理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 ポスター
短時間通所リハビリテーション利用者における外出頻度に影響を及ぼす因子
─要支援者による検討─
法山 徹西野 康子辻 寿彦松村 朋枝橋本 恵上野 弘樹後藤 伸介
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p. Eb1233

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抄録
【はじめに、目的】 外出することは,介護予防において重要な要素であることが諸家らにより報告されている.この視点から,当事業所においても外出を支援していくことを方針にプログラムを立案し,サポートしている.外出には,これまでにTimed up and go test(以下TUG)や階段昇降能力,転倒不安度等の多因子が影響することが報告されている.本研究の目的は,外出頻度に影響する因子を身体機能や生活機能評価から包括的に検討することにより,外出を促すための戦略を考える一助とすることである.【方法】 対象は,当事業所を利用している71名のうち,要介護者22名を除外した,要支援者49名とした.その内訳は,男性18名,女性31名であり,平均年齢は80.0±5.8歳であった.身体機能面の評価は,TUG,30seconds Chair stand test(以下CS-30)とし,前者は2回測定した最小値を採用し,後者は最大値を用いた.生活機能面の評価は,自己記入式とし,家庭での役割,外出頻度,疼痛,転倒歴,転倒不安度,自覚的な下肢筋力低下,運動習慣,生活の充実感を5件法にて評価した.統計処理は,Excel統計2006を使用し多重ロジスティック回帰分析を行い,有意水準は5%未満とした.外出頻度に影響する因子を抽出するため,外出頻度を従属変数とし,年齢,性別,TUG,CS-30,家庭での役割,疼痛,転倒歴,転倒不安度,自覚的な下肢筋力低下,運動習慣,生活の充実感を独立変数としてオッズ比を算出した.なお,従属変数,独立変数の双方とも2値データ(0-1型)を用いて行った.外出頻度は週4から5回以上を1とし,週3回以下を0とした.TUGは転倒危険性のカットオフ値とされている13.5秒未満を1,それ以上を0とした.CS-30は平均値を目安に9回以上を1,それ未満を0とした.生活機能評価は5件法のうちの上位2つを1とし,それ以外を0とした.年齢は平均値を境界に80歳未満を1とし,それ以上を0とした.なお,評価は全て利用開始時に行ったものとした.【倫理的配慮、説明と同意】 利用者には,本研究の趣旨を説明し書面にて同意を得て行った.【結果】 身体機能評価における平均値はTUGで15.2±6.2秒,CS-30では8.7±3.2秒であった.生活機能評価における5件法の中央値は家庭での役割では5,疼痛は2,転倒歴は5,転倒不安度は3,自覚的な下肢の筋力低下は2,運動習慣は4,生活の充実感は4であった.多重ロジスティック回帰分析による外出頻度に影響を及ぼす因子としては,TUGと疼痛が有意に抽出された(p<0.05).オッズ比はTUGで13.84(95%信頼区間1.42~134.47),疼痛で8.79(95%信頼区間1.01~76.32)であった.【考察】 要支援者における外出頻度に対し有意に影響する因子は,TUGと疼痛であった.TUG が外出に影響することは従来の報告と同様であったが,これはTUGが転倒とも関連し,動的バランスを反映する指標であり,それが屋外歩行能力に対し影響していたためと考えた.疼痛強度が外出に影響したことについては,疼痛は運動機能の低下や心理面への影響をもたらすことが報告されており,これらによって疼痛回避行動として生活の活動範囲を屋内中心へ狭小化させていったものと考えた.外出頻度が低い者には,単に外出を指導することに留まらず外出困難な原因を個々に分析し対応していくことが重要である.そして,要支援者のバランス機能や疼痛を効果的に改善させるためのプログラムを開発していくことが必要と考えた.【理学療法学研究としての意義】 外出と介護予防には関連性が示唆されており,本研究により要支援者の外出頻度に影響する因子を明らかにしたことは,リハビリテーションを多面的に考え,外出を促していく上で有益と考えた.
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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