理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 口述
座位での側方リーチ動作における圧中心(COP)の変化と腹斜筋群の筋活動について
渡邊 裕文大沼 俊博藤本 将志高崎 恭輔谷埜 予士次鈴木 俊明
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p. Aa0154

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抄録
【はじめに、目的】 我々は今までに座位での体重移動による姿勢保持の腹斜筋群の働きについて研究を進めてきた。一昨年の本学術大会より体幹前面部から側腹部へ複数の電極を配置し、同様に検討してきた。今回、動的な場面での腹斜筋群の働きを明確にする目的で、座位での側方リーチ動作時の腹斜筋群の筋活動を複数の電極にて検討したので報告する。【方法】 対象は健常男性10名(平均年齢23.7歳)の左側腹斜筋群とした。被験者に課題の座位での側方リーチ動作を以下のように説明した。フォースプレート(AMTI社)の台上に開始肢位である足底を床に接地しない座位で両肩関節外転90度を保持する。次に外転90度を保持した一側中指の指尖から側方20cmに移動距離測定器を配置し、メトロノームに合わせ、1秒間開始肢位を維持する、1秒間で20cm側方へリーチする、リーチ肢位を1秒間保持する、1秒間で開始肢位に戻る、という課題を解説し数回練習させた。この時、頭頸部は垂直位とし前方の一点を注視、両上肢は開始肢位から床と水平位のままリーチさせ、課題に伴うリーチ側でない反対側骨盤挙上と体幹側屈、自然な両股関節内外旋は許可した。そしてテレメトリー筋電計MQ-8(キッセイコムテック社)にて、左側腹斜筋群の表面筋電図を測定した。測定した腹斜筋群はNgの報告から、外腹斜筋単独部位(第8肋骨下縁)、内外腹斜筋重層部位(肋骨弓下縁部)、内腹斜筋単独部位(鼠径部内方)に電極を貼付した。また腹斜筋群は前記した内外腹斜筋重層部位以外に11電極を用い、内腹斜筋単独部位の上方で両上前腸骨棘を結んだ線上に1電極、その上方で両腸骨稜を結ぶ線上に1電極、そこから肋骨にかけて3電極(前面内側部)、内外腹斜筋重層部位直下から骨盤に3電極(前面外側部)、さらに大転子直上の腸骨稜上部から肋骨下端に3電極(側腹部)を配置した。側方リーチ動作は両側で実施し、測定時間は15秒間とし時間内で3回実施した。測定項目は、圧中心(COP)の左右変位と各電極部位での筋電図波形とした。また20cm側方へリーチしたタイミングが分かるように、リーチ側中指に電極を配置した。なおCOPの変位と筋電図には同期シグナルを入れ、測定後に総合解析装置(キッセイコムテック社)を用いCOPの変位と筋電図を同期し、筋電図波形は筋電図に精通した理学療法士が活動開始などを確認し、COPとの関係を検討した。【倫理的配慮、説明と同意】 本実験はヘルシンキ宣言を鑑み、予め説明した実験概要と侵襲、公表の有無と形式、個人情報の取り扱いに同意を得た被験者を対象にした。【結果】 COPの変化は全対象者にリーチ側へCOPが変位する前に、反対側へわずかに変位してからリーチ側へCOPが移動した。またリーチ肢位保持から戻る時も同様であった。表面筋電図波形は全対象者で左側リーチ動作にて同側の内腹斜筋単独部位とその直上の電極より、COPが左側へ変位する前に一度右側へ移動する時と、リーチ肢位保持から開始肢位へ戻ってくる(COPが右側に変位する)時に波形を認めた。右側リーチ動作での反対側腹斜筋群では、COPの右側への変位とともに全電極で波形が確認でき、リーチ肢位保持時まで活動が持続した。なかでも内腹斜筋単独部位とその直上の電極ではリーチ肢位から開始肢位へ戻る時まで活動が継続した。【考察】 動作開始時のCOP逆応答現象は諸家らで多数報告され、本課題でも側方リーチ動作開始時やリーチ肢位保持から戻ってくる時のCOPの変位は、逆応答現象と考えた。左側リーチ動作での同側内腹斜筋単独部位とその直上の電極から、リーチ動作開始時のCOP逆応答現象時と、リーチ肢位から戻っている時期に筋電図波形を認めた。この同側内腹斜筋単独部位とその直上部の働きは、COP逆応答現象である右側へ一度COPを変位させる活動と、リーチ肢位から戻ってくる時の骨盤左傾斜を戻す活動と考えた。右側リーチ動作での反対側腹斜筋群では、COPがリーチ側へ変位している間、全電極で筋活動を認め、これは反対側腹斜筋群全体として骨盤挙上と体幹側屈に作用したと考える。なかでも内腹斜筋単独部位とその直上の電極からは、リーチ肢位を保持し開始肢位へ戻ってくる時まで活動が継続し、持続的に骨盤挙上位を保持するための働きと考えた。【理学療法学研究としての意義】 座位での側方リーチ動作を用いる時、本研究より以下の点に着目する必要がある。1)移動側腹斜筋群は、内腹斜筋単独部位とその直上部の活動によるリーチ動作開始のCOP逆応答現象時の活動とリーチ肢位から戻る時の活動を促していく。2)反対側腹斜筋群は、体幹前面部と側腹部全体で、COPがリーチ側へ変位している時の骨盤挙上と体幹側屈作用を高めていく。なかでも内腹斜筋単独部位とその直上部ではより持続的活動が必要となる。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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