトリー筋電計MQ-8(キッセイコムテック社)にて、腹斜筋群の筋電図を測定した。測定した腹斜筋群はNgの報告から、一側の外腹斜筋単独部位、内外腹斜筋重層部位、内腹斜筋単独部位に電極を貼付した。また腹斜筋群は前記した内外腹斜筋重層部位以外に、計12電極用いて、内腹斜筋単独部位の直上より肋骨下端にかけて6電極(前面内側部)、内外腹斜筋重層部位直下から骨盤にかけて3電極(前面外側部)、さらに大転子直上の腸骨稜の上部から肋骨下端にかけて3電極(側腹部)を配置した。次に今回の測定課題の開始肢位である体幹左右回旋45度位保持と以下の課題を実施させ上記同様に筋電図を測定した。測定課題は開始肢位より後外側方へ5、10、15、20cmとリーチさせ、それぞれの姿勢を保持させた。測定時間は5秒間、測定回数は3回としそれぞれの平均値を求めた。後外側方へのリーチ距離の設定は、自作の移動距離測定器を片側の肩関節外転90度位を保持させた指尖から回旋45度方向に一直線に配置し、測定中は前方の一点を注視させた。筋電図の分析は、座位での肩関節外転90度位保持での筋電図積分値を1とした筋電図積分値相対値(相対値)を求め、筋電図波形による検討と、各電極部位にて開始肢位からの相対値の変化を分散分析とTukeyの多重比較検定により検討した。

    【説明と同意】本実験ではヘルシンキ宣言の助言・基本原則および追加原則を鑑み、予め説明した本実験の概要と侵襲、公表の有無と形式、個人情報の取り扱いについて同意を得た被験者を対象に実施した。

    【結果】移動側腹斜筋群は、後外側方へのリーチ距離を増大しても相対値の変化を認めなかった。反対側腹斜筋群は、後外側方へのリーチ距離の増大に対し、大転子直上の腸骨稜上部からの3電極(側腹部)と外腹斜筋単独部位、内外腹斜筋重層部とその直下の3電極(前面外側部)にて開始肢位と比べ有意に相対値の増加を認めた。

    【考察】先行研究では、座位での後外側方へのリーチ肢位の保持により、移動側腹斜筋群はそれ程変化を認めず、後外側方へのリーチ肢位を保持するため移動側腹斜筋群は伸長していく必要があり、筋電図積分値の増大は必要なかったと報告した。本研究でも移動側体幹に配置した複数の電極からの相対値は、先行研究と同様にどの部位も変化を認めなかった。後外側方へのリーチ肢位における移動側腹斜筋群の働きは、電極部位が違っていても大きな違いはなく、後外側方へのリーチ肢位保持に伴う移動側体幹の伸長に対応するため、移動側腹斜筋群全体で筋活動を高める必要がなかったと考えた。反対側腹斜筋群は先行研究にて、後外側方へのリーチ距離の増大に伴い筋活動の増加を認め、骨盤の側方傾斜と後傾の制動に関与すると報告した。本研究でも反対側腹斜筋群の相対値は増加し、特に側腹部に配置した3電極と外腹斜筋単独部位、内外腹斜筋重層部位とそこからの直下の3電極の相対値が増大した。今回の測定課題である後外側方へのリーチ肢位保持では、反対側体幹が側屈位となるための反対側骨盤の挙上(側方傾斜)と後傾が必要で、この骨盤の制動には、側腹部の腹斜筋群と外腹斜筋単独部位および肋骨下縁周囲の腹斜筋群の関与が考えられ、それぞれの筋線維の活動を反映したものと考えられた。

    【理学療法学研究としての意義】臨床上、特に脳血管障害片麻痺患者の理学療法において、座位での活動性を向上させるため、様々な方向への体重移動を練習するが、後外側方へのリーチ課題における注意点は、本研究結果より以下の点が挙げられる。1)移動側腹斜筋群は、前面および側面、もしくは上部および下部にかかわらず、筋活動を高める必要がない。2)反対側腹斜筋群は、側腹部の腹斜筋群の活動と肋骨下縁周囲の腹斜筋群の活動の向上に着目する必要がある。今後も様々な方向へのリーチ肢位による腹斜筋群の働きを明確にして、臨床における評価・治療の一指標として用いていけるように検討していく。
    抄録全体を表示
  • 岡山 裕美, 大工谷 新一, 鶴池 柾叡
    専門分野: 基礎理学療法4
    OI2-011
    公開日: 2011/05/26
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
    先行研究でダイナミックストレッチング(以下,DS)実施前後の股関節屈筋群の等速性筋力と筋活動の関係について,10回から50回のDS実施後のトルク変化には筋疲労の影響よりも筋力発揮における質的な影響があると報告した.今回の研究では,運動課題であるDS実施時の経時的変化に着目し,運動課題に筋力発揮が困難となる原因があるのかを明らかにすることを目的とした.また,実施後のストレッチング効果についても検討した.
    【方法】
    整形外科学的,神経学的に問題のない健常男性12名の利き足12肢を対象とした.平均年齢は24.0±1.3歳(平均±標準偏差),平均身長172.8±7.0cm,平均体重66.3±13.5kgであった.
