理学療法学Supplement
Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: PI2-206
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ポスター発表(一般)
肢位の違いによる肩インナーマッスルの活動性評価
堀脇 真人中川 仁倉形 友佳八木 哲也宮田 龍一
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キーワード: inner muscle, 肢位, 活動性
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抄録
【目的】
今日,肩関節障害に対する機能回復を目的とした,肩インナーマッスル(以下inner muscle)の筋力増強訓練は日常的に行われている.しかし,治療を継続しても筋力増強効果が不十分な症例をみる.原因として,筋力増強における肩関節肢位の選択が考えられる.よって今回,我々は従来と異なる肢位でのinner muscleの筋活動を評価するため,筋電計を用いて測定した.
【方法】
計測にはフィンランド製MEGA社Biomoniter ME6000(サンプリング周波数1000Hz)を使用した.測定部位は,健常成人男性11人(平均年齢39±15歳,体重74.5±15.3kg)の非利き手側,棘下筋・小円筋とした.表面筋電計を用いて測定を行ったため,棘上筋については,正確な筋電位導出が困難であり,測定部位より除外した.測定にあたり運動開始肢位を,position1(以下p1):肩関節屈曲0°・内外転0°・内旋60°,position2(以下p2):肩関節屈曲90°・内外転0°・内旋90°,position3(以下p3):肩関節屈曲20°・外転20°・内外旋0°とした.運動は,肘関節90°屈曲位・前腕中間位・手関節中間位を保持しつつ,p1:肩関節外旋30°までの肩関節外旋90°,p2:肩関節内外旋0°までの肩関節外旋90°,p3:肩関節屈曲60°・外転60°・外旋45°までの肩関節屈曲40°・外転40°・外旋45°を,各肢位で5回行った.この際,抵抗として輪ゴムを使用した.測定した棘下筋・小円筋の筋電位を,フレーム幅0.02秒で整流化後,運動時積分値を算出した.統計処理は,運動時積分値を体重で除した,1kgあたりの筋電位について,p1・p2・p3で,Friedmanのカイ2乗検定を用いて一要因分散分析し,有意差のあったものに対し,Bonferroniの補正をした,Wilcoxon-T検定を行った.なお,危険率5%未満を有意とした.
【説明と同意】
対象者には,ヘルシンキ宣言の趣旨に沿い,研究の目的,方法,個人情報の保護について口頭で説明し,同意を得た上で測定を実施した.
【結果】
棘下筋・小円筋ともに,p1と比較してp2で活動性が高かったP<0.05).また,棘下筋・小円筋ともに,p3と比較してp2で活動性が高かった(P<0.05).一方,棘下筋・小円筋ともに,p1とp3で有意な差が認められなかった.
【考察】
Burnkhart(1991-1996)は,棘下筋・小円筋・肩甲下筋の活動は長さに依存する特性があると報告している.本研究においても,p2は,p1~3のうち,最も棘下筋・小円筋が伸張される肢位であるため,p1・p3と比較し,p2の棘下筋・小円筋の活動性が高くなった.また,棘下筋・小円筋ともに,p1とp3で有意な差が認められなかった原因としては,p3の運動に再現性が乏しく,測定時の肩関節外旋運動に個人差があったためと考えた.結果として,inner muscleの活動性は,従来行われている筋力増強肢位のp1よりも,p2において,向上が認められた.したがって,inner muscleの筋力増強においては,伸張肢位の考慮が必要であると考えた.
【理学療法学研究としての意義】
従来行われてきた筋力増強肢位は,肩関節障害に対する早期機能回復,及びパフォーマンス向上が必要となる,全てのスポーツにおいて有効ではないことが推察された.今回の結果は,それぞれのスポーツにおいて,目的にかなった筋力増強肢位を決定する場合に,用いることができる.
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© 2011 日本理学療法士協会
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