理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 ポスター
足関節捻挫既往者における片脚立位時の姿勢制御特性
─頭部及び足関節への加速度装着による検討─
阿部 洋太菅谷 知明中川 和昌坂本 雅昭白倉 賢二
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p. Cb1150

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抄録
【はじめに、目的】 慢性足関節不安定症の特徴の1つとしてバランス能力の低下が挙げられ,足圧中心(center of pressure:以下COP)軌跡による評価が報告されている.しかし,COPは必ずしも視覚的に観察された身体動揺と一致しないことが知られており,「バランス能力=足関節機能」とは判断しがたい.近年,目的部位の細かな運動を3次元方向で測定できる加速度計が注目されている.本研究の目的は,3次元加速度計を頭部または足関節へ装着し,足関節捻挫既往者に特異的な片脚立位時の姿勢制御を明らかにすることである.【方法】 一般大学生を対象とし,その中から健常群23名(男性18名,女性5名:平均年齢23.4歳)と捻挫既往群20名(男性14名,女性6名:平均年齢22.7歳)とに分類した.分類基準として,a)Karlsson score 80点以下,b)反復性捻挫既往,c)受傷後3日以上の荷重困難,といった3点を掲げた.いずれにも当てはまらず,Karlsson scoreが100点であった者を健常群,いずれかの項目が当てはまる者を既往群とした. 上記対象者に対して,片脚立位時の重心動揺と加速度を測定した.加速度計は額,または支持側足関節外果に装着し,全ての対象者がそれぞれ3回ずつ,計6回行った.支持側は利き足,1回の保持時間は20秒とした.測定には,3軸加速度計(マイクロストーン株式会社製),重心動揺計(アニマ社製)を用いた.サンプリング周波数は加速度計,重心動揺計ともに100Hzとした. 分析項目として,重心動揺計からは総軌跡長と前後及び左右方向軌跡長を算出した.加速度計からは前後及び左右方向の加速度を,頭部装着時(以下,頭部加速度)と足関節外果装着時(以下,足部加速度)のそれぞれで算出した.算出する際,得られた加速度値から,波形の振幅の大きさを示す実効値(Root Mean Square)を求め,20sec間の加速度を合計した値を使用した. 各軌跡長及び各加速度における健常群,既往群の2群間での比較と,両群内での頭部加速度と足部加速度の比較はMann-WhitneyのU検定を用いて検討した.さらに各軌跡長と各加速度との関係はSpearmanの順位相関係数を用いて検討した.なお,統計学的処理にはSPSS ver17.0 for Windowsを使用し,有意水準は5%とした.【倫理的配慮、説明と同意】 対象者全員に本研究について文書と口頭にて十分な説明を行い,同意を得た後に測定を行った.【結果】 総軌跡長は,健常群が65.4±15.5cm,既往群が66.6±10.3cmであった.健常群の頭部加速度は,前後229.5±43.1m/s2,左右177.3±63.8m/s2,足部加速度は前後236.7±118.7m/s2,左右190.5±66.1m/s2であった.既往群の頭部加速度は,前後239.5±33.1m/s2,左右194.8±48.6m/s2,足部加速度は前後206.0±73.2 m/s2,左右179.7±63.5m/s2であった. 両群での比較では有意差はみられなかった.頭部加速度と足部加速度の比較では,前後左右両方向ともに健常群では有意差はみられなかった.既往群では前後方向において有意に頭部加速度の方が大きかった. また,健常群及び既往群ともに,頭部加速度と重心動揺における各軌跡長との間に有意な相関がみられたが,足部加速度と各軌跡長では,健常群でのみ有意な相関がみられた.【考察】 各軌跡長,頭部及び足部加速度の群間比較では有意差がみられなかった.しかし,頭部と足部の加速度を比較すると,健常群は有意差がなく,頭部運動と足部運動が同程度であったが,既往群は頭部に比べ足部の加速度が有意に小さかった.これより,既往群は足部をあまり動かさず,より上位での姿勢制御を用いていることが示唆された.これは,姿勢制御能を足関節以外の部位で代償した結果であると考える. 既往群は足部加速度と重心動揺の各軌跡長とに有意な相関がみられなかったことから,重心動揺計では捻挫既往者の足部運動を反映出来ない可能性がある.一方,加速度計は捻挫既往者の姿勢制御をより詳細に評価できる可能性があると考えられた. 本研究により,「既往群は足部よりも上位での姿勢制御が有意であること」「既往群の姿勢制御を反映しうる加速度計の有用性」が示唆された.今後は,片脚立位時の足部運動に関してさらなる解析を進め,捻挫既往者の運動特性を明らかにしていく必要がある.【理学療法学研究としての意義】 頭部と足部加速度の測定により,捻挫既往者に特異的な姿勢制御を客観的に示すことができ,新たな評価指標としての有用性が示唆された.また,さらなる解析により捻挫既往者の足部運動特性を把握し,特性に応じた治療プログラムの立案やその効果判定としての臨床応用も期待できると考えている.
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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