    DSは安静立位を開始肢位とし,一側の股関節と膝関節を90度屈曲位まで同時に屈曲させた後に元の肢位に戻すまでの動作とした.なお,DSの回数は50回とし,下肢挙上から開始肢位に戻るまでをメトロノーム(1Hz)にて誘導した.DS時に,大腿直筋(RF),大腿筋膜張筋(TFL),長内転筋(AdL)の表面筋電図をMyosystem1400(Noraxon)により記録した.得られた波形から波形の外観的特徴の観察および1動作の単位時間あたりの筋電図積分値(IEMG)を算出した.なお,1動作は,自作のフットスイッチにより規定した.また,DS実施前後には,膝関節屈曲位での股関節屈曲可動域と股関節内外旋中間位・内旋位・外旋位でのSLR(SLR中間位・内旋位・外旋位)を測定した.
    得られた結果から,DS実施時のIEMGの経時的な変化を比較し,DS実施前後の股関節屈曲可動域とSLRの変化に対しては,対応のあるt検定を用いて有意水準を5%未満として統計学的に検討した.
    【説明と同意】
    被験者には本研究の目的を十分に説明し同意を得た.
    【結果】
    DS実施時のIEMGの比較では,RF・TFL・AdL全てにおいて実施回数の増加とともにIEMGの増加が認められた.また,実施回数30回付近では,IEMGの低下が認められた.
    股関節屈曲可動域をDS実施前後で比較すると,実施前は92.9±11.1度,実施後は99.3±13.2度であり,実施後で有意に高値を示した(p<0.01).同様に,SLR中間位は,実施前56.9±14.6度,実施後59.6±14.0度であり実施後で有意に高値を示した(p<0.05).SLR内旋位は,実施前48.8±13.2度,実施後58.8±16.0度であり実施後で有意に高値を示した(p<0.01).SLR外旋位は,実施前60.8±15.8度,実施後56.9±13.2度であり,実施後で有意に低値を示した(p<0.05).
    【考察】
    本研究では,IEMGはRF・TFL・AdL全てにおいて実施回数の増加にともない増加傾向を示した.また,経時的な変化を詳細にみると実施回数30回付近においてIEMGの低下が認められた.筋電図積分値は筋活動の程度を量的に示すものであり,運動単位の動員数に左右される(Basmajian, 1979).そのため今回の結果からは,運動回数の増加により筋への運動単位の動員が増加し,30回程度で筋疲労の影響が大きくなったため運動単位の動員数が減少した可能性が考えられる.30回以降では,疲労した運動単位の補償のために新しい運動単位が動員したと考えられた.
    一方,関節可動域については,股関節屈曲可動域・SLR中間位と内旋位においては関節可動域の増加を示したが,SLR外旋位に関しては減少を示した.今回のDSでは主動作筋が股関節屈曲筋群であり,拮抗筋が股関節伸展筋群である.そのため,股関節伸展筋群には相反抑制が作用し,股関節伸展筋群が伸張されることで股関節屈曲方向への可動域は拡大すると考えられる.しかし,SLR外旋位においては可動域の減少が認められた.この要因としては,股関節内旋方向へ作用するTFLによる過用により筋が伸張時に筋緊張による抵抗が強くなったことが考えられた.
    DSは10回から15回を目安として行われているとの報告があるが,今回の実験結果から30回までであれば動員される運動単位数が増加していくことが考えられた.しかし,自動運動において30回以上実施すると筋疲労の影響が大きく関与することが示唆された.
    【理学療法学研究としての意義】
    DSの適切な実施回数を決めるにあたっての有用な指標となる.また,今回の実験方法や用いたパラメータを応用していくことは,DSの効果判定を行う際にも有用となる.
    抄録全体を表示
  • 芥川 知彰, 榎 勇人, 若松 志帆, 室伏 祐介, 田中 克宜, 石田 健司, 谷 俊一
    専門分野: 基礎理学療法4
    OI2-012
    公開日: 2011/05/26
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
    筋力増強運動のプログラムを設定するには,筋収縮形態,運動強度,運動頻度などの要素が必要であり,運動強度に関しては「最大筋力の~%」と設定することが一般的である.つまり,正確な最大筋力を測定することで運動効果の向上が期待でき,各筋収縮形態に応じた特性を理解しておくことは重要である.
    一定の筋出力の持続や最大筋力の発揮には,視覚や聴覚などの感覚フィードバックが有効なことが知られており,Peacockら(1981)は,かけ声による聴覚フィードバックと筋トルク曲線による視覚フィードバック(visual feedback;VF)の効果を等尺性膝伸展運動で比較している.しかし,筋収縮形態やVFの与え方の違いで効果を比較した報告は,渉猟し得なかった.
    本研究の目的は,VFの方法と筋収縮形態の違いにおける最大筋力発揮パフォーマンスの変化を確認することである.
    【方法】
    対象は,下肢に整形外科的既往のない健常成人14名(男性7名,女性7名,平均年齢23.5±3.1歳)とした.
