理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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婦人科悪性腫瘍術後の下肢リンパ浮腫初期段階の危険因子について
日熊 美帆塩田 美智子樋口 謙次黒田 高史高倉 聡上出 杏里安保 雅博
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p. Db1220

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抄録
【はじめに、目的】 平成20年度にリンパ浮腫指導管理料が制定されてから、リンパ節郭清を伴う癌術後のリンパ浮腫予防指導に理学療法士が関わる機会が増加している。リンパ浮腫発症の可能性がある患者に対する関わりの目的は、リンパ浮腫を未然に防ぐこと、リンパ浮腫の早期発見・早期治療により重症化を防ぐことが挙げられる。当院でも術後からの予防指導やリンパ浮腫発症者への早期介入を行っており、早期に正しい対処をすれば重症化を防げることは臨床の中で多く経験する。しかし、発症前にそのリスクを層別化することができれば、個々の状態に合わせた指導、定期評価の介入が可能となり、リンパ浮腫を予防することや発症した場合でもより早期に対処することができると考える。本研究の目的は、婦人科悪性腫瘍術後の下肢リンパ浮腫発症初期段階の危険因子を基本情報や臨床情報を含めて検討することである。【方法】 対象は、平成20年4月から平成22年3月までの間に当院婦人科においてリンパ節郭清を伴う子宮頚癌、子宮体癌、卵巣癌に対する手術を施行し、術後半年以上経過した患者72例 (子宮頚癌25例、子宮体癌18例、卵巣癌29例、平均年齢51.3±11.8歳)である。方法は、年齢、BMI、疾患名、臨床病期(FIGO臨床進行期分類)、リンパ節郭清範囲(骨盤内リンパ節のみ、骨盤内および傍大動脈リンパ節)、後療法(未実施、化学療法、化学療法併用放射線療法)の各項目とリンパ浮腫発症の有無について診療録より後方視的に調査した。リンパ浮腫発症の有無は、当院の婦人科悪性腫瘍術後のプロトコール(術後より6ヶ月毎に2年間評価)に準じ、下肢の視診・触診、周径計測により確認した。リンパ浮腫の段階は、国際リンパ学会の分類(以下、ISLの分類)で評価し、ISLの分類1期以上の症例をリンパ浮腫発症と診断した。統計解析は、リンパ浮腫発症、未発症の2群間において年齢、BMI、疾患名、臨床病期、リンパ節郭清範囲、後療法についてχ2検定を使用し検討した。有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】 本学倫理委員会の承認を得た上で調査を実施した。【結果】 リンパ浮腫発症者は72例中28例で、ISLの分類1期26例、2期早期2例であった。リンパ浮腫発症の有無で分類すると、年齢では、リンパ浮腫発症群で60歳未満が20例、60歳以上が8例、リンパ浮腫未発症群で60歳未満が33例、60歳以上が11例であった。BMIでは、リンパ浮腫発症群で25未満が20例、25以上が8例、リンパ浮腫未発症群で25未満が35例、25以上が9例であった。疾患名では、リンパ浮腫発症群で子宮頚癌が11例、子宮体癌が8例、卵巣癌が9例、リンパ浮腫未発症群で子宮頚癌が14例、子宮体癌が10例、卵巣癌が20例であった。臨床病期(FIGO臨床進行期分類)では、リンパ浮腫発症群で早期が20例、進行期が8例、リンパ浮腫未発症群で早期が35例、進行期が9例であった。リンパ節郭清範囲では、リンパ浮腫発症群で骨盤内リンパ節のみが13例、骨盤内および傍大動脈リンパ節が15例、リンパ浮腫未発症群で骨盤内リンパ節のみが17例、骨盤内および傍大動脈リンパ節が27例であった。後療法では、リンパ浮腫発症群で未実施11例、化学療法12例、化学療法併用放射線療法5例、リンパ浮腫未発症群で未実施16例、化学療法24例、化学療法併用放射線療法4例であった。年齢、BMI、疾患名、臨床病期、リンパ節郭清範囲、後療法の各項目においてリンパ浮腫発症の有無と有意な差を認めなかった。【考察】 今回の結果からは、年齢、BMI、疾患名、臨床病期、リンパ節郭清範囲、後療法がリンパ節郭清を伴う婦人科悪性腫瘍術後のリンパ浮腫発症初期段階の有意な危険因子とはいえなかった。術後早期からリンパ浮腫の発症を予測することは困難な結果であったが、リンパ節郭清を伴う婦人科悪性腫瘍術後の全症例への予防的介入や早期発見に向けたフォローアップの必要性が示唆された。また、リハビリ科での指導終了後も婦人科医や看護師と連携し、リンパ浮腫発症後早期に対応できる体制を作ることは重要と考える。本調査の対象期間は2年間であり重症例や増悪例が少なかったが、長期的な経過を追いリンパ浮腫の重症度や増悪の程度の危険因子についても検討していく必要がある。【理学療法学研究としての意義】 近年、リンパ浮腫治療やリンパ浮腫予防指導に理学療法士が関わる機会が増加しているが、リンパ浮腫についての調査や研究は未だ十分でない。本調査は系統立てたリンパ浮腫予防指導を目指す上で意義のあるものだと考える。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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