理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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難易度の高い運動課題の学習特性に関する研究
山本 良平大橋 ゆかり
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p. Ab0431

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抄録
【はじめに、目的】 理学療法場面において,歩行動作や基本動作などの動作遂行中にフィードバック(以下FB)を与える場面がみられる。動作遂行中に与えるFB(Concurrent Feedback,以下CF)と,動作終了後に与えるFB(Delayed Feedback,以下DF)を比較した研究によると,CFは運動への手掛かりとなるため練習パフォーマンスは向上するが,FBへの依存が強くなり学習には効果的でないとの報告が多い。しかし,近年,課題難易度によって効果的なFB条件が異なる可能性があるとされている。患者にとって学習すべき動作は難易度が高く,一つの動作であっても調節する側面が多く存在すると考えられる。そこで本研究では,難易度の高い課題に対するFB提示のタイミングの違いが運動学習に与える影響について検討した。【方法】 研究協力者は右利きの健常若年成人14名(21.4±0.6歳)とし,FBとしてCFを用いる群(CF群)とDFを用いる群(DF群)の2群に無作為に7名ずつ振り分けた。実験はpretest(5試行),練習試行(各10試行からなる6ブロック),post test(5試行)により構成した。運動課題は右上肢を前方挙上する運動により,目標とする加速度波形を描画することとした。協力者の右手首に加速度計を取り付けて運動課題を行わせ,その際の加速度をX-Yレコーダーにて記録した。CF群では目標波形が常時呈示されているオシロスコープを被験者の前方に設置し,そこに練習試行における加速度波形を重ね書きすることによりFBを提示した。DF群では練習試行中にはオシロスコープを提示せず,ビデオカメラにてオシロスコープ上の波形(CF群と同様の画面)を撮影しておき,試行ブロック間にビデオ画像を再生して見せることによりFBを与えた。課題動作の改善度を測定するパラメータは,動作開始から終了までの動作時間の誤差,および加速度ピークの時間的誤差と強度的誤差(いずれも加速期・減速期の2つの誤差の平均値)とした。統計解析にはIBM SPSS Statistics 19を使用し,2要因分散分析を行った。要因は「FB条件」および「テスト・練習試行のシークエンス」とし,危険率5%以下を統計学的有意とした。【倫理的配慮、説明と同意】 研究協力者には事前に書面と口頭にて研究の目的と方法,研究上の不利益,プライバシーについて説明を行った。本研究は,我々の所属している施設の倫理委員会の承認を受けて実施した。【結果】 動作時間の誤差はDF群がCF群に比べ有意に大きな値を示した。また,pretestにおける誤差は全練習試行およびpost testに比べて有意に大きな値を示し,Block 1(B1)における誤差はB3~post testにおける誤差よりも有意に大きかった。加速度ピークの時間的誤差ではFB要因は有意差を示さなかったが,シークエンス要因に関してはpretestがB1~post testに比べ大きな値を示した。加速度ピークの強度的誤差では,DF群がCF群に比べ有意に大きな値を示し,シークエンス要因ではpretestがB4~post testに比べ有意に大きな値を示した。【考察】 本研究の結果から,難易度の高い課題ではCFはDFと比し,早期に練習中のパフォーマンスが改善すると言える。従来の報告では,DFの方が学習に有効であるとした研究が多くみられるが,本研究では,上肢の運動加速度の調整を課題としたため,空間的な運動のイメージよりも難しい課題であり,CFが学習の効率的な形成に寄与した可能性がある。また,動作時間の誤差,および加速度ピークの時間的誤差と強度的誤差という3つのパラメータの練習に伴う改善の推移を比較すると,動作時間および加速度ピークの時間の調整は,加速度ピークの強さの調整よりも早期に改善される。またピークの時間と強さは,pretestとB1の間のみ改善が見られるが,動作時間はB1とその後の練習ブロック間でも差があることから,動作時間は他のパラメータに比し,改善しやすいと言える。結論として,上肢の加速度調整課題においてはCFを用いた方が誤差修正が容易であることが明らかとなった。また,このような課題の誤差修正は,全体の動作時間,フェイズ毎の動作時間,運動の強さの順になされることが示唆された。【理学療法学研究としての意義】 結果から,CFが練習中のパフォーマンスに加え学習を促すこと,より優先的に学習されるパラメータがあることが示唆された。難易度の高い課題の学習特性を明らかにしていくことで,患者が難易度の高い動作を学習する際に効果的なFBを提示することができると考える。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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