    筋力測定は筋力測定機器(川崎重工社製,MYORET RZ-450)を用いた等尺性(膝90°屈曲位で1回)及び等速性(膝屈曲30-80°,60deg/secで1回3セット)膝伸展運動の2種類を,足関節上前面にパッドを当てて計測した.まず,各運動での筋力を2回ずつ測定し,その最大値を各対象者の基準筋力とした.次に,各運動を数値によるVF(数値VF),棒グラフによるVF(グラフVF),及びVFなしの3条件で各2回ずつ順不同に測定した.数値と棒グラフはそれぞれコンピュータのモニタに映し出され,数値VFでは対象者に基準筋力を口頭で伝え,グラフVFでは基準筋力を破線で示し,それらを越えるように指示を与えた.VFなしでは,運動直前に「これまで以上に頑張るように」とだけ指示した.測定毎に1分以上の休憩を挟んで次の測定に進んだ.また,対象者の筋疲労を考慮し,等尺性運動と等速性運動は1日以上間隔を空けて実施した.
    データ処理では,各VF条件下の最大値の基準筋力に対する筋力比を算出し,正規性の検定を行った.その結果に従って,多重比較検定(等尺性運動;Tukey-HSD法,等速性運動;Steel-Dwass法)を用いて筋収縮形態の種類別に3つのVF条件の筋力比を比較した.また,筋収縮形態の違いによるVF効果を比較する目的で,数値VFとグラフVFの筋力比に関して,Wilcoxonの符号付順位検定を用いて等尺性運動と等速性運動の比較を行った.いずれも有意水準は5%未満とした.
    【説明と同意】
    対象者に対して事前に本研究の趣旨と安全性について説明し,同意を得た.
    【結果】
    等尺性運動の各VF条件下における筋力比は,数値VF:103.4±8.2%,グラフVF:103.5±7.5%,VFなし:99.7±6.6%であり,各条件間に有意差は認めなかったが,数値VFとグラフVFはVFなしより筋力比が高い傾向にあった.一方,等速性運動の筋力比は,数値VF:110.3±11.3%,グラフVF:111.4±9.4%,VFなし:108.8±11.9%と,こちらも各条件間に有意差は認めなかった.
    等尺性運動と等速性運動の比較では,グラフVFにおいて等速性運動の筋力比が有意に高かった(p<0.01).
    【考察】
    等尺性運動,等速性運動ともVFによって筋力が発揮されやすい傾向にはあったが,同一運動内でのVFの違いによる効果に有意差は認められなかった.本研究のようにあらかじめ最大収縮での筋力を基準に目標値を設定した先行研究はなく,元々最大収縮した時の筋力を基準としているこの設定が,VFありとなしの間で有意差が出なかった一要因と考えられる.
    等速性運動においては,グラフVFが等尺性運動に比べて有意に効果を発揮し,数値VFも等尺性運動より高い筋力比を示したことから,等速性運動は等尺性運動に比べてVFの効果が高いと考えられる.また,等速性運動の筋力比の平均はVFなしでも100%を超えて高いことから,普段から使い慣れていない筋収縮形態であるが故に基準筋力の測定で最大筋力を十分に発揮できていなかった可能性も考えられる.
    今後はサンプル数を増やし,性差による比較なども加えることで,最大筋力発揮パフォーマンスにおけるフィードバック効果の特性をより詳細に検討していきたい.
    【理学療法学研究としての意義】
    最大筋力発揮パフォーマンスの変化を筋収縮形態やVFの違いから検討した.近年,徒手筋力検査法(MMT)に代わってhand-held dynamometerなどの簡便な機器を用いた客観的な筋力測定が臨床場面で普及しているなかで,本研究のように筋力発揮を最大限に引き出す方法を解明しようとする試みは意義深いと考える.
    抄録全体を表示
  • 加嶋 憲作, 山﨑 裕司
    専門分野: 基礎理学療法5
    OI2-013
    公開日: 2011/05/26
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
    歩行は立脚相と遊脚相の連鎖によって成立する.左右の下肢が交互に支点となるため,安定した片側への重心移動および下肢での体重支持が必要不可欠である.歩行と下肢筋力には密接な関連があり,歩行自立に最低限必要な筋力閾値が存在する.しかし,重心移動および下肢での体重支持が,どの程度の筋力で障害されるかについては明らかになっていない.そこで本研究では,片側下肢での体重支持に必要な等尺性膝伸展筋力について検討した.

    【方法】
    対象は,高齢入院患者129例(男性76例・女性53例)で,年齢は75.9±7.0歳,身長は156.2±7.2cm,体重は50.0±9.6kgである.中枢神経疾患や明らかな荷重関節の整形外科疾患,認知症を有する者は対象から除外した.等尺性膝伸展筋力の測定にはアニマ社製μ-TasF-01を用い,端坐位下腿下垂位において約3秒間の最大努力による膝伸展運動を行わせた.各脚2回の測定のうち大きい値を採用し,左右脚の平均値(kgf)を体重(kg)で除した値を等尺性膝伸展筋力(kgf/kg)とした.下肢荷重率の測定は,市販の体重計2枚に左右の脚をのせた立位で行った.片側下肢に最大限体重を偏位させるように指示し,5秒間安定した姿勢保持が可能であった荷重量(kg)を体重(kg)で除し,その値を下肢荷重率(%)とした.どの程度の下肢筋力低下が一側下肢への体重支持に影響を及ぼすかを検討するために,等尺性膝伸展筋力を0.2kgf/kg未満,0.2~0.3kgf/kg未満,0.3~0.4kgf/kg未満,0.4~0.5kgf/kg未満,0.5~0.6kgf/kg未満,0.6kgf/kg以上に区分した.先行研究では,独歩自立には最低でも約80%の下肢荷重率が必要であり,90%以上あれば全症例で独歩自立が可能と報告されている.そこで,各筋力区分別に80%,90%の下肢荷重率を上回る症例の割合を算出した.統計学的解析にはχ2検定を用い,危険率5%を有意水準とした.

