理学療法学Supplement
Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: PF2-060
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ポスター発表(特別・フレッシュセッション)
訪問リハビリテーションにおける他職種との連携強化の必要性について
服部 真依阿部 千晴
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抄録
【目的】在宅生活を支援するにあたり他職種が連携してアプローチしていくことの重要性は周知のとおりである.しかし,現状では多職種,多施設が関わることでサービス担当者会議等の時間の調整が難しく,電話や紙面等での間接的な連絡のみのことや多施設間での情報の共有が難しいことが多い.今回,訪問リハビリテーション(以下,訪問リハ)介入後,担当理学療法士(以下,PT)が呼びかけをすることにより介護支援専門員(以下,CM)だけではなく福祉用具専門員や通所介護(以下,デイサービス),短期入所生活介護(以下,ショートステイ)職員と定期的に直接顔を合わせ情報交換することで良好な結果を得られた症例を経験したので考察を加え報告する.

【方法】2症例に対して担当PTが他職種に訪問リハ時に同行してもらうように呼びかけをし,月1回は関係するいずれかの他職種と顔を合わせた.また,各症例,状況に応じて他職種との連携強化に努めた.

【説明と同意】ヘルシンキ宣言に基づき,本人・ご家族様に対して研究に関する説明を十分に行い,同意を得た.

【結果】ケース1:60代,男性,左片麻痺.要介護3.H20年2月に脳梗塞発症し,H21年6月に退院する.退院後,生活全般において妻に依存的で,トイレの介助量が多く,自宅での介助量軽減の為に,訪問リハを同年8月から開始(週1回,2単位)した.介入時,FIM50点,起居動作は中等度介助レベル,ADLは食事以外の動作に介助が必要だった.介入時からCMに月1回訪問リハに同行してもらうように呼びかけをした.また,起居動作が自立し,伝い歩きが可能になってきたことに伴い福祉用具専門員にも訪問リハに同行してもらうように呼びかけをした.身体機能にあった福祉用具の選定として,歩行補助具の検討を行い導入した.また,随時担当PTがデイサービスに直接行き,身体機能に応じた運動や介助指導の助言をした.その結果,介入から6ヵ月後にはFIM64点に向上し,起居動作は自立,トイレの介助量軽減,自宅内4点杖歩行が可能となった.そして,1年後には屋外4点杖歩行練習開始することができた.

ケース2:60代,男性.左片麻痺.要介護4.H21年1月脳出血発症後,同年9月退院し,他院で外来リハビリにてフォロー.トイレ動作の介助量軽減と起居動作の安定を目的にH22年2月より訪問リハへ移行(週1回,2単位)した.介入時,FIM62点,トランスファー軽介助,歩行は長下肢装具・サイドウォーカー使用にて中等度介助レベルであった.介入当初よりCMまたは,デイサービス,ショートステイ職員に訪問リハに同行してもらうように呼びかけをし,在宅生活での身体機能の確認を行い,歩行練習時の介助方法と送迎方法の統一を行った.また,PTがデイサービスに直接行き,歩行練習や介助方法の指導を行った.その結果,介入から6ヶ月後にはFIM66点,トランスファーは自立し,歩行は4点杖・短下肢装具を使用し見守りレベル,段差昇降軽介助レベルまで改善.8ヵ月後には,FIM70点に向上し,デイサービスに行く際に段差昇降機ではなく,玄関から出入りが出来るようになった.

【考察】2症例とも身体機能,ADLを向上することができた.これは,訪問リハが介入し、呼びかけをすることにより,1.CMだけではなくデイサービス,ショートステイ職員の訪問リハ同行による現状把握と問題点の共有 2.PTがデイサービスに直接行き適切な運動の助言 3.必要に応じて福祉用具専門員に訪問リハに同行してもらい適切な福祉用具の選定 の3点を行い,他職種と直接会い情報交換をし,連携を強化することができたためと考える.2症例にとって,訪問リハが介入し多職種との連携をとらなければ,ケース1においては他職種が歩行練習を行っていても過介助の練習となり現在の歩行レベルにはつながらず,ケース2においては,訪問リハの際のPTによる歩行が可能となっても家族の見守りによる自宅での歩行や,デイサービス,ショートステイ職員による玄関からの出入りには結びつかなかっただろう.訪問リハの効果を十分に上げるためには問題点の共有や,他サービス利用中での運動の継続,介助方法の統一が必要である.実際の在宅生活での身体機能,ADL状況を評価し把握できることは訪問リハに携わるPTの特性でもある.そのPTが積極的に呼びかけをし,他職種とより密な連携をとることで,在宅生活においても身体機能,ADL機能の向上は可能であると考える.

【理学療法学研究としての意義】在宅生活にPTが介入し,身体機能やADLの評価をした上で,必要な職種に訪問リハ同行への呼びかけやデイサービスでの運動指導により,直接顔をあわせることで連携を強化することができる.この連携強化により,より効果的な訪問リハを提供することが可能であると考えられる.
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© 2011 日本理学療法士協会
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