理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 ポスター
ヌクレオプロテインを併用した運動による筋肥大と筋代謝活性の検証
前川 健一郎金澤 佑治藤田 直人藤野 英己
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p. Ab1352

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抄録
【目的】 骨格筋は30歳代を過ぎると徐々に減少し、中高年を過ぎると加齢性の筋減少が著明になってくる。また、健康を維持増進し、生活習慣病等を予防するという観点から骨格筋のメンテナンスを行うことは重要である。また、筋肥大を促すためにタンパク質を摂取して運動することが広く用いられている。一方、運動は筋代謝の向上や毛細血管の新生を促すことが知られ、酸素の需要供給バランスやミトコンドリア新生代謝向上によるものと報告されている。また、ミトコンドリア新生には一酸化窒素が関与すると報告されている。そこで、核酸と塩基性タンパク質を多く含むヌクレオプロテインに着目し、研究を行った。ヌクレオプロテインの主成分の一つであるアルギニンは一酸化窒素合成酵素の基質となり、一酸化窒素の生成に関与している。本研究では、タンパク質及びミトコンドリア新生の両方の基質になり得るヌクレオプロテインを運動と併用して摂取することで、運動の効果を増強させることができるかの検証を行った。【方法】 8週齢の雄性SDラット26匹を、対照群(CO群、n=6)、ヌクレオプロテイン摂取群(CN群、n=6)、運動群(Ex群、n=7)、運動とヌクレオプロテイン摂取群(Ex+NP、n=7)の4群に分けた。CN群とEx+NP群には、1日あたり体重の1~2%のヌクレオプロテインを週5回の頻度で経口投与した。Ex群とEx+NP群は、1日2回、週5回の頻度でトレッドミルを用いたランニングを実施した。7週間の実験期間終了後、ヒラメ筋を摘出し、湿重量を測定した後に急速凍結した。得られた筋試料から10μm厚の横断切片を作製し、アルカリフォスファターゼ染色、コハク酸脱水素酵素(SDH)染色、ATPase染色(pH4.5)を行い、筋線維横断面積、筋線維あたりのSDH活性、筋線維周囲の毛細血管数を測定した。得られた測定値の統計処理には一元配置分散分析を用い、多重比較にはTukey法を用い、有意水準は5%未満とした。【説明と同意】 本研究は所属施設における動物実験に関する指針に従って行い、動物実験委員会の許可を得たうえで実施した。【結果】 筋湿重量は、CO群に対してEx+NP群のみが有意に高値であった。また、筋線維横断面積も、CO群と比較してEx+NP群が有意に高値であり、筋肥大がみられた。次にタイプI線維のSDH活性は、CO群に比較してEx群とEx+NP群では有意に高値を示し、さらにEx+NP群はEx群よりも有意に高値を示した。筋線維周囲の毛細血管数は、CO群に比較してEx群とEx+NP群は有意に高値を示し、さらにEx+NP群はEx群よりも有意に高値を示した。【考察】 本研究の結果から7週間のトレッドミル走行運動は骨格筋代謝の促進や筋内毛細血管の新生を生じさせた。一方、運動のみではヒラメ筋の肥大は生じなかったが、運動にヌクレオプロテインの摂取を行うことにより筋肥大を誘導し、骨格筋の代謝や毛細血管新生は更に促進することを明らかにした。骨格筋はタンパク質を主成分とし,その基質の摂取により肥大が促進されることが知られている。また、核酸はアルギニンを含有し、ミトコンドリア新生に関与すると考えられている。本研究の結果から、運動後にヌクレオプロテインを摂取することで、運動による骨格筋内のタンパク質合成の基質になり、効果的な筋肥大が促され、ヒラメ筋のタイプI線維横断面積が増加したものと考えられる。また、骨格筋内の酸化的リン酸化反応を確認するためにSDH活性を測定し、運動単独よりも運動後にヌクレオプロテインを摂取する方がSDHの活性が上昇した。SDHはミトコンドリア内の酵素であり、そのSDH活性とミトコンドリア数には正の相関があることから、運動後にヌクレオプロテインを摂取することで,ミトコンドリア新生が促されたものと考えられる。さらに酸化的リン酸化反応が高まることにより骨格筋の酸素需要が高まった結果、毛細血管が増加したものと考えられる。これらの結果から運動後のヌクレオプロテインの摂取は、筋肥大やミトコンドリア新生を促し、毛細血管を増加させることが明らかとなった。【理学療法学研究としての意義】 運動にヌクレオプロテイン摂取を併用することで,効果的な骨格筋のメンテナンスが可能であることが明らかとなり、理学療法における健康維持・増進を目的とした指導等に寄与できると考えられる。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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