    【説明と同意】
    対象者には,研究の内容と目的を説明し,同意を得た後に測定を実施した.

    【結果】
    等尺性膝伸展筋力区分別にみた下肢荷重率80%以上例の占める割合は,0.2kgf/kg未満では0%(0例/11例),0.2~0.3kgf/kg未満では61.1%(22例/36例),0.3~0.4kgf/kg未満では81.5%(22例/27例),0.4~0.5kgf/kg未満では92.9%(26例/28例),0.5~0.6kgf/kg未満では100%(17例/17例),0.6kgf/kg以上では100%(10例/10例)であった.筋力の上昇に伴って80%以上の下肢荷重率を有する症例の割合は有意に高値を示した(p<0.01).同様に,下肢荷重率90%以上例の占める割合は,0.2kgf/kg未満では0%(0例/11例),0.2~0.3kgf/kg未満では8.3%(3例/36例),0.3~0.4kgf/kg未満では48.1%(13例/27例),0.4~0.5kgf/kg未満では60.7%(17例/28例),0.5~0.6kgf/kg未満では76.5%(13例/17例),0.6kgf/kg以上では80%(8例/10例)であった.筋力の上昇に伴って90%以上の下肢荷重率を有する症例の割合は有意に高値を示した(p<0.01).

    【考察】
    0.2kgf/kg未満では80%以上の下肢荷重率を有する症例はなかった.よって,この筋力水準を下回る場合,実用的な下肢支持性を得ることは困難なものと考えられた.一方,0.4kgf/kgを上回る場合,ほとんどの症例が80%以上の下肢荷重率を有した.また,7割の症例は90%以上の下肢荷重率を有した.したがって,実用的な下肢支持性を得るには0.4kgf/kg以上の筋力が必要なものと考えられた.いくつかの先行研究は,等尺性膝伸展筋力が0.4kgf/kgを下回ると歩行自立例が減少しはじめ,0.2kgf/kgを下回った場合,連続歩行例がなくなることを指摘している.これらのデータは本研究結果と類似しており,筋力低下による歩行能力低下の主要因として,片側下肢での体重支持の困難性が存在するものと推測された.0.6kgf/kg以上の筋力を要しても,90%以上の下肢荷重が困難な症例が少数見られた.この原因としては,下肢支持性というよりも平衡機能の関与が強いものと推察された.今回は0.6kgf/kg以上の症例数が少ないため,今後,症例数を増やした上で他の平衡機能評価を併用して再検討する必要がある.

    【理学療法学研究としての意義】
    体重支持に必要な下肢筋力水準が明らかとなったことで,歩行能力低下の原因について,より客観性をもった専門的な分析が可能となる.
    抄録全体を表示
  • 塩見 耕平, 田中 直樹, 飯塚 陽, 内藤 幾愛, 山口 普己, 金森 毅繁, 斉藤 秀之, 奥野 純子, 柳 久子, 長澤 俊郎, 小関 ...
    専門分野: 基礎理学療法5
    OI2-014
    公開日: 2011/05/26
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】医療現場における動作分析は主観的に行われることが多く,異常の程度を示すことが困難である.動作の定量的測定には,ビデオカメラや3次元動作解析装置を用いる方法がある.しかしこれら方法では解析や機器装着に労力を要すこと,高価であること,可搬性が低いことなどから,日常の臨床で用いられることは少ない.そこで本研究の目的は,表示機能を備えた角速度センサを,即時的,簡便,定量的な測定機器として使用し,臨床場面で歩行動作分析に容易に活用することと,その測定の信頼性を検討することとした.
    【方法】被検者は健康成人男性10名(平均年齢24.9±2.4歳)とした.測定機器は表示機能付き角速度センサ(SS-30001,シリコンセンシングシステムズジャパン社製)1台,デジタルビデオカメラ(HDR-SR11,Sony社製)1台を使用し,それぞれの機器で平地歩行中の大腿および下腿の角度を測定した.角速度センサの検出範囲は角速度±300°/秒,角度±999°,センサ部と表示部が5mのコードで接続した1軸角速度センサを用いた.角速度センサの表示部は角速度もしくは角度の現在値,時計回り(CW)最高値,反時計回り(CCW)最高値を表示可能である.センサ部の取り付けは左下肢とし,位置は大腿測定時が大転子と外側上顆の中間点,下腿測定時が腓骨頭と外果の中間点とした.表示部には角度を表示し,デジタルビデオカメラの撮影範囲のうち被検者と重ならない位置に提示した.デジタルビデオカメラは毎秒30フレームのプログレッシブ画像を記録する設定とし,矢状面での歩行を撮影するため床面から高さ0.9mの位置に歩行の進行方向と垂直となるよう歩行路から4m離れた位置に設置した.身体部位の同定のため左大転子,左外側上顆,左腓骨頭,左外果の計4箇所にマーカーを貼付した.歩行開始直前に直立不動位で角速度センサのキャリブレーションを行った後,被検者に床面のビニールテープの方向へ快適速度で歩くよう指示を与えた.歩行開始から歩行停止までビデオカメラの撮影範囲内となるよう実施した.大腿部測定,下腿部測定の2条件を,1試行ずつ測定し,全試行において左下肢がカメラの手前側になるよう撮影した.デジタルビデオカメラのデータは動画編集ソフトにて1秒30フレームの静止画に変換し,歩行開始前と測定部位角度が最大の静止画を抽出した.次に画像編集ソフトを用いて,マーカーを結んだ線と床面上のビニールテープの角度から,各試行における下肢角度の最高値を求めた.角速度センサの測定は,9名の測定者(経験年数2~6年の療法士8名,理学療法学科学生1名)に動画を見せ,動画上の角速度センサ表示部からCW,CCW角度の最高値を読み取り,紙に記入させた.測定の順はランダムとし,1試行につき3回ずつ測定させた.統計学的解析は級内相関係数(ICC)を用いて角速度センサの測定者内・測定者間信頼性を検討し,Pearsonの積率相関係数を用いて角速度センサの測定値と画像解析測定値の測定値との関係を検討した.有意水準は0.05とした.
