理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 ポスター
脳卒中片麻痺患者の最大歩行速度の推移とその規定因子に関する検討
真喜屋 奈美清水 忍平 勝也山川 諒太塩浜 久美子知花 勝也山城 貴大濱川 みちる市野沢 由太仲西 孝之松永 篤彦
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キーワード: 歩行速度, 運動機能, 片麻痺
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p. Bb1191

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抄録
【はじめに、目的】 脳卒中片麻痺者(片麻痺者)の歩行速度に関する調査では、片麻痺者の歩行速度は健常者と比べて著しく低下しており、屋内外における行動範囲を大きく制限していることが指摘されている。このため、歩行動作の再獲得だけでなく、歩行速度の改善が片麻痺者に対する重要な治療目標の一つとなっており、歩行速度を規定する因子を詳細に把握する必要がある。片麻痺者の最大歩行速度(MWS)を規定する因子を検討した報告は多く、主に麻痺の重症度や筋力などの下肢機能の関与が示されている。しかし、これらの研究報告の多くは横断調査であるため、ある時期において患者間に生じているMWSの差異を説明する因子を示したにすぎず、患者内に生じるMWSの経時的変化(改善度)を説明する因子については十分な検討がなされていないのが現状である。さらに、片麻痺者のMWSを規定する因子は病期(発症からの期間)によって異なる可能性がある。そこで本研究は、片麻痺者のMWSを前向きに連続調査し、MWSを規定する因子を病期に分けて把握することを目的とした。【方法】 対象は、リハビリテーション目的で入院した片麻痺者91例とした。採用基準は、発症から初回測定までの期間が6ヵ月未満である者、10m間を介助なし(見守り、歩行補助具は許可)で歩行可能な者、MWSを連続5週間以上観察可能な者とした。測定項目は1)背景因子:年齢、性別および病型、2)MWS:距離10m間の最大速度、3)麻痺側の下肢機能:Stroke Impairment Assessment Set(SIAS)における運動機能の合計と等尺性膝伸展筋力(麻痺側筋力)、4)非麻痺側の下肢機能:等尺性膝伸展筋力(非麻痺側筋力)、5)バランス機能:Functional Balance Scale(FBS)、および6)認知機能:SIASにおける空間認知とした。測定頻度は、1)は初回測定時のみ、2)は週1回、3)~6)は初回測定時と4週後の2回とした。解析方法は、対象を発症後期間が3ヵ月未満の者(3ヵ月未満群)31例(68±11歳、右麻痺17例、左麻痺14例)と3ヵ月以上6ヵ月未満の者(6ヵ月未満群)60例(66±11歳、右麻痺31例、左麻痺29例)の二群に分けて、初回測定時の1)〜6)の二群間の差異を検討した。また、2)〜6)それぞれの観察期間内の変化を検討したうえで、2)〜6)の変化率(初回測定時に対する比率)について二群間の差異を検討した。さらに、初回測定時および4週後の2)と同測定時点の3)~6)との関連、ならびに2)の変化率と3)〜6)の変化率との関連を検討した。観察期間内の変化については対応のあるt検定、二群間の差異については対応のないt検定およびχ2検定を採用した。また、測定項目間の関連性については、PearsonもしくはSpearmanの相関係数を採用した。なお、統計学的有意水準は5%とした。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究の測定項目は通常の診療中に実施する評価項目であり、そのデータの使用にあたっては院内の倫理委員会の承諾を得て実施した。【結果】 背景因子については二群間に有意な差を認めなかった。初回測定時の項目について、6ヵ月未満群の非麻痺側筋力は3ヵ月未満群に比べて有意な高値を示したが、その他の測定項目には有意な差異を認めなかった。観察期間内に、3ヵ月未満群では認知機能以外の全ての項目、6ヵ月未満群ではMWS、非麻痺側筋力およびFBSが有意な改善を示した。また、3ヵ月未満群のMWSとFBSの変化率は6ヵ月未満群に比べて有意に高値を示した。初回測定時ならびに4週後のMWSに関連する有意な因子は、いずれの測定時期においても二群に共通して、麻痺側の下肢機能(SIAS、筋力)およびFBSであった。一方、MWSの変化率に関連する有意な因子として、3ヵ月未満群では麻痺側筋力および非麻痺側筋力とFBSの変化率が認められたのに対して、6ヵ月未満群ではいずれの項目の変化率も関連を認めなかった。【考察】 患者間に生じているMWSの差異を説明する因子は、先行研究の結果同様に麻痺側の下肢機能およびバランス機能であった。一方、患者内に生じるMWSの改善には、発症から比較的早期の3ヵ月未満群においては下肢機能とバランス機能という運動機能の改善の関連を認めたが、3ヵ月以降になると運動機能との関連も見いだせなかった。本研究の限界として、歩行速度の観察期間を一律に5週間とした点があげられるが、3ヵ月以降の歩行速度の改善については、歩行動作に対する自信度といった心理的側面や病棟内の活動状況といった環境面など、運動機能以外の因子を加えて関連を検討する必要があると思われた。【理学療法学研究としての意義】 本邦では片麻痺者の歩行速度を縦断的に示した報告は極めて少ない。片麻痺者の歩行速度を規定する因子を病期に分けて把握することで、歩行速度を改善するための効果的な理学療法プログラムの確立につながると思われる。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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