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Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
p. Ab1114

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http://doi.org/10.14900/cjpt.2011.0.Ab1114.0

一般演題 ポスター
主催: 日本理学療法士協会
  • 抄録

【はじめに、目的】 関節拘縮の治療としてストレッチや種々のモビライゼーション手技が用いられている。これらに対する臨床報告は多数みられるものの、基礎研究によりその効果を検証した報告は少なく、ストレッチやモビライゼーションによる関節構成体への影響は明らかにされていない。そこで、本研究では骨運動を促す単純な伸長運動をストレッチ、関節包内運動を促す関節包の伸長運動をモビライゼーションと定義し、これらの関節構成体に与える影響を、実験動物ラットによる膝関節拘縮モデルを用いて、病理組織学的に検討することを目的とした。【方法】 対象として9週齢のWistar系雄ラット21匹を用いた。対照群(C群、n=4)と実験群(n=17)にわけ、実験群は右後肢を股関節最大伸展、膝関節最大屈曲、足関節最大底屈位で8週間ギプス固定を行った。その後無作為に、直ちに膝関節を採取する不動化群(I群、n=4)、8週間の通常飼育を行うF群(n=3)、8週間のストレッチを行うS群(n=5)、8週間のモビライゼーションを行うM群(n=5)の4群に振り分けた。ストレッチは下腿部を体幹長軸方向に牽引し、モビライゼーションは膝関節関節面が平行移動するように、脛骨近位部を後方から前方にかけて力を加えた。共に用いた負荷量は体重と同程度とし、1日5分、週5回行った。対照群は全期間中、通常飼育を行った。ギプス固定前後および以降毎週1回の膝関節可動域測定を実施した。飼育終了後、4%パラフォルムアルデヒドにより灌流固定を行い、右後肢を股関節より採取した。72時間の浸透固定後、プランクリュクロ溶液にて脱灰し、矢状面が観察できるよう膝関節を切り出し、中和、脱脂操作を経てパラフィン包埋した。3~5μmで薄切した後、HE染色を実施し光学顕微鏡下にて観察を行った。加えて画像処理ソフトを用い、染色像から後部関節包の厚さを計測した。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は名古屋学院大学動物実験規定に準拠し、同大学が定める倫理委員会の承認のもとに飼育・実験を行った。【結果】 8週間のギプス固定により約60度の伸展制限が得られた。その後の実験期間中、各群ともに制限角度は減少したが、8週後も約20度が残存し3群間で有意な差を認めなかった。膝蓋靭帯下の滑膜所見について、C群では脂肪細胞の萎縮及び線維芽細胞の増生を認め、増生した滑膜組織と軟骨表層の癒着を認めた。S群、M群、F群においては、ともに軟骨表層との癒着は認められなかったものの、同様に脂肪細胞の萎縮及び線維芽細胞の増生を認め、軟骨表層の一部が線維組織に置換されていた。3群間において明らかな差は認められなかった。後部関節包ではC群で膠原線維束の肥厚と間隙の狭小化を認めた。S群、M群、F群の3群では、C群に比べ膠原線維束間の間隙が拡大する傾向にあったが、3群間での差を認めなかった。またC群と比較して膠原線維が密な部分と疎な部分が不均一に観察された。観察した全ての標本、部位において、炎症細胞の浸潤は認められなかった。後部関節包の厚さも各群間で有意な差を認めなかった。【考察】 ストレッチおよびモビライゼーション介入の有無による著明な違いを認めることが出来なかった。先行研究(武村ら,2002,渡邊ら,2009)においては、本研究と治療介入の方法が異なるものの、頻度・時間はおよそ同程度で、その介入による組織学的な相異が報告されている。これらの報告より長期間で検討した本実験においては、介入を行ったわずかな時間以外の自動運動による改善の影響は大きく、その差を認めなかったものと考えられた。拘縮に対する理学療法として、ストレッチやモビライゼーションは頻繁に用いられているが、拘縮に対するストレッチの効果を検証した先行研究(Mosely,2005)では、明らかな効果が認められていないのが現状である。これらから、拘縮に対するストレッチやモビライゼーションの効果は一定の見解が得られておらず、種々のバイアスが存在しているものと考えられる。今後は対象を増やすとともに、介入方法を再考し、継続検討が必要と考える。【理学療法学研究としての意義】 理学療法を実施する上で、関節拘縮が対象となることは多いにも関わらず、その介入効果を病理組織学的に検討した報告はほとんどない。本研究での試みはこれに一石を投じるものであり、理学療法学を構築する上で足掛かりとなる重要なものであると考える。

Copyright © 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会

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