理学療法学Supplement
Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: OF1-011
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口述発表(特別・フリーセッション)
脊髄損傷異所性骨化モデルマウスにおける超音波照射の影響
第2報
勝水 健吾河村 守雄
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キーワード: 超音波, 異所性骨化, BMP
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抄録
【目的】異所性骨化は,脊髄損傷や脳血管障害の麻痺部に多く出現し,完成された異所性骨を外科的に摘出するしか方法はなく,また,摘出後も再発する例も多い.このように,確実な治療法が確立されていないのが現状である.この異所性骨化は,疼痛や関節可動域の制限を引き起こし,術後の機能障害やADL自立の妨げとなる要因として重要である.この,異所性骨化の発生を如何に抑制し治療していくか,私たちは,超音波療法の効果について,第25回日本理学療法学術大会において,脊髄損傷異所性骨化モデルマウスを用い,超音波を照射することで,その異所性骨化を抑制できる可能性を示唆した.
本研究では,照射条件を変化させることにより,超音波照射による異所性骨化抑制作用の至適照射量を検索することを目的とした.
【方法】対象はddYマウス(雄,6週齢)25匹を用いた.マウスをジエチルエーテル吸入による麻酔下におき,背部をイソジン消毒し剃毛した後,脊柱に沿い正中切開し,第8胸椎を露出させた.不全麻痺を作成するため,先端が直径約2mmのプラスチック棒を当て,そこに3または5gの金属錘を3または5cmの高さから落下させ損傷を起こさせた(weight drop法).麻痺の程度は改定MFS(hindlimb motor function score:MFS)を用い確認した.脊髄損傷術後,7日目にBMPを移植した.移植は,マウスをジエチルエーテルで吸入麻酔した後,手術台上で腹臥位に固定し,術野を剃毛,消毒し,皮膚と筋膜を切開した後,ハムストリングス内に移植母床を形成し,crude BMPの粉末3mgをNo.5ゼラチンカプセルに入れたもの(BMPカプセル)を移植した.その後,ナイロン糸で筋膜,皮膚をそれぞれ縫合して手術を終了とした.BMPカプセルは,1匹のマウスにつき両側大腿に移植した.超音波照射は,伊藤超短波社製US-700を用い,移植術翌日から照射した.超音波照射用マウス固定台に,ジエチルエーテルで吸入麻酔したマウスを固定,照射部位を剃毛,治療用ジェルを塗布し超音波導子を設置した.導子は皮膚に密着させ,手術翌日より3週間にわたり固定法,毎日1回,10 分間,照射率20%,周波数3MHz,を一定条件とし,照射強度を0.1W/cm2(n=11,0.1W/cm2群), 0.5W/cm2(n=8,0.5W/cm2群),1W/cm2 (n=6,1W/cm2群),の3条件として照射した.なお1肢を超音波照射(US+),他肢を非照射(US-)とした.移植3週後に,マウスを致死量のジエチルエーテル吸入により安楽死させ,両下肢を股関節にて離断,軟X線像により,新生骨の位置を確認しながら摘出した.この組織の灰分重量を測定することで,形成された異所性骨の重量を比較検討した.統計学的処理として,灰分重量は対応のないT検定を,MFSはMann Whitney U testを用い,危険率5%未満を有意とした.
【説明と同意】本研究は,名古屋大学医学部動物実験倫理委員会,愛知医療学院短期大学倫理委員会の承認を得て行った.また,平成20年度科学研究費補助金(若手研究 課題番号20800068)の助成を受け行った.
【結果】形成された異所性骨の灰分重量は(平均値±標準偏差),0.1W/cm2群US+(3.4±1.4mg),US-(6.3±2.5mg)であり,US+のほうが有意に骨形成量は低値であった(p<0.05).一方,0.5W/cm2群US+(2.9±1.1mg),US-(4.9±1.7mg),1W/cm2群US+(7.7±0.4mg),US-(7.1±1.3mg)であり,両群のUS+とUS-には有意な差はなかった.また全ての群においてBMPカプセル移植時のMFSには有意差はなかった.
【考察】本実験では,異所性骨形成における超音波の至適照射量を検索することを目的としており,その結果,低強度である0.1W/cm2が最も骨形成を抑制することが可能であることが示唆された.低出力の超音波照射は,組織内温度が上昇しないにも関わらず様々な生体変化を引き起こすことが知られているが,骨形成促進効果もその一つである.骨折などの治癒過程における骨形成は膜性骨化と呼ばれ,異所性骨化とは異なる過程で骨化が起こるため単純な比較はできないが,本研究により,BMPにおける内軟骨性骨化には低出力である超音波照射が抑制的に働き,さらに,骨形成促進を目的とした照射条件とは,照射強度が若干異なり,それにより超音波の骨形成に対する効果にも影響を及ぼしていると考える.
【理学療法学研究としての意義】本研究は,治療や予防が非常に困難となる異所性骨化に対する新たな見解を示すものである.また,理学療法士が臨床で使用している超音波治療器を用いて,新たな適応を示唆している.さらに,骨形成に対する超音波療法の至適照射量や危険性に対する研究の,一参考となりうる.
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© 2011 日本理学療法士協会
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