    【説明と同意】
    本研究は実験内容に関して十分な説明を行い,同意の得られた者を対象として実施した.
    【結果】
    測定部位別の平均値(静止画測定値,角速度センサ測定値)は,大腿部CWが26.1±4.7°,28.7±6.1°,CCWが8.9±2.8°,8.8±2.1°,下腿部CWが21.0±5.1°,25.2±3.1°,CCWが53.2±4.9°,47.3±6.1°であった.角速度センサ測定値の測定者内信頼性は,最も低値であった測定者のICCが大腿部CW1.00,大腿部CCW0.993,下腿部CW0.998,下腿CCW0.823となった.9名の測定者間におけるICCは大腿部CW1.000,大腿部CCW1.000,下腿CW0.999,下腿CCW0.998となった.静止画測定値と角速度センサ測定値との相関係数は,大腿部CW0.660(p<0.05),大腿部CCW0.822(p<0.01),下腿部CW0.269(有意差なし),下腿部CCW0.812(p<0.01)となった.
    【考察】
    本研究により,表示機能付き角速度センサを用いた下肢角度測定において,測定値読み取りの信頼性が高いことは示唆されたが,ビデオカメラ動画の画像解析による測定値との相関において,下腿部CWでは有意差を認めなかった.その理由として,角速度センサ側ではドリフトの影響,静止画側ではビデオカメラレンズの歪曲収差,画像編集ソフトなどによる測定誤差の影響が考えられた.
    【理学療法学研究としての意義】
    角速度センサは床反力計,3次元動作解析装置等に比べて可搬性が高く,安価な点から,測定方法を確立することで定量的な動作分析の普及が期待される.
    抄録全体を表示
  • 長谷川 正哉, 大田尾 浩, 島谷 康司, 金井 秀作, 小野 武也, 田坂 厚志, 沖 貞明, 大塚 彰
    専門分野: 基礎理学療法5
    OI2-015
    公開日: 2011/05/26
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】足趾は感覚器および運動器としての役割を担い,立位,歩行中など重心移動時の安定性に寄与する事が知られている。脳卒中片麻痺者では痙性によるクロートゥやハンマートゥなどの足趾変形が起こる事が知られており,これらの足趾変形では疼痛や足趾の接地部分の変化,足趾接地圧の増加がみられ歩行能力に影響がおよぶものと考えられる。その一方で,臨床場面において足趾の不接地状態を見かける場面も多く,これらの症例では立位や歩行中における不安定性の増加が確認される場合があり,足趾の不接地状態の評価が重要と考えられる。しかし,これまで脳卒中片麻痺者の足趾接地状態について評価した報告はみられない。そこで本研究では試作したピドスコープを用いて中高年者と脳卒中片麻痺者の足趾接地状態を比較検討する事を目的とした。

    【方法】対象は,研究の趣旨と協力に同意した入院中もしくは通院中の脳卒中片麻痺患者105名および健常高齢者50名とした。計測は試作したピドスコープを用いて行い,静止立位時における足底面の接地状態をデジタルカメラで撮影した。次に足趾の接地状態の評価として,完全接地2点,接地不十分1点,非接触0点とし各趾の評価を行い,その後左右10本の足趾の合計スコアを求めた。また,左右の足趾全てが完全に接地していたものを接地良好群(全ての足趾が2点),1本でも不十分な接地が認められるものを接地不十分群(いずれかの足趾が1点),1本でも非接触が認められるものを不接地群(いずれかの足趾が0点)とし各群における百分率を求めた。統計解析は,各足趾のスコアおよび足趾接地状態の合計スコアについてMann-Whitney検定を用いて比較した。統計解析にはエクセル統計2007を用い,有意水準を5%未満とした。

    【説明と同意】本研究は,調査を行った施設に所属する倫理委員会の承認を事前に得てから研究を実施した。また,対象者には研究の目的や方法を十分に説明し同意を得て研究を開始した。

    【結果】健常高齢者と比較し脳卒中片麻痺患者の足趾スコアは麻痺側,非麻痺側に関わらず低値(p<0.01)を示し,また合計点においても低値を示した(p<0.001)。また健常高齢者では接地良好群26%,接地不十分群48%,不接地群26%であったのに対し,脳卒中片麻痺者では接地良好群6%,接地不十分群60%,不接地群34%となり,脳卒中片麻痺者では足趾の不接地が高率に発生する事が確認された。また不接地群の特徴として,健常高齢者では2趾あるいは5趾単独の不接地が多いのに対し,脳卒中片麻痺者では母趾の不接地や複数の足趾にまたがる不接地が多く確認された。

