理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 ポスター
変形性膝関節症における注意課題と歩行速度との関係性について
金谷 佳和金谷 親好玉置 昭平藤原 英一山本 洋之
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p. Ab0708

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抄録
【はじめに、目的】 変形性膝関節症(以下,膝OA)は,病期の進行によって歩行異常が出現するため,歩行能力改善を目的に運動療法が展開されることが多い.膝OAの代表的な運動療法としては運動器を対象に行われているが,「注意」といった中枢神経系に対する報告は少なく,中枢神経系も考慮した取り組みが必要と考えられる.そこで本研究は,膝OAの歩行速度と注意課題との関係性について,注意課題を課した歩行における速度変化について検討した.これらの結果は今後の運動療法の参考になるものと考えている.【方法】 当院整形外科外来にて膝OAと診断を受け,X線画像診断でのKellgren-Lawrence分類(以下,K-L分類)により病期分類された30名(74.7±10.4歳)を対象とし,膝関節以外に明らかな整形外科的既往のある者,神経学的異常がある者,注意障害の簡便なスクリーニングとして用いられるSerial-7sが30秒間で5回以下の回答数の者は注意障害または認知障害の疑いがある者として除外した.注意課題として5mの平坦な歩行路を,自由歩行(single-task歩行),障害物跨ぎ歩行,コップ運び歩行(dual-task歩行),障害物跨ぎコップ運び歩行(multiple-task歩行)を実施し計測した.各課題はそれぞれ2回実施し,歩行時間の早い記録を結果として採用した.障害物跨ぎ課題は,5m 歩行路内に高さ2cm,幅15cm,奥行き80cmの障害物を2ヶ所設置し歩行させた.コップ運び課題は容量250mlのコップに上縁より5mmの高さまで水をいれたコップを片手で持ち歩行させた.障害物跨ぎコップ運び歩行はそれらを同時に歩行させたものである.身体特性として身長,体重等の基本的な情報とともに,膝伸展および屈曲筋力をミュータスF-1(アニマ株式会社)にて計測し,身体特性と各歩行速度との関係性の検討にはピアソンの積率相関係数を用いた.統計処理には統計ソフトR ver.2.13.0を使用し,危険率5%とした. 【倫理的配慮、説明と同意】 全ての対象者には事前に研究の目的・方法を書面,口頭にて説明し対象者の同意が得られた場合のみ同意書に署名を得て計測を行った.また研究計画や個人情報の取り扱いを含む倫理的配慮については,当院の倫理委員会にて承認を得た.【結果】 K-L分類による病期と各歩行速度において相関が認められなかった.身体特性と各歩行速度では,年齢・体重・膝伸展筋力と歩行速度との間に相関が認められたが.膝屈曲筋力と歩行速度には相関が認められなかった.注意課題と歩行速度との関係性については,障害物跨ぎ歩行では歩行速度を増加させる要因と減少させる要因となる場合が認められ,コップ運び歩行では,歩行速度を減少させる要因となり,障害物跨ぎコップ運び歩行では,その傾向がより強く反映される結果となった.【考察】 K-L分類は,膝OAのX線画像診断に用いられ病期進行の指標となり得るが,歩行速度は膝関節の機能だけでなく,股・足関節の運動機能に大きく影響を受けることが推察されるため,病期と歩行速度との間に相関関係が認められなかったと考える.年齢や体重は歩行速度と負の相関が高く,歩行速度は膝関節機能のみならず身体機能全体の影響を強く受けることを示唆している.膝伸展筋力と歩行速度はいずれの注意課題とも高い相関を認めたが,膝屈曲筋力と歩行速度との相関は認められず,膝OAの歩行能力改善には膝伸展筋力を中心に強化すべきことが示唆された.障害物跨ぎ課題は歩行において加速度を増加させる効果が考えられ,速度を増加させる因子となったが,コップ運び課題は歩行速度を減少させる要因が強く,障害物跨ぎ歩行での加速させる因子を消去する形となってしまい,身体的な負荷量の変化がないにも関わらず速度を減少させている.これは歩行に対する注意の配分量がコップを運ぶ課題へと多く向けられてしまい,歩行速度に影響を与えているものと考える.歩行する上で注意量には限界があり,その限られた容量の中で効率的に注意を配分させ遂行される.脳機能障害のない膝OA患者では,注意機能が低下しているとは考えにくいが,結果として歩行速度が減少しているため,より多くの注意が課題へと向けられている可能性が高い.よって,膝OA患者の運動療法指導中においては転倒防止の観点から,できる限り課題量を減らすべきだと考える.【理学療法学研究としての意義】 本研究は膝OAにおける注意課題と歩行速度に関係性があることを示唆した研究である.これら膝OAの特徴を踏まえ注意課題量を考慮に入れた運動器と中枢神経系それぞれに対しての運動療法を展開する必要性を示した意義ある研究である.
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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