理学療法学Supplement
Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: PI1-391
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ポスター発表(一般)
地方都市における,民営法人からの小児および重症心身障害児・者への訪問リハビリテーションの提供
平成20年~平成22年のデータから
齋藤 大地五十嵐 大貴松田 絢音日戸 賀津雄
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抄録

【目的】弊社株式会社はこぶねは、筆頭演者である齋藤が平成20年3月14日に法人格を取得した民営の営利法人である。同年5月に訪問看護ステーションはこぶねとして北海道の指定を受け、北海道旭川市及び近隣町での小児・重症心身障害児・者(以下重症者)専門の在宅医療サービス事業を開始して2年が経過した。今回、訪問リハビリテーション(以下リハ)提供の実態について運営上のデータを基に調査・分析を行い、小児・重症者領域の訪問リハの現状を報告することを目的とする。
【方法】平成20年5月から平成22年4月までの期間に一定の訪問頻度(最低月1回)で定期的な訪問リハを利用していたもので、小児領域疾患ではないものを除外した47名を対象とした。方法は訪問看護・リハ記録より1)疾患分類、2)開始年齢、3)開始理由、4)開始時の姿勢運動レベル、5)超重症児スコアによる重症者割合、6)訪問リハ内容、7)継続者と終了者の各利用期間、8)終了理由について後方視的に調査した。
【説明と同意】今回の事業報告に関して、ステーション管理責任者の同意を得た。本研究には利用者等の個人情報を特定できる内容は含まれていない。
【結果】1)後遺症群70%、先天性異常17%、後天性疾患2%、骨・関節疾患2%、発達障害群9%であった。2)1歳から36歳まで、平均13.7歳で、全年齢構成でほぼ均等であった。3)ほぼ全員がリハを希望し、次いで療養生活や介護方法の相談、助言を目的としての利用であった。4)姿勢運動レベルは、臥位レベルが63%と一番多く、次いで歩行が21%であった。5)超重症児は19%、準超重症児は17%であった。6)行っているリハ内容としては、身体状況の把握、関節可動域訓練、変形拘縮へのアプローチ、家族指導、ホームプログラム指導が多かった。7)8)継続者42名、終了者は5名、うち利用休止2名、施設入所2名、死亡が1名であった。
【考察】結果2)の均等な利用者年齢の分布と結果3)のリハ希望での契約という点で、当該地域において幼児から成人障害者までの広い年齢層に渡り、訪問リハのサービスは受け入れて貰えたと考える。介護保険ベースの訪問リハとは異なる点として、小児は年度替わり等でそれぞれのライフステージに移行する。今後の運営を考えると、均等な年齢分布により、年単位での生活状況の変化や地域事情をふまえたアドバイス及びサービスの提供が可能であり、かつそのノウハウを経年的に蓄積していくことで長期継続的な利用に繋がっていくことも期待できる。平成22年4月現在では、人口約35万人の旭川市において小児・重症者の在宅リハを唯一専門とする本事業の利用者数の人口比は約0.01%であり、必要とされる人数はさほど多いとは言えない。しかし必要度という点においては、結果4)5)から重症の利用者の割合は高く、実際の重症者への訪問件数もより多くなっている。医療保険や福祉制度上も重症者の経済的負担を軽減するものがあることは、運営上の大きな背景要素である。また理学療法の専門性として、結果6)から在宅リハは身体管理と、指導的な機能を殆どの家庭で要求され提供していた。結果4)~6)からは、今後もより重症者に重きを置き、身体管理及び指導機能を高めていくと言う指針が得られた。結果7)及び結果8)から、高齢となった親が行う成人重症者への在宅介護の厳しさや、進学に伴って生活の中で訪問スケジュールが組めなくなる為終了・休止に至る状況も見えてくる。
【理学療法学研究としての意義】推定的な数値であるが、小児・重症者の訪問リハの状況として、全国に重症者は約36,550人、重症心身障害施設入所者が約11,350人いるとされていて、在宅生活を送る重症者の数は約25,200人(68.9%)を予想できる。また厚生労働省の平成11年の調査で、1年以上の入院生活が続いているNICU長期入院児は全体の約5%を占めていたり、そのうち約半数は小児科一般病棟や重症心身障害施設などの後方支援機関の不足による待機の状況にあると示されている。上記2点は社会からの課題であり、また求められているニーズ、掴むべき機会として考える。民営法人は、利用者の状況・要望によりサービス内容や頻度が選択され遂行されるので、必要とされ向上が求められる専門性と、利用者数及び収益性が直結している明確さがある。運営データを基にした調査・分析は、事業方針やシステムを考える上で有効であったが、同時に地域医療・小児医療の大きな流れの一つとしても解釈する。

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© 2011 日本理学療法士協会
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