抄録
【目的】 変形性膝関節症(以下膝OA)の病態の進行に伴い、X線所見では関節裂隙の狭小化およびFemolo Tibial Angle(以下FTA)の増大による下肢内反アライメントを呈する。膝OAの病態進行を助長する因子については見解が得られておらず、単関節や多関節に生じたstiffness、膝関節痛からの回避、加齢変化に伴う内部疾患による進行助長が推測される。内側型膝OAの下肢機能軸は内反アライメントにより膝関節内側部から足部へと通過する。それにより、足部への影響としてはアーチの低下、外反母趾の形成が臨床上散見される。膝関節アライメント変化は足部に影響する可能性があるにも関わらず、先行研究での報告はほとんどない。特に膝関節アライメント変化が足部の位置覚、表在感覚といった感覚への影響については調査されておらず、その傾向が把握できれば、荷重や歩行訓練に応用ができる可能性がある。よって本研究は内側型膝OA患者のFTAが足底感覚に関連があるか否かを調査した。仮説は、FTAの増大により足部位置覚は内反位に、また足底外側部の感覚は向上しているとした。【方法】 2011年5月~9月間に当院を受診した両下肢に内側型膝OAを呈した20例40膝を対象とし、膝関節以外に外傷歴および疼痛を伴う関節が呈した症例は除外した。内訳は女性16例,男性4例,平均年齢70.4±7.4歳、Kellgren&Rorence分類はI:4膝,II:11膝,III:14膝,IV:11膝であった。FTAは立位X線上にて測定した。位置覚の測定方法は、ハーフのストレッチポール(ストレッチポール・ハーフカットEX:LPN社製)の平らな部分に角度計(アングルファインダーレベル:株式会社ミツトモ製作所)を設置した。床面と測定面が平行にある状態を(フラット)と定義し、裸足・立位にて計測を行った。計測足部をハーフのストレッチポールを縦に置いた測定器に乗せ、反対側は同じ高さの台に乗って測定した。測定器と台には2等分線が引かれており、前足部は第1趾と第2趾の間を通り、後足部は踵の中点を通るものとした。測定前の状態を排除するため、被検者は床とフラットである事を目視と足の感覚で覚えた後に内・外反を自分自身で10回実施した。その後足部を目視せずフラットと感じた部分を検者に告げ、その内・外反角度を角度計にて計測した。その角度を「足部内・外反位置覚」とした。表在感覚の測定は、足底を拇指球・小指球・踵内側・踵外側の4部位に分け、それぞれの2点識別をノギスにて計測した。測定した表在感覚の拇指球・踵内側の平均値を「足底内側表在感覚」、小指球・踵外側の平均値を「足底外側表在感覚」とした。統計学的手法において「足底内側表在感覚」「足底外側表在感覚」はt検定(p<0.05)を用い、FTAと足部の位置覚・表在感覚の関連性を検討するためSpearman順位相関を用いて検討した。【説明と同意】 対象者には本研究の内容を十分に説明し、口頭にて同意を得た後実施された。【結果】 足底表在感覚は、内側平均1.92±0.7cm:外側平均2.07±0.82cmであった(p=0.03)。FTA(平均179±3.57°)と足部の位置感覚(平均1.05±3.58°)の間に強い相関(r=0.709)を認めた。FTAと足底外側表在感覚とは中等度の相関(r=0.41)を認め、足底内側表在感覚とは相関(r=0.138)は認められなかった。また、足部位置覚と足底内側・外側表在感覚ではいずれも相関は認められなかった(内側:r=0.045・外側:r=0.215)。【考察】 本研究において、FTAと足部の位置覚の間に強い相関があった。両側内側型膝OA患者では、膝は内反傾向を示し足部の位置覚は内反位をフラットと感じていた。先行研究では、膝と足部の客観的なアライメントとの相関を示したと報告しているが、本研究において患者の主観的な評価との一致を示唆する結果となった。また、FTAの増加に伴い足部では、下腿の外側傾斜に引きずられる形で、足部内反位でのアライメントが立位姿勢における安定化を図ろうとしている戦略が考えられる。しかし、足底の表在感覚では内側に比べ、外側は鈍麻であった結果により、足底からの感覚入力の低下が荷重感覚そのものを膝OA患者では入力されにない環境である事が考えられた。FTAと足底外側表在感覚との相関はがなかった事は、足部での位置感覚情報より膝のアライメント変化により規定させられる可能性を示唆するものであると考える。【理学療法学研究としての意義】 本研究において、内側型膝OA患者のFTAと足部位置覚に関連性が示された事により、患者固有の動作戦略方法の指標となり、臨床へ応用していく上で必要な研究であったと考える。