理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 ポスター
遠位上腕二頭筋腱断裂における術後早期理学療法後の長期経過
─術後3年間の症例検討─
岡 徹中川 拓也奥平 修三古川 泰三
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p. Cb0503

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抄録
【はじめに】 遠位上腕二頭筋腱断裂は肘関節の運動時痛、運動制限、上腕中央部の異常な膨隆とその遠位の陥没などを認め、発生頻度は10万人中1.2人と比較的まれな疾患である。現在までに本邦においては自験例も含め約50例が報告されているが、術後の長期経過についての詳細な報告はない。今回われわれは、術後早期から理学療法を実施した症例の3年間の長期経過について報告する。【方法】 症例は手術時年齢36歳、男性、会社員、柔道選手。柔道の試合で背負い投げを受けたとき右肘が強制伸展位となり受傷した。MRI、レントゲン検査にて遠位上腕二頭筋腱完全断裂と診断される。初診時の理学所見は右前腕近位部の疼痛、腫脹、肘関節伸展-40°、自動屈曲・回外が不可であった。受診から1週間後に当院にてBoyd-Anderson法を施行した。手術方法としては上腕二頭筋腱を遠位部に引き込み橈骨付着部に縫着し、さらにsuture anchorにて補強した。身体機能の評価項目としては、最大等尺性肘屈曲・回外筋力はハンドヘルドダイナモメーターを使用し測定、肘関節屈曲・伸展ROM、日整会肘関節成績判定基準(以下;JOAスコア)、スポーツ復帰レベルはTegner activity scoreにて評価した。評価時期は術前、術後1ヵ月、3、6、1年、2および3年の時点とした。理学療法は術直後よりシーネ固定し、患部外の運動を開始。術後3週目より痛みのない範囲での自動介助可動域練習、筋力強化練習を開始。術後6週でシーネ完全除去、他動可動域練習、ADL練習開始。術後2ヵ月よりスポーツ動作練習開始した。【倫理的配慮と同意】 なお本症例には、評価方法、実施に際して十分な説明を行い、報告に関しても患者本人に文書にて同意を得た。【結果】 肘機能の右肘伸展ROMは術後2ヵ月で伸展0度と回復した。最大等尺性肘屈曲・回外筋力(アニマ社製徒手筋力測定器μTas F-1)は術後3ヵ月で健側比100%まで回復した。術後1年時までは筋力は向上したがその後は維持レベルであった。JOAスコアは術前30点が術後3ヵ月で100点と回復し、術後3年時も100点である。ADLは術後2ヵ月ですべて痛みなく自立となった。スポーツ復帰は術後3ヵ月で可能となった。スポーツ競技レベルはTegner activity scoreは術前2点が、術後3ヵ月で9点、術後3年時も9点であった。術後3年時も肘機能とスポーツレベルは維持されていた。【考察】 遠位上腕二頭筋腱断裂はまれな疾患であり、受傷後は多くの場合で観血的治療が選択される。観血的治療ではBoyd-Anderson法が筋力低下(肘屈曲力5%、回外力15%低下)が少ないとされている。Morreyらは9症例の術後平均2.4年時の肘屈曲筋力は健側比86%、回外74%と報告している。本症例では肘屈曲筋力、回外力は術後3ヵ月で健側比100%まで回復し、その後、術後3年時では維持されている。今回我々はBoyd-Anderson法にsuture anchorにて補強をおこない強固な固定性が得られたと考える。これにより、理学療法は術後6、8週後から開始する報告が多いなか術後3週からと早期より開始した。初期より痛みに注意しながら筋力強化運動とROM運動を行った。その結果、スポーツ復帰は術後3ヵ月と極めて早期より可能となり、筋力の回復も良好で術後3年時も肘機能は維持されていた。その理由としては手術の固定が強固であり、早期理学療法が効果的であったこと、長期間の継続的な筋力強化やストレッチなどを積極的におこなったためと考えられる。Rantanenらは早期術後の2年以上の経過として、19症例中スポーツレベルの向上が0.5%、維持が58%、低下が37%と術後のスポーツレベル低下が多いと報告されている。本症例のスポーツレベルは維持されており柔道の試合にも完全復帰している。完全復帰時期も6ヵ月で術後3年時も継続しており予後も良好といえる。Boyd-Anderson法にsuture anchorを用いた術後理学療法は、早期から有効であったが、特に術後3ヵ月までは再断裂に注意しながら積極的に理学療法を行うことが重要と考える。また、スポーツ復帰後も継続的な筋力強化運動が必要である。【理学療法学研究としての意義】 本疾患の報告は少なく、理学療法の方法や患者の回復経過などの報告はほとんどない。また、長期経過の報告はさらに少ない。今後、本疾患の予後や評価、理学療法プログラムの一助になると考える。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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