理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 ポスター
歩行周期に合わせたベルト速度調節が歩行の時間因子に与える影響
山本 拓哉田辺 茂雄岡田 誠
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p. Ab0413

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抄録
【はじめに、目的】 今回の研究の目的は、3次元動作解析装置を利用して平地歩行、ベルト速度が一定である一般的なトレッドミル歩行、歩行周期に合わせてベルト速度を調節したトレッドミル歩行の歩行周期の相違を明らかにすることである。【方法】 対象は、健常者男性30名、平均年齢は21±1.0歳とした。トレッドミル歩行(Treadmill Gait:以下TG)は、両側分離型トレッドミル(大武・ルート工業社製デュアルトレッドミル)を使用した。歩行は、平地歩行3.0km/h(以下OG3km)、歩幅は50cm/stepと歩行率は100steps/minの強制歩行とした。トレッドミル歩行は、歩行速度を平地歩行と同速度の3.0km/hとした。歩行パターンは1、ベルト速度が一定のトレッドミル歩行3km(以下TG3km)、2、初期接地を最小とし、前遊脚期の終わりを最大とする、ベルト速度を加速させる歩行(TG-sf)、3、初期接地を最大とし、前遊脚期の終わりを最小とする、ベルト速度を減速させる歩行(TG-fs) 、4、初期接地と前遊脚期の終わりを最小とし、立脚中期の終わりを最大とする、立脚期の前半を加速し、後半を減速する歩行(TG-ss)の4パターンとした。歩行分析には、三次元動作解析装置(インターリハ社製VICON MX)を用いて反射マーカの三次元空間座標を計測し、歩行周期を測定した。得られた結果は、被験者毎に平地歩行は2歩行周期以上、トレッドミル歩行は5歩行周期以上を1歩行周期に正規化し加算平均した。統計処理は、歩行周期の割合について、Tukeyによる多重比較を用いた(有意水準5%)。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は、金城大学研究倫理委員会の承認を得た(第0011号)。また被験者には本研究の主旨を口頭及び文書で十分に説明し、同意書を得たうえで計測を行った。【結果】 立脚期・遊脚期割合では、立脚期割合は、TG3kmがTG-sfとTG-fsと比較して有意に大きかった(p<0.05)。遊脚期割合では、TG3kmがTG-sfとTG-fsと比較して有意に小さかった(p<0.05)。両脚支持期割合では、OG3kmがTG3km、TG-ssと比較して有意に小さかった(p<0.01)。TG3kmは、TG-sf、TG-fsと比較して有意に大きかった(p<0.05)。荷重応答期割合は、TG3kmはTG-sfと比較して有意に大きかった(p<0.01)。立脚中期割合は,OG3kmはTG-sfと比較して有意に小さく(p<0.05)、TG-fsと比較して有意に大きかった(p<0.01)。TG3kmはTG-fsと比較して有意に大きかった(p<0.05)。立脚終期割合は、OG3kmはTG-sf(p<0.05)、TG-ss(p<0.05)と比較して有意に大きかった。TG3kmではTG-fsと比較して有意に小さかった(p<0.01)。前遊脚期割合は、OG3kmはTG3km、TG-ssと比較して有意に小さかった(p<0.05)。TG3kmではTG-sf、TG-fsと比較して有意に大きかった(p<0.05)。【考察】 TG-sfは、歩行周期割合が、立脚期割合と両脚支持期割合がTG3kmより小さく、遊脚期割合が大きくなった。トレッドミル歩行は、不安定な床面を歩行するため遊脚時間の短縮、重複歩時間の短縮、両脚支持期割合が増加18)するといわれており、TG-sfは一定速度のトレッドミル歩行より安定した歩行であると考えられる。また立脚中期割合がOG3kmより大きく、立脚終期割合がOG3kmより小さくなった。TG-sfの特徴として、立脚初期のベルト速度を遅くすることにより立脚中期割合が大きくなり立脚終期割合は小さくなる。逆に立脚初期のベルト速度を速くすることにより立脚中期割合が小さくなり立脚終期割合は大きくなると考えられる。TG-fsは、立脚期割合がTG3kmより小さく、遊脚期割合はTG3kmより大きかった。また両脚支持期割合がTG3kmより小さくなっており、TG-sfと同様の結果であった。しかし立脚中期割合はTG3kmより小さく、立脚終期割合はTG3kmより大きくなっておりTG-sfと逆の結果となった。立脚初期のベルト速度が速い場合は立脚中期割合が小さくなり、立脚終期割合が大きくなることが考えられる。TG-ssは両脚支持期割合がOG3kmより大きかった。これはTG-sfやTG-fsより加減速の速いベルト速度に適応して安定した歩行を行うために両脚支持期割合を増加させたと考えられる。しかし両脚支持期割合以外の項目では、OG3kmとTG3kmと比較して有意な差がなく、大きな変化はなかった。【理学療法学研究としての意義】 本研究の結果より、ベルト速度を調節することにより様々な歩行周期の歩行を作り出すができることが示唆された。今後速度、加減速、歩幅などを調節したトレッドミル歩行の検討することに効果的なリハビリテーションとなるトレッドミル歩行練習が行えると考える。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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