    【考察】本研究により,脳卒中片麻痺者では足趾の過剰な接地のみでなく,不接地が高率に発生する事が確認された。また足趾の不接地の状態は健常高齢者と異なり,母趾側の不接地や複数の足趾にまたがる不接地がおこる事が確認された。脳卒中片麻痺者では麻痺側骨盤の後方回旋に伴う重心の後方偏移が起こる事が知られており,これらの重心の偏移が足趾接地状態に影響を及ぼすものと考えられた。また本研究では足趾の不接地状態が麻痺側のみでなく,非麻痺側の母趾側においても多く認められた。これは荷重量の不均衡に伴い重心が非麻痺側後方へ偏移した影響と考えられる。先行研究により脳卒中片麻痺者の重心位置の特徴として非麻痺側・後方に変移する事が報告されており,本研究においても類似した傾向を得たものと考える。しかし本研究では実際の重心位置の測定を行っていないため,今後の課題として,脳卒中片麻痺者の足趾接地状態と重心位置の関係について検討していきたいと考えている。

    【理学療法学研究としての意義】脳卒中片麻痺患者では麻痺側,非麻痺側に関わらず足趾接地状態が不十分である可能性が示された。前述したとおり,足趾は感覚器および運動器としての役割を果たしている為,足趾の変形や不接地状態の確認は重要であり,また,装具や履物作成時には足趾の機能や接地状態を考慮し,適切な対応を講ずる必要がある。
    抄録全体を表示
  • 久保田 一誠
    専門分野: 基礎理学療法5
    OI2-016
    公開日: 2011/05/26
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
    高齢者において,歩行は獲得しているにも関わらず,急な方向転換や身の回りのADL動作を行う際,極端に転倒リスクが高まることを臨床上経験する.高齢者の場合,支持基底面内の安定性限界狭小化によって動的バランス能力が低下することに加え,あらゆる環境に適用するための注意機能低下が関与すると言われている.近年,二重課題(dual-task)下でのパフォーマンス能力低下が注目されており,転倒リスク軽減のためには,身体機能面としての動的バランス能力だけでなく,注意機能も伴った複合的な能力の獲得が必要となってくる.しかし,こういった二重課題下での能力を定量的に評価する方法はほとんど確立されていない.
    今回,注意機能評価方法の一つであるTrail Making Test Part A(TMT-A)を紙面上ではなく,パーソナルコンピューター(PC)のディスプレイ上で行えるオリジナルソフトウェアを作成した.さらに,その制御を市販のタッチパネルディスプレイとバランスWiiボードを用いて行えるように改変した.タッチパネルは,PCによるマウス操作が不慣れな高齢者にも使用可能であると考えられる.また,バランスWiiボードは,動的バランス能力に必要な支持基底面内の安定性限界を向上させる効果が期待されている.このシステムにより,注意機能および二重課題バランス能力について,定量的な評価が行えるかどうかを検討した.
    【方法】
    対象は,健常者12名(男性8名,女性4名)とした.対象の年齢は26.6±3.9歳であった.
    [1]注意機能の計測には,I・O DATA社製10.1型タッチパネルディスプレイ(LCD-USB10XB-T)を使用した.また,[2]二重課題バランス能力の計測には,Nintendo社製バランスWiiボードを使用した.測定は,[1]→[2]の順番で行った.[1][2]間では別の課題を行ってもらい,1~25の位置を記憶できないように配慮した.また,合計タイムだけでなく,1~25間のラップタイムも記録した.
    さらに,[1]と紙面上で行う通常のTMT-Aをそれぞれ2回実施し,検者内再現性および測定誤差を求めた.2回目の測定は別の日に行った.統計解析は,フリーウェアR2.8.1を使用した.検者内再現性は,Pearson積率相関係数(r)と級内相関係数(Intraclass Correlation Coefficient:ICC)を求めた.測定誤差は,測定標準誤差(Standard Error of Measurement:SEM)と最小検知変化(Minimal Detectable Change:MDC)を算出した.
    【説明と同意】
    対象者全員に対し,本研究について十分な説明を行い,同意を得た.
    【結果】
    [1][2]いずれの測定においても,検者一人で安全に実施可能であった.また,計測時間は1被検者あたり2~3分程度で実施可能であった.[1]タッチパネルでの計測結果は,13.64±1.93秒であり,ラップタイムの平均は,0.57±0.20秒であった.[2]バランスWiiボードでの計測結果は,47.56±8.44秒であり,ラップタイムの平均は,1.98±0.59秒であった.
    2回目の[1]タッチパネルでの計測結果は,13.25±1.94秒であった.検者内再現性は,r=0.71(p<0.01),ICC(1,2)=0.83であった.測定誤差は,SEM=1.09秒,MDC=3.03秒であった.一方,通常のTMT-Aの計測結果は,1回目20.34±3.34秒であり,2回目17.40±3.15秒であった.検者内再現性は,r<0.50(p>0.05),ICC(1,2)<0.50であった.測定誤差は,SEM=3.67秒,MDC=10.17秒であった.
