理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 口述
高齢者の転倒リスクを予測する検査としての5m backward walking test
川本 晃平浦辺 幸夫金澤 浩白川 泰山
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キーワード: 5mBWT, 高齢者, 転倒リスク
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p. Ca0278

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抄録
【はじめに、目的】 高齢者の転倒リスクを予測する方法として 10mBWT(backward walking test) の有用性が報告されている(戸村ら、2008)。筆者らは恐怖感などの心理的な影響を少なくするために、コース長を短縮した5mBWTの有用性を検討してきた。そして、対象を転倒群と非転倒群の2群に分けて比較した結果、転倒群では5mBWTの歩行時間が有意に延長することが示された(川本ら、2009)。さらに、5mBWTの歩行時間が転倒リスク要因として抽出されたことから、5mBWTが転倒リスクのある高齢者の鑑別に有用であることが示唆された (川本ら、2010)。本研究では、高齢者を対象に転倒を予測するための検査として5mBWTの歩行時間の境界値を明らかにすることを目的とした。【方法】 対象は、当院の外来リハビリテーションを利用している65歳以上の高齢者153名(男性60名、女性93名)とし、過去1年間の転倒経験の有無によって転倒群と非転倒群の2群に分けた。転倒群は71名(男性30名、女性41名、平均年齢80.4±6.3歳)、非転倒群は82名(男性30名、女性52名、平均年齢77.8±5.8歳)であった。検査中の転倒を防ぐため、検査者は常に対象の横に付き添って歩くこととした。5mBWTおよび10mFWTを3回ずつ測定し、それぞれ最速値およびその際の歩数を採用した。統計学的分析は2群間の平均値の比較には、対応のないt検定を用いた。また、ROC曲線を用い、5mBWTおよび10mFWTによる転倒を予測する境界値、境界値における感度、特異度、曲線によって囲まれる下方の面積(Area under the curve;AUC)を算出した。さらに転倒歴を従属変数としたロジスティック回帰分析を行い、危険率5%未満を有意とした。【倫理的配慮、説明と同意】 対象にはあらかじめ本研究の趣旨、および検査時のリスクを十分に説明したうえで同意を得た。本研究は、医療法人エム・エム会マッターホルンリハビリテーション病院倫理委員会の承認を得て行った(承認番号MRH1120)。【結果】 5mBWTの歩行時間はそれぞれ転倒群では12.5±3.7秒、非転倒群では5.5±1.4秒、歩数はそれぞれ23.0±7.6歩、13.3±3.1歩だった。同様に10mFWTの歩行時間は10.4±3.2秒、7.2±2.0秒、歩数は20.7±4.2歩、16.9±4.5歩だった。転倒群では5mBWTおよび10mFWTの歩行時間の延長、歩数の増加がみられた(p<0.01)。ROC曲線から算出した5mBWTの境界値、感度、特異度はそれぞれ6.5秒、96.6%、70.2%、10mFWTの境界値、感度、特異度はそれぞれ7.8秒、86.5%、70.8%だった。AUCは5mBWTで0.981、10mFWTで0.862だった。さらにロジスティック回帰分析では、5mBWTの歩行時間のみが転倒要因として抽出された。【考察】 本研究では、5mBWT、10mFWTの歩行時間および歩数を測定した。5mBWT、10mFWTの歩行時間および歩数に2群で有意な差がみられた。ROC曲線の結果から5mBWTの歩行時間が最も優れた転倒リスクを予測するテストであり、今回の対象では転倒を予測する境界値は6.5秒であることが示された。さらにロジスティック回帰分析でも同様に5mBWTの歩行時間のみが転倒リスク要因として抽出された。10mBWTの高齢者の転倒を予測する境界値は13.6秒であると報告されており(戸村ら2008)、今回の結果からみて約2倍の歩行時間になっていることから、妥当な値であったと考える。これらのことから、5mBWTは10mBWTと同様に高齢者の転倒リスクを予測することが可能であり、臨床で用いる際には、歩行距離が短くより安全に行うことができると考える。【理学療法学研究としての意義】 高齢者の後方への転倒は、大腿骨頚部骨折などのリスクが高い。そのため、5mBWTを使用して後方への移動能力を評価することは重要であると考える。今回の研究より5mBWTが転倒要因として抽出され、80歳近くの高齢者の転倒リスクを予測する境界値が6.5秒であることが示されたことから、臨床場面で転倒リスクを予測する評価項目として5mBWTは有用なテストのひとつにできると考える。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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