理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
会議情報

一般演題 ポスター
肩甲骨の動態を調査することで、筋機能不全の特定は可能か
本田 裕貴寺本 美紀岩坂 光彦千馬 直子松﨑 貴之木下 久仁子河﨑 靖範槌田 義美
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. Cb0510

詳細
抄録

【はじめに、目的】 腱板縫合術後の患者は肩甲上腕リズムの破綻により肩甲胸郭関節にて肩甲上腕関節の挙上動作を代償していることを臨床上よく経験する。そこで、肩甲上腕関節のみならず肩甲胸郭関節の評価は重要な評価項目と思われる。主な測定方法としては、三次元動作解析装置や磁気計測システムなどがあり、測定・解析にスキルが必要ではあるが、バイオメカニクスの分野においては科学的で最適である。しかし、測定機器が高価で、手技が煩雑であるという点では臨床で使用していくのは困難であると思われる。そこで、本研究は比較的簡便で臨床においても使用しやすいゴニオメーターを用いて、腱板縫合術後患者の肩関節挙上における肩甲骨の動態調査を目的に行う。【方法】 対象は、本研究の主旨を説明し同意の得られた者とする。正常群は肩関節疾患既往のない健常者11名(男性6名、女性5名、年齢:56.8±6.4歳)術後群は当院で腱板縫合術を施行し、肩関節挙上120°以上自動挙上可能な患者11名(男性6名、女性5名、年齢:55.5±7.2歳)とした。なお、2群間において年齢による有意差が生じないよう考慮した。測定は、体幹軸(脊椎棘突起を結んだ直線)が床面に対して垂直になるように端坐位をとり、scapula plane上で肩関節挙上0°、30°、60°、90°、120°自動挙上する。それぞれの角度における肩甲棘と体幹軸とがなす角(体幹肩甲棘角と定義する)をゴニオメーターにて測定した。このとき、体幹側屈の代償をなくすため、両側上肢は同時挙上とし、内外旋中間位、肘関節伸展位、前腕は回内外中間位とした。なお、測定は同一検者とした。得られたデータから以下の項目に関して正常群と術後群で比較・検討した。(1)各肩関節挙上角度における体幹肩甲棘角。(2)各肩関節挙上角度間における体幹肩甲棘角の移動量。 体幹肩甲棘角の移動量とは、肩関節挙上30-60°間を例にすると、肩関節挙上30°時の体幹肩甲棘角と肩関節挙上60°時の体幹肩甲棘角の差である。なお、統計処理は独立2群T検定を用い、有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究はデータを抽出して集計分析後、個人情報を除去して施設内の倫理委員会の審査を経て承認を得た。【結果】 体幹肩甲棘角は全肩関節挙上角度で術後群が正常群よりも大きかった(p<0.05)。各肩関節挙上角度間の体幹肩甲棘角の移動量は、30-60°で術後群が正常群よりも大きかった(p<0.01)。0-30°、60-90°、90-120°においては有意差を認めなかったが、正常群よりも術後群の方が体幹肩甲棘角の移動量は大きい傾向にあった。【考察】 肩関節挙上運動で機能的な力学的作用を引き出すため、三角筋、腱板が効率よく連動し求心性の「力」が発揮される。信原らのコンピューターモデル(肩筋骨格モデル)から推定した、腱板構成筋の筋力推移によれば、「挙上初期において、棘上筋の筋力が約60°で最大となり、その後、三角筋中部線維の筋力が約85°で最大となった。また、その間に棘下筋、肩甲下筋も張力を発揮していた。この現象はcoupling forceの形成を表していると考えられ、従来の臨床知見とも酷似している」としている。このことから、腱板損傷により、関節窩に上腕骨骨頭を引き付ける機能が損なわれ、さらにcoupling forceが働かず腱板、三角筋のimbalanceが生じ、相対的に三角筋が優位になることが考えられる。三角筋が優位に活動すると、肩峰下でimpingementが生じ、代償動作により僧帽筋上部線維・肩甲挙筋の活動が亢進し、肩甲骨の上方回旋が生じると考えられる。30-60°において、正常群よりも術後群が大きくなる原因として、棘上筋の機能不全が考えられる。肩関節挙上30-60°では懸垂関節として考えられており、棘上筋の活動が最大となる。よって、棘上筋が機能不全になることで、肩甲骨上方回旋により代償しているのではないかと考える。また、0-30°、60-90°、90-120°においても、正常群よりも術後群の方が移動量は大きくなる傾向にある。そのうち60-90°では、棘下筋、肩甲下筋の活動により、上腕骨骨頭の上方移動を抑制し、臼蓋へ押し付けることにより、上腕骨骨頭を運動の支点にすることから、この角度での移動量増大は主に棘下筋・肩甲下筋の機能不全が示唆される。このように、肩甲骨の動態をみる事は、移動量が増大する角度で機能する筋の機能不全を特定する事が可能になるのではないかと考える。【理学療法学研究としての意義】 今後、症例数を増やし、より詳細な肩甲骨の動態を明らかにすることで、術後患者特有の筋機能不全を特定する一助になると思われる。

著者関連情報
© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top