    【考察】
    [1]の測定結果では,検者内再現性は0.7以上であり,測定誤差は1.09秒と平均値の10%以下であった.このことから,優れた再現性と測定精度を有していると考えられる.一方,[2]の測定結果では,健常者を対象にした場合においてもばらつきがみられた.ラップタイムの標準偏差は,[1][2]いずれも1.00秒以内であり,どの方向に対しても極端な差はみられなかった.今回の結果を基準として,今後患者層に適用し照らし合わせることで,その症例がどの方向への注意が向きにくいか,または,どの方向への重心移動が困難かを詳細に推定可能になると考えられる.
    【理学療法学研究としての意義】
    本研究は,歩行時の急な方向転換や身の回りのADL動作などでの転倒リスクを回避するために必要となる二重課題下での能力について,定量的な評価を実現するための一助になると考えられる.
    抄録全体を表示
  • 北地 雄, 重國 宏次, 佐藤 優史, 清藤 恭貴, 原 辰成, 古川 広明, 原島 宏明, 角田 亘
    専門分野: 基礎理学療法5
    OI2-017
    公開日: 2011/05/26
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
    歩行の安定性を評価するには観察により定性的評価をしたり、歩行周期中の変動を計測したり、パフォーマンスの変動を計測したりすることが多い。歩行の安定性を評価することにより、対象者の歩行が安全か、効率はどうか、応用性はあるか、学習過程のどの段階かなどを推測することができると考えられる。臨床的には、観察による評価やストップウォッチによる計測をすることが多いが、観察による評価は一般的に客観性に乏しいと言われ、ストップウォッチによる安定性の評価には繰り返し動作を行い、その再現性、変動を評価するため対象者への負担が大きい。ここでは、歩行を環境が安定している閉鎖スキルと考え、安定性≒再現性とし、臨床応用をしやすい2回の繰り返し計測による歩行時間の変動係数(CV)と、歩行時間の差から、歩行自立度が判断可能であるかを検討した。
    【方法】
    対象は脳血管疾患により片麻痺を呈した42名(平均年齢62.7±12.1歳、男性33名、女性9名)であり、発症からの期間は100.5±50.2日であった。なお顕著な高次脳機能障害や認知症の疑いのあるものはいなかった。調査項目はTimed up and go test(3m)の至適速度条件(TUGcom)と最大速度条件(TUGmax)をそれぞれ2回ずつ繰り返して計測した。そして1回目と2回目の差(TUGcom差とTUGmax差)と1回目と2回目の変動係数(TUGcomCVとTUGmaxCV)を算出した。なおTUGcom差とTUGmax差は常に正数となるよう減算した。その他、下肢Brunnstrom Recovery Stage(BRS)、麻痺側下肢荷重率(荷重率)、Functional Balance Scale(FBS)、Barthel Index(BI)を調査した。統計学的解析はそれぞれの調査項目間の関係をPearsonとSpearmanの相関係数を算出し、病棟内の移動手段を歩行としているものを自立群、見守りや介助、車いすを利用しているものを非自立群として群別し、それぞれの調査項目についてt検定とMann-WhitneyのU検定を用いて比較した。さらにTUGcom差とTUGcomCVおよびTUGmax差とTUGmaxCVについてWilcoxonの符号付順位検定を用いて比較した。そして、病棟内での歩行自立の可否を従属変数、TUGcom差、TUGcomCV、TUGmax差、TUGmaxCVを独立変数とした尤度比による変数増加法による多重ロジスティック回帰分析を実施した。この結果、歩行自立度と関連の認められた項目について,ROC曲線から歩行自立の可否を判断するカットオフ値を求めた。解析にはPASW17.0を使用し有意水準5%とした。
    【説明と同意】
    対象者には事前に研究の概要を口頭にて説明し、理解を得たうえで同意を得た。
    【結果】
    全対象者のうち歩行自立群は23名、非自立群は19名であった。TUGcom差とTUGmax差ともにBRS、荷重率、FBS、BI、TUGcom、TUGmaxと1%未満で有意な相関がありr=0.538~0.704の間であった。TUGcomCVはBI、FBSと、TUGmaxCVはTUGmaxと相関がありr=0.308~0.467の間であった。自立群と非自立群の比較ではすべての項目間に有意差があり、TUGcom差とTUGcomCVの間、TUGmax差とTUGmaxCVの間にも有意差が認められた。ロジスティック回帰分析の結果、歩行自立の可否にはTUGcom差とTUGmax差が採択され(それぞれp=0.023と0.014)、オッズ比はTUGcom差9.56倍で、TUGmax差56.17倍であった。HosmerとLemeshowの検定の結果はp=0.549であり、判別的中率は95.2%であった。ROC曲線から、TUGcom差は曲線下面積=0.889となりカットオフ値は0.83秒で感度および特異度は82.6%、84.2%となり、TUGmax差は曲線下面積=0.921となりカットオフ値は0.99秒で感度および特異度は95.7%、89.5%となった
    【考察】
