理学療法学Supplement
Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: PI1-208
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ポスター発表(一般)
下肢悪性骨腫瘍症例における機能的膝伸展機構の運動学的解析
高木 啓至井上 悟佐藤 睦美西島 吉典
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抄録

【目的】
膝関節周囲原発の悪性骨腫瘍に対する患肢温存手術では、術後膝関節伸展機能は顕著に障害される。しかし臨床においては、膝関節伸展機能障害の程度に関わらず独歩や交互型階段昇降が可能となる症例を多く経験する。河村ら(1995)はこの膝関節伸展機能障害に対する代償機能に関して、荷重位における大殿筋、ハムストリングス、下腿三頭筋による機能的膝伸展機構として報告している。一方で、この悪性骨腫瘍症例における機能的膝伸展機構を客観的に示した報告は見当たらない。そこで機能的膝伸展機構の運動学的解析を目的として、三次元動作解析装置および表面筋電計を用いた計測を行い若干の知見を得たため、考察を加えて報告する。
【方法】
対象は、大腿骨遠位部骨肉腫に対して腫瘍広範切除を施行した1例とした。理学的所見は膝関節可動域が伸展0°、屈曲100°、膝関節伸展筋力がMMT4でextension lagは認めず、日常生活は自立レベルであった。
運動課題は20cm台への昇段動作とし、開始肢位は支持脚を台上に着地した状態で、そこから後脚側足部が前方の台に接地するまでを一施行とした。なお、これを健側・患側下肢にて各5回計測した。測定機器は光学式三次元運動解析装置VICON MX(Vicon Motion Systems社製)を用いた。解析にはソフトウェアVison NEXUSを使用し、支持脚の股、膝、足関節モーメントのピーク値を算出した。また、表面筋電図測定装置マイオビデオEM-136(Noraxson社製)を用いて筋活動を測定した。サンプリング周波数は1,000Hzで、データ解析用ソフトにはマイオリサーチXP(Noraxson社製)を用いた。導出筋は、支持脚側の大殿筋(GM)、大腿直筋(RF)、大腿二頭筋(BF)、腓腹筋(GS)とした。動作施行前に、各導出筋のMMT 3(Fair)の肢位での等尺性収縮による筋放電量を約5秒間計測した。この筋放電量の波形が安定した中央3秒間のピーク値を抽出し、動作時の各筋放電量のピーク値(5回施行平均値)を正規化した(%MMTF)。さらに運動時の筋活動量を比較するために1秒間当たりの筋積分値を算出し、1秒間当たりの%MMTFの筋積分値で正規化して単位時間当たりの筋積分値比(%)を求めて比較した。
【説明と同意】
被検者には本実験の目的および測定方法について口頭にて十分に説明し、同意を得た上で測定を行った。
【結果】
支持脚関節モーメントは、健側では股関節伸展・膝関節伸展・足関節底屈モーメントはそれぞれ、51.6Nm、58.9Nm、58.5Nmであり、患側昇段はそれぞれ、54.7 Nm、40.0 Nm、77,6 Nmであった。
単位時間当たりの筋積分値比(%MMTF)は、健側昇段時はGM78.9%、RF74.0%、BF64.3%、GS18.3%で、患側昇段時はGM77.0%、RF46.9%、BF83.3%、GS21.3%であった。
【考察】
患側で膝関節伸展モーメント、RF筋積分値比ともに低値を示したことから、昇段動作における支持脚伸展運動での大腿四頭筋の寄与率が低いことが示唆された。一方、股関節伸展、足関節底屈モーメントは患側で高値を示し、GM、GSの筋活動は健側よりも高値であった。これらは、河村らが報告している大腿四頭筋筋力低下に対する代償作用である「機能的膝伸展機構」を示しているものと考えられた。加えて、今回の結果ではBFの筋活動が健側を大きく上回ったことから、機能的膝伸展機構を担う筋のなかでも、BFの果たす役割が大きいことが示唆された。
【理学療法学研究としての意義】
悪性骨腫瘍術後症例における代償作用としての機能的膝伸展機構を客観的に示すことができた。そのため理学療法を展開していく上で、根拠に基づいたトレーニングを実施することが可能となった。また代償筋に対するアプローチの重要性を再認識することができ、さらにその中でもハムストリングスがポイントとなる可能性が示されたことは興味深い発見となった。今後は症例数を増やすことでより客観性を高めていくとともに、術後経過における変化にも着目していきたい。

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© 2011 日本理学療法士協会
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