理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 ポスター
変形性股関節症における大腿骨近位部の形態的特徴
─CT画像による検討─
高木 清仁種田 陽一渡邊 宣之
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p. Cb0490

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抄録
【はじめに】 大腿骨頚部の前捻角の増大は、大腿骨頭の被覆率が低下することから、二次性の変形性股関節症(以下、変股症)の特徴的な骨形態のひとつであるといわれている。しかし、実際には前捻角がそれほど大きくない場合でも、変股症が進行している症例も認められる。大腿骨頭の被覆率は、一般的に骨盤の前・後傾や大腿骨前捻角度に左右されるが、大腿骨の内・外旋といった回旋の程度によっても影響を受けるため、変股症の進行と大腿骨の内・外旋といったアライメントになんらかの関係があると予測した。本研究では、CT画像を用いて、前捻角が変股症の発症および進行にどのような関連があるのかを検討することを目的とし、さらに大腿骨近位部の形態的特徴について若干の知見を得たので、考察を含めて報告する。【方法】 当院にて進行期および末期変形性股関節症と診断されたOA群53例81肢(男性8例12肢、女性45例69肢)、と対象側の股関節に疼痛および変形を認めないコントロール群30例30肢(全例女性)を対象とした。平均年齢はそれぞれ66.4±9.6歳、66.1±9.0歳であった。測定項目は、大腿骨後顆ライン(以下、PCライン)を基準とし、頚部中心を通る直線とのなす角を前捻角とし、小転子から骨軸に向かう線とのなす角を小転子の方向とした。前捻角は前方へ向かう角度を正とし、小転子の方向は後方へ向かう角度を正とした。また、大腿骨近位部のスライスのみから、大腿回旋を考慮しない大腿骨頚部の見かけ上の前捻角も算出した。大腿回旋角は、両上前腸骨棘を結ぶ線とPCラインのなす角とした。検討項目は、2群間における1)前捻角、2)見かけ上の前捻角、についてt-検定を行い、有意水準は5%未満とした。また、OA群における、3)前捻角と大腿回旋角、4)前捻角と小転子の方向について、Peasonの積率相関係数を用いて検定を行った。【倫理的配慮】 本研究は、当院の倫理審査委員会の承認を得て施行した。【結果】 前捻角の平均は、OA群20.2±14.3°、コントロール群19.6±14.4°と統計学的な有意差は認められなかった。しかし、見かけ上の前捻角ではそれぞれ24.6±11.0°、18.1±10.9°と有意差を認めた(p<0.01)。また、OA群における前捻角と大腿回旋角について、統計学的に有意な相関が認められた(R=-0.69、y=-0.65x+17.7)。さらに、前捻角と小転子の方向についても統計学的に有意な相関関係が認められた(R=-0.81、y=-0.83x+34.4)。【考察】 OA群では大腿回旋により見かけ上の前捻角が増大していることから、股関節の外旋が相対的に前捻を強めることで被覆率を低下させていることが示唆された。また、前捻角と大腿の回旋は相関関係があることから、前捻角が小さいと股関節は外旋位を呈し、前捻角が大きいと股関節は内旋位を呈している傾向があることがわかった。過度な前捻角がなくても骨盤後傾といった姿勢などの影響により股関節が外旋するような場合、変股症を進行させるリスクがあると思われる。また、過度な前捻角がある場合には、骨頭の被覆率を上げるために代償的に股関節を内旋させる肢位をとるのではないかと考えられる。また、大腿骨近位部の形態的特徴として、前捻角が大きくなると、それに伴い小転子の方向も前方を向く傾向があることがわかった。これは、前捻角が大きい例では、頚部のみが前方を向くのではなく、小転子より遠位の部分で捻れが加わっていると考えられる。つまり、前捻角に関係なく頚部と小転子のなす角はほぼ一定であると考えられる。小転子は腸腰筋の停止部であることからも、小転子の位置が前方にある場合や後方にある場合では、筋の機能も変化するように思われる。したがって、腸腰筋は姿勢にも影響を及ぼす筋肉であることから、変股症の発症や進行に姿勢の影響は強く現れると考えられる。本研究は、CT画像を用いた静的な評価のみのため、姿勢の影響や動的なアライメント変化については推測の域を超えない。今後は、画像所見と動的な評価との関連についても調査していく必要があると考える。【理学療法学研究としての意義】 本研究は、CT画像を用いて変股症の発症や進行のメカニズムとして大腿骨近位部の特徴を検討した。大腿骨の回旋による相対的な骨頭被覆率の変化は変股症の発症および進行リスクと考えられ、姿勢や動作指導など予防的アプローチを行っていく上でも本研究はその一助を担うと考える。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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