理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: C-P-18
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ポスター発表
大腿骨近位部骨折患者のBerg balance scaleによる歩行獲得の目安
鳥井 泰典飛永 浩一朗泉 清徳後藤 正樹渡邉 哲郎井手 睦
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キーワード: 大腿骨近位部骨折, BBS, 歩行
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抄録
【はじめに、目的】大腿骨近位部骨折患者をバランス能力の面から検討している研究は少ない。また、大腿骨近位部骨折患者のバランス能力の経過をBerg Balance Scale(以下、BBS)により継時的にみた先行研究は見当たらない。今回、大腿骨近位部骨折患者において退院時に自立歩行(T字杖歩行または独歩)を獲得していた群(以下、歩行獲得群)と自立歩行が困難であった群(以下、非歩行獲得群)でBBSを継時的に比較・検討した。その結果、在宅退院に向けた目安の一助となる結果を得たので報告する。【方法】対象は大腿骨頸部骨折または大腿骨転子部骨折後に回復期リハビリテーション病棟(以下、回復期リハ病棟)を2009年2月から2012年2月までに退院した21名(男性3名、女性18名)で平均年齢75.6±11.3歳であった。対象者は全員が観血的加療として骨接合術が選択され、人工骨頭置換術を施行された患者は含まなかった。また、受傷前歩行能力は独歩が自立していた患者とした。この対象者21名を歩行獲得群(12名、平均年齢76.7±8.1歳)と非歩行獲得群(9名、平均年齢80.1±7.3歳)の2群に分け、回復期リハ病棟転入時、転入より4週時、転入より8週時、退院時のBBS測定結果を二元配置分散分析により解析し、多重比較検定(Tukey)により比較・検討した。さらに、歩行獲得群と非歩行獲得群の2群間において、年齢、長谷川式簡易知能評価スケール(以下、HDS‐R)、受傷から理学療法開始までの期間、受傷から手術までの期間、手術から回復期転入までの期間、手術からBBS測定までの期間(回復期転入時、転入から4週時、8週時、退院時)についてはMann-Whitney’s U testにて検討した。解析にはSPSSを用い、有意水準は5%とした。【倫理的配慮、説明と同意】本研究は当院の臨床研究審査会の承認を得て行なった。【結果】歩行獲得群では回復期リハ病棟転入時と転入から4週時、転入から4週時と8週時の間で有意にBBSの向上を認めたが(P<0.05)、8週時と退院時のBBSには有意差を認めなかった。非歩行獲得群では転入時と転入から4週時で同様に有意なBBSの向上を認めたが(P<0.05)、4週以降のBBSには有意な向上を認めなかった。また、歩行獲得群と非歩行獲得群の2群間で転入時のBBSは有意差を認めなかったものの、転入から4週時のBBSにおいて歩行獲得群でより有意にBBSの向上を認めた(P<0.05)。これらの他に2群間における年齢、HDS‐R、受傷から理学療法開始までの期間、受傷から手術までの期間、手術からBBS測定までの期間には有意差を認めなかった。手術から回復期転入までの期間についても有意差は認めなかったものの、歩行獲得群が非歩行獲得群よりも早期に回復期に転入している傾向にあった(P<0.06)。【考察】歩行獲得群では回復期リハ病棟転入から8週(手術から平均日数76.3±7.1日)までに平均47.9±3.8点となりBBSは有意に向上していた。この点数はHaradaが述べている屋外歩行困難のカットオフ値48点やBergが屋外歩行自立の妥当性として示した48.3点とほぼ同等の点数である。また、Bergは地域在住高齢者が安全に歩行できる目安は45点とも述べており、術後約76日までにBBSでおおよそ48点程度のバランス能力を有するか否かを大腿骨近位部骨折患者が歩行獲得を目標とする際の1つの目安にできるのではないかと考える。一方、非歩行獲得群でも転入から4週までの期間にBBSは有意に向上したものの、2群間のBBSでは4週時点ですでに有意差を認めていた(歩行獲得群:平均点数40.8±2.8点、非歩行獲得群:平均点数33.0±3.8点)。さらに、非歩行獲得群では4週以降にBBSの有意な向上を認めないことや、歩行獲得群で転入から8週以降は退院まで有意なBBSの向上を認めないことから、歩行獲得を目指す上で早期からバランス能力に目を向けた理学療法アプローチが重要となるのではないかと考える。歩行獲得群では手術から回復期リハ病棟転入までの期間が短い傾向にあったことから(P<0.06)、早期から回復期リハ病棟において充実した理学療法が提供できたことも歩行獲得に至った一要因として考えられる。【理学療法学研究としての意義】医療現場では加速的アプローチによる在院日数の短縮化が求められており、在宅退院を目指す回復期リハ病棟において歩行獲得は1つの大きな目標である。今回の研究で歩行獲得群では回復期転入より8週間(術後約76日)までにBBSで約48点程度のバランス能力を有し、屋外歩行自立レベルに達する傾向が示唆された。今後は症例数を増やして歩行獲得に至るまでの期間と継時的BBSの関係をより明確にしていく必要性がある。明確化した値を基準として入院患者のBBSと定期的に比較することで、理学療法の進行程度の確認や是正が可能となり、在宅退院に向けた目安の一助になると考える。
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© 2013 日本理学療法士協会
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