    相関行列からTUGの1回目と2回目の差とCVは、差の方が他のパフォーマンステストとの相関係数も高く有意な項目数も多かった。やはり2回の繰り返しでCVを算出する事には無理があると考えられた。しかし2回の繰り返しとはいえ、1回目と2回目の差との相関関係より発揮されるパフォーマンスが安定していないと歩行能力のみならず、麻痺の重症度や麻痺肢への荷重、バランス能力やADL能力も低下、悪化していく事が予測できる。またそれは、ロジスティック回帰分析や歩行自立に関するROC解析の結果からも確認されたと考えられる。カットオフに関してTUGcom差よりもTUGmax差の方が曲線下面積、感度、特異度とも高かった。これは最大歩行速度の方が再現性が高いと言われていることとも関係があると考えられ、また再現性の高いテストにおいてバラツキの多い結果となるということは能力が低い、つまり安全ではなく、効率が悪く、応用性もなく、学習の初期や中期と考える事ができると思われる。
    【理学療法学研究としての意義】
    TUGの2回繰り返し計測は臨床的であり、その2回の差から歩行自立度、つまり少なくとも安全性に関しては予測できる結果となった。
    抄録全体を表示
  • 西山 保弘, 岩松 尚美, 江崎 智哉, 工藤 義弘, 矢守 とも子, 中園 貴志
    専門分野: 基礎理学療法5
    OI2-018
    公開日: 2011/05/26
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
    固定性に劣る可搬型床反力測定装置を用いて瞬時に椅子から立ち上る床反力(floor reaction force以下,FRF)の信頼性を本学会で報告している.30歳代から40歳代の下肢・体幹に障害のない健常成人18名(平均年齢40.2±7.1歳、男性7名、女性11名)で測定し、垂直方向SFzで級内相関係数係数0.963.前後方向SFx 0.819で高い信頼性を検証した.瞬時に立ち上る床反力は,ADL能力と相関が高いTimed up and go test(以下,TUG)の一部に含まれスタートの安定性と敏捷性が結果に関係することが予想される.FRFの垂直方向SFz,前後方向SFxと10m歩行時間,TUGの所要時間等の関連性について検討したので報告する.
    【方法】
    被検者は下肢・体幹に障害のない健常成人22名(平均年齢38.5±10.0歳,男性11名,女性11名)である.床反力測定は可搬型三次元フォースプレート(アニマ社製MG-200 以下,MG-200)を使用した.床面に下腿が垂直で足底がプレートに十分接する椅子を使用し,背もたれにもたれず両手を両膝の上に置いた姿勢を立ち上り開始姿勢とした.立ち上る速さは,ふらつかず瞬時に立ち上る最速とした.床反力データ(単位kgf)の垂直方向の左右加算値SFz,SFzから体重(weight)を引いた値SFz-W,前後方向の左右加算値SFx,立ち上り所要時間(start time,以下,ST)は,最大SFz値の時間から直前の最小SFz値の時間を引いた値を立ち上り所要時間とした. 日を変え2回のFRFを測定し、各FRF のSFz,SFz-W,SFxと1回毎の10m歩行時間,TUG,総膝伸展筋力(左右の和,OG技研社製アイソフォースを用いて固定バンドを使用した)の相関を求めた.被検者プロフィールとして性別,体重,身長,年齢,BMIを測定および聞き取りした.統計処理は,正規性検定(Shapiro-Wilk検定),Spearmanの順位相関係数を統計ソフトSPSS13.0Jを使用して求めた.いずれの検定も有意水準は,5%以下とした.
    【説明と同意】
    被検者には、口頭と文書で研究の目的、方法を説明し同意書に署名を得た。
    【結果】
    1回目と2回目ともにSFz,SFz-W,SFxの各項目と10m歩行時間,TUG,総膝伸展筋力,身長,体重,BMIの間に高い相関を認めた.1回目と2回目ともにSFyは,すべての項目に相関を認めなかった.信頼性係数0.619であったSTは,1回目はSFz-W,BMIに2回目にSFz-W,SFx ,TUG,膝伸展筋力,10m歩行時間に相関を認め,身長,体重,BMIには相関を認めなかった.年齢と各項目には相関はなかった.
    【考察】
    瞬時に立ち上る床反力は,ADL能力と相関が高いTUGの一部に含まれスタートの安定性と敏捷性が結果に反映することが予想される.結果よりFRFのSFz,SFz-W,SFxは,TUGや歩行能力に関する10m歩行時間の項目と高い相関を認めた.MG-200は,高い精度を持つ床反力計であるが,可搬型であるためプレートを踏み込む速度や角度によりデータの誤差が生じることが考えられた.測定結果より信頼性が証明され,瞬時に椅子から立ち上る起立動作は,日常生活能力を反映するパラメーターのひとつとして使用することが可能と判断される.スクワットや立ち上り筋力トレーニングの重要性を再確認させる結果となった.STについては,データの読み取り作業に誤差が生じやすい問題を今後、検討する必要がある.
    【理学療法学研究としての意義】
    可搬型MG-200を用いて瞬時に立ち上る起立動作のSFz,SFz-体重,SFxを測定し歩行能力に関する因子との相関関係を検討した.FRFのSFz,SFz-W,SFxは,歩行能力に関する10m歩行時間,TUGの項目と高い相関を認めた.日常生活能力を反映する評価のパラメーターとして使用することが可能と判断される.
    抄録全体を表示
feedback
Top