理学療法学Supplement
Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: PI2-194
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ポスター発表(一般)
下腿回旋変位量の測定方法と信頼性の検討
吉岡 慶吉沢 剛天満 晃横田 裕丈
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抄録
【目的】
膝関節疾患に対して、膝関節のアライメントや下腿回旋変位量を把握することは、評価、治療、治療効果判定を行う上で重要である。先の研究での下腿回旋変位量の評価方法は大掛かりな機器を用いて評価する方法が多く、臨床で用いる評価方法としては時間を費やし適切とは言い難い。また、一般的に用いられる徒手による評価方法では移動軸と基本軸の設定が股関節や足関節をまたぐため、誤差を生じ易く、 測定肢位が限定され、正確な大腿骨に対する下腿骨の回旋変位量をそくていすることが困難である。本研究はより正確かつ簡便に下腿回旋変位量を測定するため、大腿骨内側上顆(以下,内側上顆)、大腿骨外側上顆(以下,外側上顆)、脛骨粗面をランドマークとし、内側上顆と外側上顆との距離(以下,ML)に対しての内側上顆と脛骨粗面との距離(以下,MT)と外側上顆と脛骨粗面との距離(以下,LT)の比率を下腿回旋変位量として測定し、その測定方法の信頼性を検討することを目的とした。
【方法】
下肢に疾患を有さない健常成人男性10名(平均年齢27.8±2.6歳)の20膝を対象とし、検者A、Bの2名(当院理学療法士:経験年数5年目,11年目)により測定を行った。測定肢位は、股関節屈曲90度、内外転0度、内外旋0度、膝関節屈曲90度、足関節底背屈0度の端座位とした。測定肢位を一定にするために昇降式の治療ベッドを使用した。測定方法は内側上顆、外側上顆、脛骨粗面をランドマークとし、MLを測定し、次いでMT、LTを安静座位(以下,中間位)、下腿内旋位(以下,内旋位)、下腿外旋位(以下,外旋位)で測定した。測定にはアウトサイドキャリパー(外寸測定工具:シンワ測定株式会社製)で各大きさを取り、定規で距離を読み取った。 中間位、内旋位、外旋位におけるMTをMLで除した値(以下,MT率)、LTをMLで除した値(以下,LT率)を算出した。 中間位と内旋位におけるMT率の差を内旋量とし、中間位と外旋位におけるMT率の差を外旋量として算出した。同様にLT率からも内旋量、外旋量を算出した。また統計手法としてICC(2,1)を用いてMLと中間位、内旋位、外旋位におけるMT、LTの各測定値の検者間信頼性を検討した。
【説明と同意】
被験者には本研究の主旨を口頭にて説明を行い、同意を得た上で測定を実施した。
【結果】
MT率より求めた内旋量、外旋量は検者Aで平均0.03±0.03、平均0.09±0.03、検者Bで平均0.03±0.02、平均0.08±0.03であった。LT率より求めた内旋量、外旋量は検者Aで平均0.03±0.02、平均0.08±0.03、検者Bで平均0.03±0.01、平均0.07±0.02であった。中間位、内旋位、外旋位におけるMT率(平均値±標準偏差,最大値-最小値)は検者Aで0.89±0.09,1.07-0.76、0.86±0.09,1.06-0.75、0.97±0.09,1.17-0.84、検者Bで0.89±0.08,1.06-0.75、0.86±0.08,1.02-0.72、0.97±0.07,1.12-0.86であった。 中間位、内旋位、外旋位におけるLT率(平均値±標準偏差,最大値-最小値)は検者Aで0.83±0.08,1.01-0.68、0.86±0.07,1.03-0.72、0.75±0.08,0.95-0.62、検者Bで0.84±0.07,1.06-0.72、0.86±0.07,1.07-0.76、0.76±0.08,1.00-0.66であった。ML、中間位、内旋位、外旋位でのMT、中間位、内旋位、外旋位でのLTそれぞれのICC(2,1)は0.898、0.712、0.719、0.756、0.858、0.859、0.871であった。
【考察】
内側上顆、外側上顆、脛骨粗面をランドマークとした下腿回旋変位量測定方法の検者間信頼性を検討した結果、ICCは高い結果を得られた。内側上顆を基準とした値と外側上顆を基準とした値から得られたICCの値から外側上顆を基準とした測定値の方が高いICCの結果が得られた。これは内側上顆に比べ外側上顆の触診の方が正確に行なえており、骨形状や軟部組織の厚さの相違が影響していると考える。今後、膝関節角度を変え測定することにより、各角度での下腿回旋変位量の平均値や各疾患との比較を調査して行きたいと考える。
【理学療法学研究としての意義】
徒手での簡便な下腿回旋変位量の測定方法の一つとして、高い信頼性を得られた。この方法はあらゆる肢位での大腿骨に対する下腿骨の位置を把握できるため、荷重位における膝関節のアライメントを把握することができ、評価、治療効果判定の指標にも応用できると考える。
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© 2011 日本理学療法士協会
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