理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 口述
TKA後高齢者のQOLに影響を与える身体、運動機能について
松本 浩実奥野 誠中村 達彦山本 吉蔵萩野 浩
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p. Ca0920

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抄録
【はじめに、目的】 TKA後の運動機能は、術後3~6ヵ月後に術前値を上回る報告が多い。しかし、健常高齢者と比較するとTKA後高齢者の歩行速度、膝伸展筋力は低く、転倒しやすいことも明らかとなっている。一方、TKA後高齢者に対する運動療法介入の効果はmeta-analysisにて証明されており、TKA後のADL、QOLを維持、向上させるためにも運動療法は効果的な介入方法といえる。しかしながら、どのような運動機能を高めることが術後のQOL向上につながるかは十分明らかとなっていない。本研究の目的はTKA後高齢者のQOLを日本変形性膝関節症評価(Japanese osteoarthritis measure以下:JKOM)を用いて調査し、それに影響を与えている身体、運動機能を明らかにすることである。【方法】 2008年~2009年にかけて当院でTKAを行った症例のうち、術後6か月後の外来検診を行った64例(年齢76.3±5.5歳、身長151.1±6.9cm、体重56.3±8.6kg、BMI24.8±3.1、手術からの経過期間6.8±1.2カ月、右TKA 21例、左TKA 15例、両側TKA 28例)に対して調査した。調査内容はJKOM(25点-125点;最高点25点)を用いた自己記入式アンケートと、身体所見として円背率(Milne‘s method)、外反母趾(Manchester scale)、膝動揺性(膝関節前方・後方引き出しテスト)、膝関節(屈曲、伸展、伸展-屈曲可動範囲)ROM、足関節(背屈、底屈)ROMおよび運動機能評価として膝伸展筋力、片脚立ち時間、歩行速度と歩幅を計測した。検査側は術側とした(両側の場合は最近の術側を代表側とした。)統計学的分析はJKOM総得点およびJKOM下位項目と各身体、運動機能との関係をPearson の相関係数を用いて分析した。JKOM総得点の関連要因の決定には重回帰分析(ステップワイズ法)を行った。すべて有意水準は5%未満とし、解析にはPASW ver18 for windowsを用いた。【倫理的配慮、説明と同意】 倫理的配慮として博愛病院および鳥取大学医学部倫理審査委員会(No.1264)の同意を得た。また対象者には口頭にて研究の目的、方法を説明し書面にて研究参加への同意を得た。【結果】 JKOM総得点と身体、運動機能との相関関係では円背(r=0.254)に有意な正の相関関係があり(p<0.05)、円背である程JKOMの点数が悪かった。さらに、膝可動範囲(r=-0.249)、歩行速度(r=-0.394)、歩幅(r=-0.464)と有意な負の相関関係があった(p<0.05)。JKOM下位尺度「膝の痛みやこわばり」と身体、運動機能の関係では、歩行速度(r=-0.265)と歩幅(r=-0.303)に有意な負の相関関係があった(p<0.05)。「日常生活の状態」では膝の可動範囲(r=-0.264)、片脚立ち時間(r=-0.284)、歩行速度(r=-0.410)、歩幅(r=-0.471)に有意な負の相関関係があった(p<0.05)。「普段の生活と健康状態」では円背(r=0.285)に有意な正の相関関係が、膝屈曲ROM(r=-0.247)、膝可動範囲(r=-0.275)、歩行速度(r=-0.373)、歩幅(r=-0.463)に有意な負の相関関係があった(p<0.05)。JKOM総得点に影響すると考えられる要因について、年齢、BMI、円背、膝可動範囲、片足立ち時間、歩幅、歩行速度を説明変数として重回帰分析を行った結果、影響要因として採択されたのは“歩幅”で、標準偏回帰係数(β)は-0.464、寄与率(R2)は0.216であった。【考察】 TKA後の運動機能評価としては、膝伸展筋力が注目されるが、本研究ではJKOMのどの項目とも関与しなかった。TKA後高齢者のQOLに影響を与える因子として、“歩幅”が挙げられた。十分な歩幅を得るためには支持脚の股関節周囲筋や下部体幹筋の機能が安定していなければならない。TKA症例でJKOMの得点が悪いものは、それらの機能が低下している可能性がある。TKA後のQOLを維持していくためには、歩行機能の改善が最も重要であり、膝関節のみでなく歩幅に注目しながら、股関節、体幹に対する運動療法も考慮する必要があると考える。【理学療法学研究としての意義】 TKA後高齢者のQOLを高めるために、理学療法士はTKA後入院中さらに退院後にどのような視点で運動療法介入を行っていく必要があるかといった指針を本研究は示した。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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