理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
会議情報

一般演題 ポスター
地域在住高齢者を対象とした継続可能な運動に関する尺度(Sustainable exercise scale: SES)の実用性と信頼性の検討
細井 俊希
著者情報
キーワード: 地域在住高齢者, 運動, 継続
会議録・要旨集 フリー

p. Eb1243

詳細
抄録
【はじめに、目的】 現在、各自治体では、地域在住者を対象としたさまざまな転倒予防運動や健康体操などが考案・作成されている。しかし、健康体操などが作成されても、内容については評価されていないことが多い。特に、運動は継続することが重要であるものの、健康体操などの運動が対象者にとって継続可能なものなのか否かついては検討されていない。我々は、運動の継続に関する要因を、過去の研究などから抽出し、地域在住高齢者を対象とした「継続可能な運動に関する尺度(Sustainable exercise scale: SES)」を作成した。本研究の目的は、SESの実用性および信頼性について検討することである。【方法】 SESの質問項目は、Sallisら、Trostらの運動の継続に関する要因の文献レビューに心理的要因として挙げられている項目と、Forkanらが示した継続しなかった理由を参考に、効果への期待、楽しさ、覚えやすさ、習慣化の4項目を抽出し、それに継続する自信を加えた5項目とした。それぞれ、1.非常にそう思う、2.そう思う、3.どちらともいえない、4.そう思わない、5.全くそう思わない、の5-リッカートスケールで答える形式とした。埼玉県のM町の地域在住高齢者54名(平均年齢:73.5±4.1歳)を対象に、2つの運動(地域の健康体操、著者らが考案したトレーニングメニュー:SECTAP)について、SESを用いた調査を実施した。地域の健康体操は、ストレッチやスクワットなどの要素を取り入れ、地域の特産や名所を体現し、音楽に合わせて体を動かすものである。SECTAPは、self check & training for enhanced athletic performanceの略で、筋力(アウター・インナー)、柔軟性、バランス、持久力を自分でチェックしトレーニングするというものである。それぞれの運動指導後、SESを配布し、回答後、回収した。配布から回収までの時間を計測し、回収後、欠損値について確認し、全回答数に対する欠損値の割合を算出した。また、対象者のうち34名に1週間後にもSESを実施し、再テスト法にて本尺度の信頼性について確認した。さらに、継続する自信とその他の項目の相関について、Spearmanの順位相関係数を用いて確認した。有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】 本調査を実施する前に、本研究の目的や個人情報の保護などについて十分説明し、同意いただいた対象者にのみ本調査にご協力いただいた。【結果】 回収率は100%であった。配布から回収までの時間は5分程度であり、質問項目に関する問い合わせはなかった。全回答数に対する欠損値の割合は3.3%(9/270)であった。再テスト法の結果、テストと再テストの相関係数は0.90であった。「継続する自信」とその他の項目との相関係数は、0.47~0.75であり、いずれも有意な相関を示した。【考察】 本研究で使用したSESは、短時間で記入でき、質問項目や回答方法に関する問い合わせもなく、欠損値も少なかったことから、地域在住高齢者が記入しやすい尺度であることが確認された。また、再テスト法により、再現性も確認できた。さらに、「継続する自信」とその他の項目の間に、中程度から強い相関が認められ、運動の継続に関する要因と継続する自信との関連性が示唆された。今後は、健康体操などのさまざまな運動に本尺度を使用して、本尺度の得点と運動の継続との関連について調査し、妥当性について検討する必要があると考える。【理学療法学研究としての意義】 高齢者に運動指導を行っても、それが続かないという経験をした理学療法士は多いと思われる。健康体操だけでなく、退院時の運動指導の際にも本スケールを用いた評価を行うことで、運動の継続に関する心理的要因について確認でき、退院後の運動量の低下による廃用症候群の予防に役立つと思われる。
著者関連情報
© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top