理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 ポスター
前方空間の有無が立ち上がり動作に与える影響について
─体幹の前方移動距離および下肢の関節角度に注目して─
榊原 弘城大町 かおり
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会議録・要旨集 フリー

p. Ab0694

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抄録
【はじめに、目的】 トイレでの立ち上がり動作は,介助を要する場合,ご家族などの介助負担が大きく,本人のみならず介助者にとっても自立を望む動作といえる。また,洋式トイレでの立ち上がりの場合,便座先端より約600 mm の前方空間が必要とされているが,築年数が経過した住宅では確保ができず,立ち上がりが困難となることが多い。本研究は,前方空間の有無が立ち上がり動作にどのような影響を与えるのかを検討することを目的とした。【方法】 対象は,健常な男性9名,女性8名の計17名 (平均年齢21.2±1.0歳)とした。測定は,43cmの背もたれや肘掛けのない椅子に座り,条件1:前方に障害物を設置しない(以下,フリー),条件2:前方40cmの位置に壁を設置 (以下,壁あり)の2条件で,任意の速度での立ち上がりとし,測定は条件1,2の順序にて各3回施行した。測定には,3次元動作解析装置(VICON460,Oxford Metrics社)および床反力計(フォースプレートOR6-6,AMTY社)を用い,サンプリング周波数は100Hzとした。Plug in gaitの全身モデルに準じてマーカーを各標点に貼付した。変数は,肩峰移動距離の比率(大腿長を100%とした際の比率),股関節最大屈曲角度,足関節最大背屈角度,膝関節伸展開始角度および各値のタイミング(動作開始から終了を100%とした際に,それぞれがどのタイミングで生じたのか)を求め用いた。統計学的解析には,対応のあるt検定を用い,条件間の差を検討した。有意水準は危険率5%未満を有意差あり,10%未満を傾向ありとした。【倫理的配慮、説明と同意】 対象者全員に対して,本研究の目的と内容を十分に説明し,同意を得た後に計測を行った。【結果】 「フリー」に対し「壁あり」では,男性は所要時間が1.76±0.24秒から1.6±0.33秒(p=0.085)と短縮する傾向があり,離殿までの時間は1.01±0.18秒から0.86±0.17秒(p=0.03),離殿のタイミングが57.4±8.0%から54.2±6.7%(p=0.028)と有意に短縮した。女性は所要時間,離殿の時間に有意差はなく,離殿のタイミングは49.4±7.0%から53.7±5.2%(p=0.076)と遅くなる傾向があった。また,男性は股関節最大屈曲角度に有意差はなく,足関節最大背屈角度が21.2±4.0度から23.2±5.1度(p=0.057)と拡大する傾向があり,膝関節伸展開始角度が82.8±7.4度から85.3±8.6度(p=0.019)と有意に拡大,肩峰移動距離が115.0±22.9 %から91.0±18.5 %(p=0.002)と有意に短かった。女性は膝関節伸展開始角度,足関節最大背屈角度に有意差はなく,股関節最大屈曲角度が77.6±4.4度から74.9±5.3度(p=0.048)と有意に減少,肩峰移動距離が117.0±13.7%から91.6±15.4%(p=0.002)と有意に短かった。タイミングは,男性は股関節最大屈曲,膝関節伸展開始のタイミングに有意差がなく,足関節最大背屈のタイミングは67.0±7.5%から64.0±5.5%(p=0.06)と速くなる傾向があり,肩峰最大移動のタイミングは73.1±3.7%から68.6±5.5%(p=0.009)と有意に短かった。女性はすべてのタイミングにおいて有意差がなかった。【考察】 離殿のタイミングに男女差が見られたため,戦略が異なる可能性が想定され,群を分けて検討した。「フリー」の条件において,男性は股関節屈曲および体幹前傾が少ない立ち上がり動作をしており,女性では逆に肩峰移動距離が大きく,股関節最大屈曲角度が大きかったことから体幹前傾の大きい立ち上がり動作を行っていた。立ち上がり動作は,体幹が直立位に近いほど膝伸展筋力が必要とされる。下肢筋力の強い男性は体幹前傾が少なく,女性では体幹前傾を大きくすることで重心を十分前方へ移し,筋力をあまり使用せず立ち上がったと考えられた。 「壁あり」の条件において,男性は膝関節最大屈曲角度,足関節最大背屈角度を増大させたことから,身体全体を滑り出すように前下方に移動させ,その後,支持基底の真上に立ち上がる戦略をとっていた。一方,女性は前方の障害物により,戦略として用いるはずの体幹前傾が不十分となり,下肢筋力による代償で立ち上がっていると考えられた。筋力で代償ができればよいが,それが困難な場合には配慮が必要となると思われた。【理学療法学研究としての意義】 本研究の結果より,理学療法士として,立ち上がり動作に関する患者のADL指導や住宅改修を検討する際,性差を考慮する必要があることを示唆している。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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